第29話 まつろわぬ民
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「ははっ。ふたりともご機嫌だね」
合流するなり、キャラ物のサングラスとカチューシャとポップコーンバゲットを提げた私達の格好を見て、夏油さんは笑った。
「傑もかけるー?」
と、五条さんが夏油さんにサングラスを差し向ける。
それを夏油さんはやんわりと断る。
「いや、私はいいよ」
「っていうか、それ私のサングラスなんだけど」
と私が言うのを無視して、五条さんは自分の物のようにサングラスを装着した。
「何しれっとかけてるの。返してよ」
「さっき俺に譲ってくれようとしてたじゃん」
「・・・そのまま東京まで帰るつもり?」
「裸眼よりマシだしな」
「パーク内ならいいけど・・・。外出たら離れて歩くからね、私」
「え~。そんなつれないこと言うなよぉ。お揃いで帰ろうぜ~」
「絶対イヤ」
私と五条さんがそんな会話をしていると、
「何だかずいぶん仲良くなったみたいだねぇ」
と、夏油さんが言った。
その言葉に「は?」と私と五条さんは同時に振り返る。
夏油さんはニマニマとしながら続けた。
「私はオジャマ虫だったかな?」
「・・・何言ってんの、夏油さん」
「くだらねーこと言ってないで行こうぜ~。残り時間少ないんだろ?」
「それなら大丈夫だよ。夜蛾先生が、閉園時間まで遊んでいいって」
「マジ?いいとこあるじゃん、夜蛾せんせー」
「やったぁ!」
・・・そうして、私達三人は閉園までたっぷり遊び回った。
夜の闇が深くなるにつれて、パーク内の色とりどりの照明が眩く煌めく。
まるで夢の中にいるみたい。
(そうだ、これは夢なんだ)
私、何楽しんでいるんだろう。
現実の世界では、皆が傷ついて苦しんでいるのに。
お父さん達が戦いに巻き込まれようとしているのに。
あの人が、閉じ込められて捕らえられているのに。
「・・・・・・」
ふと立ち止まる。
すると、五条さんと夏油さんも立ち止まり私の方を振り返った。
「どうした?」
そう、これは夢なんだ。
(夢・・・)
本当は、『むこうの世界』こそが夢なんじゃないのかな?
私はずっと、悪い夢をみていたんじゃないのかな。
「何ボケーっとしてんだよ。もう一回ジュラシックパーク行くんだろー?」
立ち止まる私に五条さんが呼びかける。
私はしばらく二人の顔を見遣った後、
「・・・うん。行こう!」
と、二人の元へ駆け出した。
全てのアトラクションを二周して、夜のパレードも見て、硝子さん達へのお土産も買って、閉園時間までめいいっぱい楽しんで、私達は東京への帰路についた。
帰りの新幹線の座席も行きと同様に、五条さんと夏油さん、夜蛾さんと私がそれぞれ隣同士で座る。
さすがに疲れ果てて、うつらうつらと船をこいでいたら、
「和紗」
呼びかけられて、私はハッと顔を上げた。
見てみると、前の座席の背もたれからヒョッコリと五条さんが顔を覗かせていた。
そして、棒付きキャンディーを私に向かって差し出す。
「食う?」
「あ、ありがとう」
と、私は手を伸ばしてそれを受け取った。
そして、遅れてハッとする。
(・・・名前・・・)
名前を呼ばれた。
それだけで胸がキュッとなる。
が。
「・・・って、これ」
手渡されたキャンディーを見て、私は愕然とする。
「お土産に買ったキャンディーじゃない!」
「気にしない。気にしない」
「もぉっ、五条さ・・・」
「悟」
唐突にそう言われて、私は目をパチクリとする。
そんな私に五条さんは言った。
「名前でいいよ。苗字にさん付けって堅苦しいだろ」
「・・・・・・」
「私も名前がいいな」
夏油さんも背もたれからヒョッコリと顔を覗かせる。
「私は和紗のこと呼び捨てしてるのに、和紗は夏油さん呼びってなんだかねぇ?」
「それはオマエの腹黒さを感じ取って警戒してるのではないのかね?」
「ん?誰が腹黒だって?悟」
「自分の性分気づいてねぇの~?」
「公に性格の悪い君に言われたくないねぇ」
と、何故かくだらない口喧嘩を始めた二人を。
「・・・悟君、傑君」
名前を呼んで、私はたしなめる。
「他の乗客に迷惑でしょ」
そして、小さく笑った。
ふたりも顔を見合わせた後、フッと笑った。
「そして、お土産を食べないの。今すぐしまって!」
「いいじゃん。東京駅でまた何か買えば」
「そんなの意味ないじゃない!」
そんな私達三人を。
「・・・・・・」
夜蛾さんが密かに微笑んで見守っていた。
つづく
合流するなり、キャラ物のサングラスとカチューシャとポップコーンバゲットを提げた私達の格好を見て、夏油さんは笑った。
「傑もかけるー?」
と、五条さんが夏油さんにサングラスを差し向ける。
それを夏油さんはやんわりと断る。
「いや、私はいいよ」
「っていうか、それ私のサングラスなんだけど」
と私が言うのを無視して、五条さんは自分の物のようにサングラスを装着した。
「何しれっとかけてるの。返してよ」
「さっき俺に譲ってくれようとしてたじゃん」
「・・・そのまま東京まで帰るつもり?」
「裸眼よりマシだしな」
「パーク内ならいいけど・・・。外出たら離れて歩くからね、私」
「え~。そんなつれないこと言うなよぉ。お揃いで帰ろうぜ~」
「絶対イヤ」
私と五条さんがそんな会話をしていると、
「何だかずいぶん仲良くなったみたいだねぇ」
と、夏油さんが言った。
その言葉に「は?」と私と五条さんは同時に振り返る。
夏油さんはニマニマとしながら続けた。
「私はオジャマ虫だったかな?」
「・・・何言ってんの、夏油さん」
「くだらねーこと言ってないで行こうぜ~。残り時間少ないんだろ?」
「それなら大丈夫だよ。夜蛾先生が、閉園時間まで遊んでいいって」
「マジ?いいとこあるじゃん、夜蛾せんせー」
「やったぁ!」
・・・そうして、私達三人は閉園までたっぷり遊び回った。
夜の闇が深くなるにつれて、パーク内の色とりどりの照明が眩く煌めく。
まるで夢の中にいるみたい。
(そうだ、これは夢なんだ)
私、何楽しんでいるんだろう。
現実の世界では、皆が傷ついて苦しんでいるのに。
お父さん達が戦いに巻き込まれようとしているのに。
あの人が、閉じ込められて捕らえられているのに。
「・・・・・・」
ふと立ち止まる。
すると、五条さんと夏油さんも立ち止まり私の方を振り返った。
「どうした?」
そう、これは夢なんだ。
(夢・・・)
本当は、『むこうの世界』こそが夢なんじゃないのかな?
私はずっと、悪い夢をみていたんじゃないのかな。
「何ボケーっとしてんだよ。もう一回ジュラシックパーク行くんだろー?」
立ち止まる私に五条さんが呼びかける。
私はしばらく二人の顔を見遣った後、
「・・・うん。行こう!」
と、二人の元へ駆け出した。
全てのアトラクションを二周して、夜のパレードも見て、硝子さん達へのお土産も買って、閉園時間までめいいっぱい楽しんで、私達は東京への帰路についた。
帰りの新幹線の座席も行きと同様に、五条さんと夏油さん、夜蛾さんと私がそれぞれ隣同士で座る。
さすがに疲れ果てて、うつらうつらと船をこいでいたら、
「和紗」
呼びかけられて、私はハッと顔を上げた。
見てみると、前の座席の背もたれからヒョッコリと五条さんが顔を覗かせていた。
そして、棒付きキャンディーを私に向かって差し出す。
「食う?」
「あ、ありがとう」
と、私は手を伸ばしてそれを受け取った。
そして、遅れてハッとする。
(・・・名前・・・)
名前を呼ばれた。
それだけで胸がキュッとなる。
が。
「・・・って、これ」
手渡されたキャンディーを見て、私は愕然とする。
「お土産に買ったキャンディーじゃない!」
「気にしない。気にしない」
「もぉっ、五条さ・・・」
「悟」
唐突にそう言われて、私は目をパチクリとする。
そんな私に五条さんは言った。
「名前でいいよ。苗字にさん付けって堅苦しいだろ」
「・・・・・・」
「私も名前がいいな」
夏油さんも背もたれからヒョッコリと顔を覗かせる。
「私は和紗のこと呼び捨てしてるのに、和紗は夏油さん呼びってなんだかねぇ?」
「それはオマエの腹黒さを感じ取って警戒してるのではないのかね?」
「ん?誰が腹黒だって?悟」
「自分の性分気づいてねぇの~?」
「公に性格の悪い君に言われたくないねぇ」
と、何故かくだらない口喧嘩を始めた二人を。
「・・・悟君、傑君」
名前を呼んで、私はたしなめる。
「他の乗客に迷惑でしょ」
そして、小さく笑った。
ふたりも顔を見合わせた後、フッと笑った。
「そして、お土産を食べないの。今すぐしまって!」
「いいじゃん。東京駅でまた何か買えば」
「そんなの意味ないじゃない!」
そんな私達三人を。
「・・・・・・」
夜蛾さんが密かに微笑んで見守っていた。
つづく
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