第31話 懐玉ー壱ー
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夕食を終えて食堂を出て寮へ戻ろうとしていた時だった。
リンリンリンリンリン
けたたましく鳴るベルの音に思わず立ち止まり振り返ると、一台の自転車が猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。
「危なっ・・・」
と言い終わらぬうちに、自転車は私と硝子さんの目の前でドリフトして止まった。
その自転車には夏油さんがハンドルを握り、そして、後ろの荷台には五条さんが腰を掛けて二人乗りしている。
「ただいま戻ったよーん」
と、五条さんが呑気な口調で言った。
「危ないなー、ぶつかったらどうするんだよ」
と、硝子さんが咎める。
だけど、五条さんはどこ吹く風といった様子だ。
「大丈夫だって。ぶつかりそうになったら無下限でオマエらのこと弾いてたし」
「どのみち危ないだろ」
「どうしたの、この自転車」
「以前捨てられてたのを拾って修理したんだ」
私の質問に夏油さんが答えた。
「高専の敷地内は広くて移動が大変だからって、悟が」
「悟君が?」
自転車修理なんて意外と器用なんだな、と感心しながら五条さんの方を見た。
すると、バチっと視線がぶつかった。
「・・・・・っ」
思わず顔の向きごと視線を逸らす。
五条さんが不可解そうに首を傾げたことには気が付いたけれど、
「すごいね。意外と器用なんだね」
と、何でもない風にしながらも顔を見ることが出来なかった。
『俺のものになってよ』
あれ以来、何だか五条さんとは気まずい。
気まずいと言っても、意識してるのは私だけで五条さんは至って普通なのだけれど。
無事に帰って来て顔を見られてホッとしているのに、いざ顔を合わせるとまともに向き合うことが出来ない。
(いや、あれはアドリブだって。お芝居なんだってば!)
と自分に言い聞かせるけれど、言い聞かせようとすればするほど意識してしまうのだ。
そんな時だった。
「和紗」
と、五条さんが私に呼びかけた。
私は小さく肩を震わせて、観念したようにおずおずと五条さんの顔を見た。
改めて目が合ったところで、
「コラーッ!貴様らーッ!」
突如、夜蛾さんの怒号が響き渡った。
「帰りが遅い!またどこかフラついていたな?しかもその自転車は何だ!?校内で乗るのは禁止だぞ!」
その声を聞いて、
「やべっ。傑、早く出せっ」
と五条さんが言い、夏油さんはペダルを踏み込んだ。
そして、迫って来る夜蛾さんから逃げるように自転車を漕ぎ出す。
その姿が遠ざかった所で、
「夜蛾せんせー!報告はまた後で~。まずは飯食ってくるからさーっ」
と、五条さんが片手を振りつつ後ろを振り向き言った。
駆けつけてきた夜蛾さんは私達のところで立ち止まると、
「全く・・・。問題児め」
と肩を落として、自転車で走り去る二人を見送った。
それから私と硝子さんは寮に戻り入浴をすませ、消灯時間まで硝子さんの部屋で過ごしていた。
おしゃべりをしていると、
「はぁー、めんどくせ」
ノックもなく突如、五条さんと夏油さんが部屋に入ってきた。
表情がゲンナリしている。どうやら夜蛾さんにこってりしぼられたらしい。
「レディーの部屋にノックもなく踏み込んでくるなよ」
「どこにレディーがいるんだよ、っと」
硝子さんの非難の声を聞き流して、五条さんは私の隣に座り込んだ。
「・・・・・・」
反射的に肩が震える。
だけど、五条さんはそれに気づくことなく話を続けた。
「明日、歌姫と冥さんを助けに行くぞ。硝子、オマエも一緒に行けってさ」
それを聞いて、
「私が?」
「私は?」
と、硝子さんと私は同時に言った。
すると夏油さんがそれぞれに応える。
「万が一、二人が負傷している場合に備えてね。今回は硝子が私達と一緒に行く。和紗は高専で待機だ」
「まぁ・・・しょうがないか」
と硝子さんは呟く。
リンリンリンリンリン
けたたましく鳴るベルの音に思わず立ち止まり振り返ると、一台の自転車が猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。
「危なっ・・・」
と言い終わらぬうちに、自転車は私と硝子さんの目の前でドリフトして止まった。
その自転車には夏油さんがハンドルを握り、そして、後ろの荷台には五条さんが腰を掛けて二人乗りしている。
「ただいま戻ったよーん」
と、五条さんが呑気な口調で言った。
「危ないなー、ぶつかったらどうするんだよ」
と、硝子さんが咎める。
だけど、五条さんはどこ吹く風といった様子だ。
「大丈夫だって。ぶつかりそうになったら無下限でオマエらのこと弾いてたし」
「どのみち危ないだろ」
「どうしたの、この自転車」
「以前捨てられてたのを拾って修理したんだ」
私の質問に夏油さんが答えた。
「高専の敷地内は広くて移動が大変だからって、悟が」
「悟君が?」
自転車修理なんて意外と器用なんだな、と感心しながら五条さんの方を見た。
すると、バチっと視線がぶつかった。
「・・・・・っ」
思わず顔の向きごと視線を逸らす。
五条さんが不可解そうに首を傾げたことには気が付いたけれど、
「すごいね。意外と器用なんだね」
と、何でもない風にしながらも顔を見ることが出来なかった。
『俺のものになってよ』
あれ以来、何だか五条さんとは気まずい。
気まずいと言っても、意識してるのは私だけで五条さんは至って普通なのだけれど。
無事に帰って来て顔を見られてホッとしているのに、いざ顔を合わせるとまともに向き合うことが出来ない。
(いや、あれはアドリブだって。お芝居なんだってば!)
と自分に言い聞かせるけれど、言い聞かせようとすればするほど意識してしまうのだ。
そんな時だった。
「和紗」
と、五条さんが私に呼びかけた。
私は小さく肩を震わせて、観念したようにおずおずと五条さんの顔を見た。
改めて目が合ったところで、
「コラーッ!貴様らーッ!」
突如、夜蛾さんの怒号が響き渡った。
「帰りが遅い!またどこかフラついていたな?しかもその自転車は何だ!?校内で乗るのは禁止だぞ!」
その声を聞いて、
「やべっ。傑、早く出せっ」
と五条さんが言い、夏油さんはペダルを踏み込んだ。
そして、迫って来る夜蛾さんから逃げるように自転車を漕ぎ出す。
その姿が遠ざかった所で、
「夜蛾せんせー!報告はまた後で~。まずは飯食ってくるからさーっ」
と、五条さんが片手を振りつつ後ろを振り向き言った。
駆けつけてきた夜蛾さんは私達のところで立ち止まると、
「全く・・・。問題児め」
と肩を落として、自転車で走り去る二人を見送った。
それから私と硝子さんは寮に戻り入浴をすませ、消灯時間まで硝子さんの部屋で過ごしていた。
おしゃべりをしていると、
「はぁー、めんどくせ」
ノックもなく突如、五条さんと夏油さんが部屋に入ってきた。
表情がゲンナリしている。どうやら夜蛾さんにこってりしぼられたらしい。
「レディーの部屋にノックもなく踏み込んでくるなよ」
「どこにレディーがいるんだよ、っと」
硝子さんの非難の声を聞き流して、五条さんは私の隣に座り込んだ。
「・・・・・・」
反射的に肩が震える。
だけど、五条さんはそれに気づくことなく話を続けた。
「明日、歌姫と冥さんを助けに行くぞ。硝子、オマエも一緒に行けってさ」
それを聞いて、
「私が?」
「私は?」
と、硝子さんと私は同時に言った。
すると夏油さんがそれぞれに応える。
「万が一、二人が負傷している場合に備えてね。今回は硝子が私達と一緒に行く。和紗は高専で待機だ」
「まぁ・・・しょうがないか」
と硝子さんは呟く。