第29話 まつろわぬ民
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ひらひらと『土蜘蛛』の突進をかわしながら、五条さんは呪力を飛ばし壁に亀裂を入れていく。
ピシッ
そうしていくうちに、
ガラガラガラ・・・
壁が崩れて、『土蜘蛛』はその下敷きになる。
そのうえ自分で撒き散らした糸が全身にくっついて、完全に身動き出来なくなった。
「・・・このまま祓う?」
「いや」
私の問いかけに、五条さんが答える。
「こうなりゃ動けねぇだろ。コイツも大阪分校がテロ組織だってことの証拠になる。このまま置いといて後で突き出す。それより、傑のとこに急ぐぞ」
「うん」
そうして、私達は階段を駆け上がり学長室へ向かった。
『チューしよーよ』
学長室へ戻ると、大勢いた職員や生徒達はいなくなっていた。
いるのは、降参したように床に座り込んでいる菅田さんと、
『ねぇ、チュー』
「こ、このっ、だ、誰かっ、この呪霊を祓え!祓わんか!」
椎茸の原木のようなフォルムの呪霊にガッシリ捕まっている万城目だけがいた。
その傍で、夏油さんは電話をかけている。
その傍で、万城目はわめき続ける。
「おいっ、菅田!地下に行き、我が先祖を解き放つのだ!偉大なる先祖の前では、こんな青二才の術師など・・・」
「先祖って、蜘蛛みたいな呪霊のことー?」
と五条さんが言うと、万城目はギョッとして振り向く。
五条さんはニンマリと笑みを浮かべて言葉を続けた。
「ソイツなら瓦礫の下敷きになっちゃったよーん」
「悟、和紗」
電話を切り、夏油さんが私たちの傍に歩み寄る。
「無事でよかった」
「夏油さんも。これ・・・みんなひとりでやっつけたの?」
「万城目を捕えたら、皆揃いも揃って逃げおおせたよ」
「そうなんだ・・・」
そう言いながら、私は辺りを見回す。
(梨理衣ちゃんもいない・・・)
あれだけ万城目に心酔していたのに置いて逃げるなんて、ちょっと意外だ。
そう思う一方で、私はホッとしていた。
「で、夜蛾せんせーとは連絡取れた?」
と五条さんが尋ねて、夏油さんは頷く。
「あぁ、今ここへ向かっているそうだ。京都校の楽巌寺学長も来るそうだよ」
「げー・・・」
「ハハッ。悟は苦手だもんな、楽巌寺学長のこと」
と少し緊張を解いている私たちを脇目に、
「奥の手もやられちゃったのなら、もはやここは泥舟ね」
と座り込んでいた菅田さんがゆっくり立ちあがった。
「私は降りるわ。サヨナラ。またいつかどこか、今度は違う形で会えるのを願っているわ」
そして夏油さんに向かってウィンクをすると、次の瞬間、菅田さんの周囲から霧が湧きたちその身を包んで隠してしまった。
「おい!」
と五条さんが駆け寄るけれど、すぐに霧は晴れて、すでに菅田さんの姿は消えていた。
どうやらこれが彼女の術式らしい。
五条さんは舌打ちをすると、夏油さんを振り返った。
「くそっ。どうする、傑。追うか?俺の眼なら追えなくもないけど」
「・・・いや。追わなくていい。おそらくもう彼女は・・・」
と言う夏油さんにむかって、小さな人影が突進するのが見えた。
「あ・・・」
危ないと言う前に、ドスッと鈍い音が周囲に響く。
「万城目サンを放せ・・・!」
梨理衣ちゃんが、夏油さんの懐に潜り込むようにして彼の脇腹に刃物を突き刺していた。
「・・・ッッ」
夏油さんは苦しそうに表情を歪めながらも、すぐさま梨理衣ちゃんの腕を後ろにひねり上げて動きを封じた。
「傑!」
「夏油さん!」
五条さんと私は、夏油さんの元へ駆け寄る。
見てみると、夏油さんの脇腹に短剣が深々と突き刺さっている。
それを目にして、私は動揺した。
「た、大変・・・!」
「大丈夫・・・」
と夏油さんは短剣の柄に手をかけ、ゆっくりと引き抜く。
傷口から血が流れ出る。しかし、それだけでなく。
「!」
引き抜いた短剣の切っ先から、蜘蛛の糸のようなものがくっついて引き出てくる。
そして、
「ぐっ・・・!」
再び、夏油さんの表情が歪む。
これは、ただ刺された痛みだけじゃない。
(まさか毒?)
そう考えついたその時、私はハッと息を飲んだ。
夏油さんの首のあたり。その皮膚の下を蜘蛛が蠢いているのが浮かび上がる。
ピシッ
そうしていくうちに、
ガラガラガラ・・・
壁が崩れて、『土蜘蛛』はその下敷きになる。
そのうえ自分で撒き散らした糸が全身にくっついて、完全に身動き出来なくなった。
「・・・このまま祓う?」
「いや」
私の問いかけに、五条さんが答える。
「こうなりゃ動けねぇだろ。コイツも大阪分校がテロ組織だってことの証拠になる。このまま置いといて後で突き出す。それより、傑のとこに急ぐぞ」
「うん」
そうして、私達は階段を駆け上がり学長室へ向かった。
『チューしよーよ』
学長室へ戻ると、大勢いた職員や生徒達はいなくなっていた。
いるのは、降参したように床に座り込んでいる菅田さんと、
『ねぇ、チュー』
「こ、このっ、だ、誰かっ、この呪霊を祓え!祓わんか!」
椎茸の原木のようなフォルムの呪霊にガッシリ捕まっている万城目だけがいた。
その傍で、夏油さんは電話をかけている。
その傍で、万城目はわめき続ける。
「おいっ、菅田!地下に行き、我が先祖を解き放つのだ!偉大なる先祖の前では、こんな青二才の術師など・・・」
「先祖って、蜘蛛みたいな呪霊のことー?」
と五条さんが言うと、万城目はギョッとして振り向く。
五条さんはニンマリと笑みを浮かべて言葉を続けた。
「ソイツなら瓦礫の下敷きになっちゃったよーん」
「悟、和紗」
電話を切り、夏油さんが私たちの傍に歩み寄る。
「無事でよかった」
「夏油さんも。これ・・・みんなひとりでやっつけたの?」
「万城目を捕えたら、皆揃いも揃って逃げおおせたよ」
「そうなんだ・・・」
そう言いながら、私は辺りを見回す。
(梨理衣ちゃんもいない・・・)
あれだけ万城目に心酔していたのに置いて逃げるなんて、ちょっと意外だ。
そう思う一方で、私はホッとしていた。
「で、夜蛾せんせーとは連絡取れた?」
と五条さんが尋ねて、夏油さんは頷く。
「あぁ、今ここへ向かっているそうだ。京都校の楽巌寺学長も来るそうだよ」
「げー・・・」
「ハハッ。悟は苦手だもんな、楽巌寺学長のこと」
と少し緊張を解いている私たちを脇目に、
「奥の手もやられちゃったのなら、もはやここは泥舟ね」
と座り込んでいた菅田さんがゆっくり立ちあがった。
「私は降りるわ。サヨナラ。またいつかどこか、今度は違う形で会えるのを願っているわ」
そして夏油さんに向かってウィンクをすると、次の瞬間、菅田さんの周囲から霧が湧きたちその身を包んで隠してしまった。
「おい!」
と五条さんが駆け寄るけれど、すぐに霧は晴れて、すでに菅田さんの姿は消えていた。
どうやらこれが彼女の術式らしい。
五条さんは舌打ちをすると、夏油さんを振り返った。
「くそっ。どうする、傑。追うか?俺の眼なら追えなくもないけど」
「・・・いや。追わなくていい。おそらくもう彼女は・・・」
と言う夏油さんにむかって、小さな人影が突進するのが見えた。
「あ・・・」
危ないと言う前に、ドスッと鈍い音が周囲に響く。
「万城目サンを放せ・・・!」
梨理衣ちゃんが、夏油さんの懐に潜り込むようにして彼の脇腹に刃物を突き刺していた。
「・・・ッッ」
夏油さんは苦しそうに表情を歪めながらも、すぐさま梨理衣ちゃんの腕を後ろにひねり上げて動きを封じた。
「傑!」
「夏油さん!」
五条さんと私は、夏油さんの元へ駆け寄る。
見てみると、夏油さんの脇腹に短剣が深々と突き刺さっている。
それを目にして、私は動揺した。
「た、大変・・・!」
「大丈夫・・・」
と夏油さんは短剣の柄に手をかけ、ゆっくりと引き抜く。
傷口から血が流れ出る。しかし、それだけでなく。
「!」
引き抜いた短剣の切っ先から、蜘蛛の糸のようなものがくっついて引き出てくる。
そして、
「ぐっ・・・!」
再び、夏油さんの表情が歪む。
これは、ただ刺された痛みだけじゃない。
(まさか毒?)
そう考えついたその時、私はハッと息を飲んだ。
夏油さんの首のあたり。その皮膚の下を蜘蛛が蠢いているのが浮かび上がる。