第30話 呪術演劇部
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そうしてしばらくふたりで笑い合った後、
「呪術師が非術師を見下す風潮があることは知ってる」
夏油さんが真面目な口調で語り始めた。
「そして、同じ呪術師でも術師の家系か否かで見えない差別があるってこともね」
「・・・・・・」
「彼は禪院家の人間だ。『禪院家に非ずんば呪術師に非ず。呪術師に非ずんば人に非ず』などという思想が公然とある家だ。その考えが血に骨に滲み込んだ人間は、こちらがああだこうだ説いても殴り飛ばしても、何も変わらないだろう。そんな人間の言うことを気にしたって仕方がない」
「・・・変だよね」
「ん?」
「呪術師でも非術師でも、そんなことで優劣なんてつけられるはずないのに。私達はみんな同じ人間なのに」
「・・・そうだね」
と呟いて、夏油さんは優しく、でも少し悲しそうに微笑んだ。
「和紗の言う通りだ」
「でも、意外だった」
「ん?」
「傑君、呪術師としての考えがしっかりしてるから、てっきりご両親も術師で英才教育されてたのかなって」
「両親は普通のサラリーマンと主婦だよ。呪術界とは無縁の人達だ」
「・・・それでどうして呪術高専へ?」
「・・・私は、幼い時から呪いが見えていて」
すると、夏油さんは少し遠い目をして話を始めた。
「もちろん最初はそれが恐ろしかった。自分が、普通の人と違うということも不安だった。非術師である両親にとっては、尚更だったろう。でも、そんな私の能力を才能なのだと、個性なのだと認めて向かい合ってくれた。そして、いつかこの力が人のために役立ち、必要とされると教えてくれた。そのおかげで、私は自分であることに逃げずにいられて、縁があってここにいる」
「そうなんだ・・・」
「両親は、私の誇りだよ。私は、彼らに私を誇りに思ってもらえるように呪術師をしている」
と、夏油さんは今度は晴れやかに微笑んだ。
それにつられて、私も微笑む。
そして、ホッとした。
この様子なら大丈夫だと思った。
でも。
ふと現実が脳裏を過ぎる。
無差別呪術テロ『百鬼夜行』。
その首謀者が彼であるという揺らぐことのない現実を。
(・・・信じたくない)
そんなこと、信じたくない。
私には、もう既に『現実』が見えなくなっていた。
その午後。
急遽任務が入り、五条さんと夏油さんは高専を後にした。
そして、他の任務先で呪術師と多数の非術師に負傷者が出たということで、硝子さんが治療活動に赴くことになった。
私は、ひとりで高専で待機することになった。
「・・・・・・」
食堂にポツンとひとりで座って、昼食のカレーを食べる。
さっきまで賑やかだったのに、急にひとりになってしまって何だか寂しい。
そんなことを思いながら、もくもくとカレーを食べていると。
「あれ~、君ひとりなん?悟君らは?」
なんと、直哉さんがふらりと食堂へやって来た。
そして、そのまま私の向かいの席に座る。
なので、私は密かに警戒して身を強張らせた。
「悟君達は任務に行きました」
「マジで?もっと悟君と話したかったのになぁ」
「・・・交流会の打ち合わせは終わったんですか?」
「あぁ、うん。今年は演劇やるんやって」
「演劇!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「演劇って、どうして。交流会では団体戦と個人戦が恒例でしたよね?」
「うん、そやで。だから、今年は団体戦と演劇」
直哉さんは頬杖を突きながら言った。
「なんでも、個人戦やと悟君と夏油君の実力が飛びぬけ過ぎて勝負にならんと判断したから、チームワークを評価するため演劇対決やねんてさ。アホらし」
「・・・・・・」
「ったく、舐められたもんやで。ま、確かに俺以外の京都校の連中は雑魚ばっかでクソの役にも立たへんけどな」
「・・・・・・」
クラスメイトのことを雑魚とか役に立たないだとか。
やっぱりこの人、感じ悪い。
(早くどこか行ってくれないかなぁ)
なんて思いながら、直哉さんが話すのを聞き流しつつ、カレーを食べすすめる。
「・・・・・・」
そんな私を値踏みするかのように、直哉さんは上から下へ視線を滑らせていた。そして、
「君、どっちと付き合うてんの?」
と、唐突に尋ねてきた。
「は?」
と、私はスプーンを握る手を止めた。
「呪術師が非術師を見下す風潮があることは知ってる」
夏油さんが真面目な口調で語り始めた。
「そして、同じ呪術師でも術師の家系か否かで見えない差別があるってこともね」
「・・・・・・」
「彼は禪院家の人間だ。『禪院家に非ずんば呪術師に非ず。呪術師に非ずんば人に非ず』などという思想が公然とある家だ。その考えが血に骨に滲み込んだ人間は、こちらがああだこうだ説いても殴り飛ばしても、何も変わらないだろう。そんな人間の言うことを気にしたって仕方がない」
「・・・変だよね」
「ん?」
「呪術師でも非術師でも、そんなことで優劣なんてつけられるはずないのに。私達はみんな同じ人間なのに」
「・・・そうだね」
と呟いて、夏油さんは優しく、でも少し悲しそうに微笑んだ。
「和紗の言う通りだ」
「でも、意外だった」
「ん?」
「傑君、呪術師としての考えがしっかりしてるから、てっきりご両親も術師で英才教育されてたのかなって」
「両親は普通のサラリーマンと主婦だよ。呪術界とは無縁の人達だ」
「・・・それでどうして呪術高専へ?」
「・・・私は、幼い時から呪いが見えていて」
すると、夏油さんは少し遠い目をして話を始めた。
「もちろん最初はそれが恐ろしかった。自分が、普通の人と違うということも不安だった。非術師である両親にとっては、尚更だったろう。でも、そんな私の能力を才能なのだと、個性なのだと認めて向かい合ってくれた。そして、いつかこの力が人のために役立ち、必要とされると教えてくれた。そのおかげで、私は自分であることに逃げずにいられて、縁があってここにいる」
「そうなんだ・・・」
「両親は、私の誇りだよ。私は、彼らに私を誇りに思ってもらえるように呪術師をしている」
と、夏油さんは今度は晴れやかに微笑んだ。
それにつられて、私も微笑む。
そして、ホッとした。
この様子なら大丈夫だと思った。
でも。
ふと現実が脳裏を過ぎる。
無差別呪術テロ『百鬼夜行』。
その首謀者が彼であるという揺らぐことのない現実を。
(・・・信じたくない)
そんなこと、信じたくない。
私には、もう既に『現実』が見えなくなっていた。
その午後。
急遽任務が入り、五条さんと夏油さんは高専を後にした。
そして、他の任務先で呪術師と多数の非術師に負傷者が出たということで、硝子さんが治療活動に赴くことになった。
私は、ひとりで高専で待機することになった。
「・・・・・・」
食堂にポツンとひとりで座って、昼食のカレーを食べる。
さっきまで賑やかだったのに、急にひとりになってしまって何だか寂しい。
そんなことを思いながら、もくもくとカレーを食べていると。
「あれ~、君ひとりなん?悟君らは?」
なんと、直哉さんがふらりと食堂へやって来た。
そして、そのまま私の向かいの席に座る。
なので、私は密かに警戒して身を強張らせた。
「悟君達は任務に行きました」
「マジで?もっと悟君と話したかったのになぁ」
「・・・交流会の打ち合わせは終わったんですか?」
「あぁ、うん。今年は演劇やるんやって」
「演劇!?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「演劇って、どうして。交流会では団体戦と個人戦が恒例でしたよね?」
「うん、そやで。だから、今年は団体戦と演劇」
直哉さんは頬杖を突きながら言った。
「なんでも、個人戦やと悟君と夏油君の実力が飛びぬけ過ぎて勝負にならんと判断したから、チームワークを評価するため演劇対決やねんてさ。アホらし」
「・・・・・・」
「ったく、舐められたもんやで。ま、確かに俺以外の京都校の連中は雑魚ばっかでクソの役にも立たへんけどな」
「・・・・・・」
クラスメイトのことを雑魚とか役に立たないだとか。
やっぱりこの人、感じ悪い。
(早くどこか行ってくれないかなぁ)
なんて思いながら、直哉さんが話すのを聞き流しつつ、カレーを食べすすめる。
「・・・・・・」
そんな私を値踏みするかのように、直哉さんは上から下へ視線を滑らせていた。そして、
「君、どっちと付き合うてんの?」
と、唐突に尋ねてきた。
「は?」
と、私はスプーンを握る手を止めた。