第29話 まつろわぬ民
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「でかしたぞ、梨理衣!」
万城目が高笑いしながら言った。
「その短剣は我が先祖の爪から作られた呪具。その短剣で刺されると、傷口から毒蜘蛛が体内へ入り込み臓器を食い散らかし・・・ブッ!!」
言葉の途中で、万城目は呪霊ごと吹き飛ばされて壁に減り込んだ。
そして更に、
「きゃっ!!」
梨理衣ちゃんの身体がふわりと宙に浮いたかと思うと、すぐさま床に激しく叩きつけられた。
そのまま気絶した梨理衣ちゃんの頭が、まるでサッカーボールの様に踏みつけられる。
「悟」
それを咎めるように、夏油さんがその名を呼ぶ。
そう、万城目も梨理衣ちゃんも、五条さんがしたことだ。
「どうする、傑」
五条さんは言った。
ずっと軽快なノリと雰囲気だったのに、今の五条さんは恐ろしく感じるほど張り詰めた空気を纏っている。
「俺は、このままこのガキの頭を踏みつぶしてやってもいいと思うんだけど」
「ダメだ」
「なんで?どうせこんなガキ、呪力のせいで家族からもダチからも気味悪がられて捨てられて、こんな掃き溜めしか居場所がないんだろ。このまま殺してやった方が、コイツも幸せなんじゃない?生きててももう良い事ないだろ」
「ダメだ。彼女は洗脳されているだけだ。その洗脳を解いて・・・」
バシンッ
五条さんの頬を打った。
打ったのは、私だ。
突然のことに、五条さんも夏油さんも驚いて目を点にしている。
が、五条さんはハッと我に返って私を睨んだ。
「何すんだ、テメェ!」
「足を降ろして」
私は怯むことなく言った。
「いますぐその足を降ろして」
「・・・悟」
後押しするように夏油さんが言うと、五条さんは梨理衣ちゃんの頭から足を降ろした。そして、
「あーぁ。オマエらの善人ぶった態度って、ほんっと反吐がでるよ」
とそっぽを向いてしまった。
『生きててももう良い事ないだろ』
私が知っている五条さんは、絶対あんなこと言ったりしない。
やっぱりこの人は、私の知っている五条さんとは別人なんだ。
私は悲しくて、五条さんの背中を見つめた。
だけど、
「グ・・・ッ」
夏油さんが苦しそうに唸るのを聞いて、ハッと我に返った。
「夏油さん・・・!」
そして、夏油さんの傍に来て傷口に両手を添えた。
(反転術式・・・)
この夢の世界の私でも、反転術式が出来るのだろうか。
息を吸い、ゆっくりと吐き出してから、集中する。
すると、私の両手から暖かな光のような呪力が溢れて夏油さんの傷口を包み始めた。
「・・・・・・」
夏油さんが驚いて目を見開く。
背中を向けていた五条さんも、驚いてこちらを振り向いた。
「・・・・・・」
傷口から正のエネルギーを流し込み、身体の中に入り込んだ毒蜘蛛達を祓う。すべての毒蜘蛛が消滅して、
「・・・はぁ~・・・」
私はグッタリとして息を吐いた。
「・・・これは驚いたな」
すっかり回復して顔色が戻った夏油さんが言った。
「和紗も反転術式の使い手だったとはね」
「んだよー、そんなことが出来んなら最初から言えよ」
さっきまでピリついていた五条さんが、興味津々に私に尋ねる。
「コツとかあったら教えろよ。俺、未だ反転術式だけは成功してねぇんだよなー。硝子に訊いても、アイツとんちんかんなことしか答えねぇし」
「コツ?」
尋ねられて、私はウーンと考え込みながら答える。
「ヒューッとやってヒョイッかな?」
「・・・なんだソレ。全然わかんないんだけど」
「だって、ホントにそんな感じなんだもの」
「硝子と同じ事言いやがって。反転術式使いは揃いも揃ってバカなのかよ」
と言いながら五条さんは踵を返すと、私から距離を取り、ブツブツと言いながら呪力を練り始めた。どうやら反転術式の練習を始めたらしい。
万城目が高笑いしながら言った。
「その短剣は我が先祖の爪から作られた呪具。その短剣で刺されると、傷口から毒蜘蛛が体内へ入り込み臓器を食い散らかし・・・ブッ!!」
言葉の途中で、万城目は呪霊ごと吹き飛ばされて壁に減り込んだ。
そして更に、
「きゃっ!!」
梨理衣ちゃんの身体がふわりと宙に浮いたかと思うと、すぐさま床に激しく叩きつけられた。
そのまま気絶した梨理衣ちゃんの頭が、まるでサッカーボールの様に踏みつけられる。
「悟」
それを咎めるように、夏油さんがその名を呼ぶ。
そう、万城目も梨理衣ちゃんも、五条さんがしたことだ。
「どうする、傑」
五条さんは言った。
ずっと軽快なノリと雰囲気だったのに、今の五条さんは恐ろしく感じるほど張り詰めた空気を纏っている。
「俺は、このままこのガキの頭を踏みつぶしてやってもいいと思うんだけど」
「ダメだ」
「なんで?どうせこんなガキ、呪力のせいで家族からもダチからも気味悪がられて捨てられて、こんな掃き溜めしか居場所がないんだろ。このまま殺してやった方が、コイツも幸せなんじゃない?生きててももう良い事ないだろ」
「ダメだ。彼女は洗脳されているだけだ。その洗脳を解いて・・・」
バシンッ
五条さんの頬を打った。
打ったのは、私だ。
突然のことに、五条さんも夏油さんも驚いて目を点にしている。
が、五条さんはハッと我に返って私を睨んだ。
「何すんだ、テメェ!」
「足を降ろして」
私は怯むことなく言った。
「いますぐその足を降ろして」
「・・・悟」
後押しするように夏油さんが言うと、五条さんは梨理衣ちゃんの頭から足を降ろした。そして、
「あーぁ。オマエらの善人ぶった態度って、ほんっと反吐がでるよ」
とそっぽを向いてしまった。
『生きててももう良い事ないだろ』
私が知っている五条さんは、絶対あんなこと言ったりしない。
やっぱりこの人は、私の知っている五条さんとは別人なんだ。
私は悲しくて、五条さんの背中を見つめた。
だけど、
「グ・・・ッ」
夏油さんが苦しそうに唸るのを聞いて、ハッと我に返った。
「夏油さん・・・!」
そして、夏油さんの傍に来て傷口に両手を添えた。
(反転術式・・・)
この夢の世界の私でも、反転術式が出来るのだろうか。
息を吸い、ゆっくりと吐き出してから、集中する。
すると、私の両手から暖かな光のような呪力が溢れて夏油さんの傷口を包み始めた。
「・・・・・・」
夏油さんが驚いて目を見開く。
背中を向けていた五条さんも、驚いてこちらを振り向いた。
「・・・・・・」
傷口から正のエネルギーを流し込み、身体の中に入り込んだ毒蜘蛛達を祓う。すべての毒蜘蛛が消滅して、
「・・・はぁ~・・・」
私はグッタリとして息を吐いた。
「・・・これは驚いたな」
すっかり回復して顔色が戻った夏油さんが言った。
「和紗も反転術式の使い手だったとはね」
「んだよー、そんなことが出来んなら最初から言えよ」
さっきまでピリついていた五条さんが、興味津々に私に尋ねる。
「コツとかあったら教えろよ。俺、未だ反転術式だけは成功してねぇんだよなー。硝子に訊いても、アイツとんちんかんなことしか答えねぇし」
「コツ?」
尋ねられて、私はウーンと考え込みながら答える。
「ヒューッとやってヒョイッかな?」
「・・・なんだソレ。全然わかんないんだけど」
「だって、ホントにそんな感じなんだもの」
「硝子と同じ事言いやがって。反転術式使いは揃いも揃ってバカなのかよ」
と言いながら五条さんは踵を返すと、私から距離を取り、ブツブツと言いながら呪力を練り始めた。どうやら反転術式の練習を始めたらしい。