第30話 呪術演劇部
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そっと五条さんの方へ視線を向ける。
五条さんは早速お土産の箱を開けている。
「お、うまそー。灰原の奴、気ぃ利くじゃん」
「悟、手を洗ってから食べなよ」
私は、この世界に居心地の良さを覚えてしまっていた。
(・・・ダメだよね、こんなことじゃ)
この日の授業を終えて、私は寮の自分の部屋に戻っていた。
(居心地が良いだなんて、ここは偽りの世界なのに)
偽り。
その言葉にキリッと胸が痛んだ。
この世界では、五条さんに掛けられる言葉も向けられる眼差しも、全てが偽り。
全てが偽りだということが事実。
「・・・・・・」
私はひとつ溜息を吐いてから、灰原君からもらったお土産の箱を開けた。
箱の中身はクッキーだった。
その一枚を取って頬張る。
頬張ったクッキーは甘くて、口の中でホロホロとほどけてなくなった。
「・・・美味しい」
クッキーは美味しくて、食べるのが止まらなくて、あっという間に無くなってしまった。
「こんなに美味しいのに、これもニセモノなの~っ?」
と、そのまま床に仰向けに寝転んだ。
と、その時。
「和紗!」
大きな声と共に乱暴にドアが開いて、五条さんが部屋に乱入してきた。
「な、何!?」
私はびっくりして飛び起きた。
五条さんは私が驚いているのにも構わず、突然押入れを開けだした。
「ちょっと、何勝手に人の部屋の押入れを・・・」
「シッ。静かに。俺がいるってことは黙っとけよ」
「は?」
五条さんはそれ以上何も言わずに、そのまま押入れに入って襖を閉めてしまった。
「・・・・?」
訳が分からず眉をしかめていたら、今度はトントンとドアがノックされる音が響いた。
「は、はい。どうぞー?」
と促すと、
「和紗、ジャマするよ」
今度は夏油さんが入ってきた。
「悟、来てない?」
「あ、えーっと」
チラッと一瞬だけ押入れの方へ視線を向けた後、
「き、来てないよ?」
と私は答えた。
夏油さんはそれを聞いて「そっか」と頷いた後、
「悟はここにもいないそうです」
と、背後を振り返りそう言った。
誰がいるのだろうかと夏油さんの背後を覗き込んでみると、
「ほうですかぁ~。他に心辺りはありませんかのぉ、夏油殿」
そこには、なんと千代婆さん(12年前も見た目が全く同じ)がいた(第16話参照)!
(で、出た!)
もしかしたら、この世界でも会うかもしれないと思っていたけれど。
千代婆さんに散々痛めつけられたトラウマで、私は千代婆さんの顔を見て内心ビクビクしていた。
そんなことは知る由もない千代婆さんは、私に構わずブツブツと零す。
「見合いの話を持ってくるといつもこうじゃ。今回こそは逃がすまいと不意打ちで来たというのに。坊の勘の良さには感心するやら呆れるやら・・・」
「他所を当たりましょう」
と夏油さんは千代婆さんを促しながら、私の方を振り返り、
「じゃ、悟がもし来たらヨロシク」
と意味ありげに笑って去っていった。
(ひょっとしてここに隠れてるってバレてる?)
夏油さんのことだ、きっとそうだ。
(それにしても見合いの話って)
12年前からこんな感じだったんだ。
よく12年ものらりくらりと話をかわしてこれたもんだ。
諦めない千代婆さんも大概だけど・・・。
「悟君、もう大丈夫だよ」
押入れの前に立ち、そっと呼びかける。
するとスーッと襖が開いて、憮然とした表情の五条さんが顔を見せた。
それがなんだかおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
「何がおかしいんだよ」
「苦労してるんだね」
「ホントだよ。まだ16だってのに見合いだとかやってられるかっての。面倒臭ぇ」
と、五条さんは押入れから出てきた。
五条さんは早速お土産の箱を開けている。
「お、うまそー。灰原の奴、気ぃ利くじゃん」
「悟、手を洗ってから食べなよ」
私は、この世界に居心地の良さを覚えてしまっていた。
(・・・ダメだよね、こんなことじゃ)
この日の授業を終えて、私は寮の自分の部屋に戻っていた。
(居心地が良いだなんて、ここは偽りの世界なのに)
偽り。
その言葉にキリッと胸が痛んだ。
この世界では、五条さんに掛けられる言葉も向けられる眼差しも、全てが偽り。
全てが偽りだということが事実。
「・・・・・・」
私はひとつ溜息を吐いてから、灰原君からもらったお土産の箱を開けた。
箱の中身はクッキーだった。
その一枚を取って頬張る。
頬張ったクッキーは甘くて、口の中でホロホロとほどけてなくなった。
「・・・美味しい」
クッキーは美味しくて、食べるのが止まらなくて、あっという間に無くなってしまった。
「こんなに美味しいのに、これもニセモノなの~っ?」
と、そのまま床に仰向けに寝転んだ。
と、その時。
「和紗!」
大きな声と共に乱暴にドアが開いて、五条さんが部屋に乱入してきた。
「な、何!?」
私はびっくりして飛び起きた。
五条さんは私が驚いているのにも構わず、突然押入れを開けだした。
「ちょっと、何勝手に人の部屋の押入れを・・・」
「シッ。静かに。俺がいるってことは黙っとけよ」
「は?」
五条さんはそれ以上何も言わずに、そのまま押入れに入って襖を閉めてしまった。
「・・・・?」
訳が分からず眉をしかめていたら、今度はトントンとドアがノックされる音が響いた。
「は、はい。どうぞー?」
と促すと、
「和紗、ジャマするよ」
今度は夏油さんが入ってきた。
「悟、来てない?」
「あ、えーっと」
チラッと一瞬だけ押入れの方へ視線を向けた後、
「き、来てないよ?」
と私は答えた。
夏油さんはそれを聞いて「そっか」と頷いた後、
「悟はここにもいないそうです」
と、背後を振り返りそう言った。
誰がいるのだろうかと夏油さんの背後を覗き込んでみると、
「ほうですかぁ~。他に心辺りはありませんかのぉ、夏油殿」
そこには、なんと千代婆さん(12年前も見た目が全く同じ)がいた(第16話参照)!
(で、出た!)
もしかしたら、この世界でも会うかもしれないと思っていたけれど。
千代婆さんに散々痛めつけられたトラウマで、私は千代婆さんの顔を見て内心ビクビクしていた。
そんなことは知る由もない千代婆さんは、私に構わずブツブツと零す。
「見合いの話を持ってくるといつもこうじゃ。今回こそは逃がすまいと不意打ちで来たというのに。坊の勘の良さには感心するやら呆れるやら・・・」
「他所を当たりましょう」
と夏油さんは千代婆さんを促しながら、私の方を振り返り、
「じゃ、悟がもし来たらヨロシク」
と意味ありげに笑って去っていった。
(ひょっとしてここに隠れてるってバレてる?)
夏油さんのことだ、きっとそうだ。
(それにしても見合いの話って)
12年前からこんな感じだったんだ。
よく12年ものらりくらりと話をかわしてこれたもんだ。
諦めない千代婆さんも大概だけど・・・。
「悟君、もう大丈夫だよ」
押入れの前に立ち、そっと呼びかける。
するとスーッと襖が開いて、憮然とした表情の五条さんが顔を見せた。
それがなんだかおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
「何がおかしいんだよ」
「苦労してるんだね」
「ホントだよ。まだ16だってのに見合いだとかやってられるかっての。面倒臭ぇ」
と、五条さんは押入れから出てきた。