第31話 懐玉ー壱ー
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提出した書類に目を通しながら、
「問題児二人はどうしてる?」
と夜蛾さんが尋ねてきた。
名前を出してなくてもすぐにわかった。
「悟君と傑君なら、確か体育館に」
「ここへ来るように言って来てくれないか」
「またお説教ですか?」
「いや。任務だ」
「またですか?」
「今しがた通達があった」
「でも、あの二人はこの前も・・・」
「あぁ。働かせ過ぎなのはわかっている。だが、この任務はあの二人にと指名があったのだ」
この言葉で、今回の任務の重要さが伝わってきた。
「わかりました。呼んできます」
私はそう頷いて、体育館に向かった。
体育館に近づくと、ダムダムとボールをドリブルする音が聞こえてきた。どうやらバスケットボールに興じているらしい。
入り口から中を覗き込み二人に声を掛けようとした時だった。
「それ正論?」
挑発するような五条さんの声が聞こえてきた。
「俺、正論嫌いなんだよね」
それに続いて、
「・・・何?」
とムッとしたように夏油さんが言う。
仲良くバスケに興じていたと思ってたのに、何やら不穏な雰囲気だ。
「呪術 に理由とか責任を乗っけんのはさ、それこそ弱者がやることだろ」
五条さんの挑発は留まらない。
「ポジショントークで気持ち良くなってんじゃねーよ。オ"ッエー」
口論の原因はなんであれ、さすがにこれは言い過ぎだ。
諫めようと中に入ろうとした時だった。
「おっと」
その同時に、中から出てきた硝子さんとぶつかった。
「和紗」
「硝子、悟君と傑君は・・・」
「逃げるよ」
「え?」
と、硝子さんは有無を言わさず私の腕を引いて体育館から離れていく。
「硝子、離して?私、夜蛾さんからあの二人を呼んでくるようにって・・・」
「今はヤバイって。クズ共のケンカに巻き込まれたら怪我するよ」
「ケンカって、どうして?」
「夏油が説教して五条が反発する。それで夏油がキレて五条が挑発する。いつものパターンだよ」
「あの二人ってケンカするんだね」
「しょっちゅうだよ」
「でも私、見たことがな・・・あ」
私達が体育館から離れていくのと入れ違いに、夜蛾さんが体育館へ向かっていくのが見えた。
私が二人を呼ぶのを待ちきれなかったのか。
それほど急を要する任務なのか。
「・・・・・・」
胸が騒いだ。
それから夜蛾さんに引率された二人が実験室に入っていくのを見た。
適当言って硝子さんと別れ、私は実験室の前までそっと近づき中の会話に聞き耳を立てた。
「少女 の護衛と抹消ォ??」
と不可解そうに五条さんが声を上げる。
護衛と抹消。
並べては意味をなさない言葉に、私も眉をひそめる。
それから幾つかの会話の後、夏油さんが真面目なトーンで言った。
「天元様の術式の初期化ですか?」
天元。
聞き覚えのある言葉に私は短く息を飲んだ。
『『天元』を手にし、愚かな猿共が作った規定に縛られ利用されている愚かな呪術高専の者どもにとって代わり、私が呪術界の指導者となる』
大阪分校の任務の時、万城目が言ってた。
「天元様は‘‘不死,,の術式を持っているが‘‘不老,,ではない。ただ老いる分には問題ないが、一定以上の老化を終えると術式が肉体を創り変えようとする」
夜蛾さんは語る。
「‘‘進化,───人でなくなりより高次の存在と成る」
天元とは、術師の名前だった。
高専各校、呪術界の拠点となる結界、多くの補助監督の結界術。
それらの全てが天元によって強度が底上げされている。
天元の力添えがなければ、防護や任務の消化すらままならないらしい。
だが、‘‘進化,,の段階の存在には‘‘意志,,というものはないらしく、天元は天元でなくなるそうだ。
そうなった時、最悪の場合、天元が人類の敵と可能性もある。
そうならないために、500年に一度、『星漿体』と呼ばれる天元と適合する人間と同化し、肉体の情報を書き換え一新し、術式効果を振り出しに戻し、‘‘進化,,が起こらないようにするのだという。
しかし、天元と『星漿体』の同化の阻止を企む二つの組織がある。
呪詛師集団『Q』と盤星教『時の器の会』。
『Q』は天元の暴走による呪術界転覆を目論み、盤星教は天元を崇拝する新興宗教団体だ。
「問題児二人はどうしてる?」
と夜蛾さんが尋ねてきた。
名前を出してなくてもすぐにわかった。
「悟君と傑君なら、確か体育館に」
「ここへ来るように言って来てくれないか」
「またお説教ですか?」
「いや。任務だ」
「またですか?」
「今しがた通達があった」
「でも、あの二人はこの前も・・・」
「あぁ。働かせ過ぎなのはわかっている。だが、この任務はあの二人にと指名があったのだ」
この言葉で、今回の任務の重要さが伝わってきた。
「わかりました。呼んできます」
私はそう頷いて、体育館に向かった。
体育館に近づくと、ダムダムとボールをドリブルする音が聞こえてきた。どうやらバスケットボールに興じているらしい。
入り口から中を覗き込み二人に声を掛けようとした時だった。
「それ正論?」
挑発するような五条さんの声が聞こえてきた。
「俺、正論嫌いなんだよね」
それに続いて、
「・・・何?」
とムッとしたように夏油さんが言う。
仲良くバスケに興じていたと思ってたのに、何やら不穏な雰囲気だ。
「
五条さんの挑発は留まらない。
「ポジショントークで気持ち良くなってんじゃねーよ。オ"ッエー」
口論の原因はなんであれ、さすがにこれは言い過ぎだ。
諫めようと中に入ろうとした時だった。
「おっと」
その同時に、中から出てきた硝子さんとぶつかった。
「和紗」
「硝子、悟君と傑君は・・・」
「逃げるよ」
「え?」
と、硝子さんは有無を言わさず私の腕を引いて体育館から離れていく。
「硝子、離して?私、夜蛾さんからあの二人を呼んでくるようにって・・・」
「今はヤバイって。クズ共のケンカに巻き込まれたら怪我するよ」
「ケンカって、どうして?」
「夏油が説教して五条が反発する。それで夏油がキレて五条が挑発する。いつものパターンだよ」
「あの二人ってケンカするんだね」
「しょっちゅうだよ」
「でも私、見たことがな・・・あ」
私達が体育館から離れていくのと入れ違いに、夜蛾さんが体育館へ向かっていくのが見えた。
私が二人を呼ぶのを待ちきれなかったのか。
それほど急を要する任務なのか。
「・・・・・・」
胸が騒いだ。
それから夜蛾さんに引率された二人が実験室に入っていくのを見た。
適当言って硝子さんと別れ、私は実験室の前までそっと近づき中の会話に聞き耳を立てた。
「
と不可解そうに五条さんが声を上げる。
護衛と抹消。
並べては意味をなさない言葉に、私も眉をひそめる。
それから幾つかの会話の後、夏油さんが真面目なトーンで言った。
「天元様の術式の初期化ですか?」
天元。
聞き覚えのある言葉に私は短く息を飲んだ。
『『天元』を手にし、愚かな猿共が作った規定に縛られ利用されている愚かな呪術高専の者どもにとって代わり、私が呪術界の指導者となる』
大阪分校の任務の時、万城目が言ってた。
「天元様は‘‘不死,,の術式を持っているが‘‘不老,,ではない。ただ老いる分には問題ないが、一定以上の老化を終えると術式が肉体を創り変えようとする」
夜蛾さんは語る。
「‘‘進化,───人でなくなりより高次の存在と成る」
天元とは、術師の名前だった。
高専各校、呪術界の拠点となる結界、多くの補助監督の結界術。
それらの全てが天元によって強度が底上げされている。
天元の力添えがなければ、防護や任務の消化すらままならないらしい。
だが、‘‘進化,,の段階の存在には‘‘意志,,というものはないらしく、天元は天元でなくなるそうだ。
そうなった時、最悪の場合、天元が人類の敵と可能性もある。
そうならないために、500年に一度、『星漿体』と呼ばれる天元と適合する人間と同化し、肉体の情報を書き換え一新し、術式効果を振り出しに戻し、‘‘進化,,が起こらないようにするのだという。
しかし、天元と『星漿体』の同化の阻止を企む二つの組織がある。
呪詛師集団『Q』と盤星教『時の器の会』。
『Q』は天元の暴走による呪術界転覆を目論み、盤星教は天元を崇拝する新興宗教団体だ。