第29話 まつろわぬ民
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すると五条さんは、
「ふーん」
と、さして興味無さそうに相槌を打った。
自分から質問したくせに。
退屈だからというのは本音らしい。
(あなたのことなんだよ)
そう話したら、今私の目の前にいる五条さんはどう反応するのだろうか。
これが記憶と私の願望で作られた世界なのだと打ち明けたら、今私の目の前にある景色は全て消滅したりするのだろうか。
夢から醒めるように。
そして、私は現実の世界に戻れるのだろうか。
(でも、私・・・)
まだ戻りたくない。
まだ五条さんと一緒にいたい。
だって、五条さんの心拍音も聞こえてくるから。体温が伝わるから。
もっと、感じていたい。
この心拍音も体温も、ただの私の記憶に過ぎないのだとしても。
「・・・・・・」
ゆっくりと委ねるように、頭を五条さんの胸にもたれかける。
こんなことしたら、迷惑がられるかな。
でも。
「え・・・」
と、驚き戸惑う声をあげたのは私。
五条さんが、両腕を回して私を抱き締めたからだ。
ドキンと心が弾む。が、次の瞬間。
ドスッッ
突然、外から鋭い爪のようなものが籠を突き破った。
そのまま爪は私の背中に迫って来るが、無下限のバリアで塞がれた。
「何!?」
驚いて振り返ると、籠を突き破った牙は引っ込み、空いた穴からギョロリと目玉がこちらを覗き込んでいた。
「呪霊・・・!」
と、私は息を飲む。
それに対して五条さんは呪霊に気づいていたようで冷静な様子だ。
『しゅるるるぅるるるぅ・・・』
と唸り声をあげながら、覗き込んでいた目を引っ込ませたかと思ったら、
ガキンンッ
鋭利な爪を籠の天板部分にひっかけて、そのまま引き剥がしにかかった。
『しゅるるるぅるるるぅ・・・・』
天板が剝がされて、私たちの前に呪霊の全貌が明らかになる。
呪霊は、巨大な蜘蛛だ。
いや、八本の足に大きく膨らんだ腹部を持つ人型の呪霊と呼ぶべきだろうか。
しかも、人の形をした上半身部分は一人ではなく複数人が合体してひしめき合っている。
「なるほど。だから『土蜘蛛』ってワケね」
不敵に笑いながら立ち上がり、五条さんは言った。
そして私の腕を引いて、
「オラ、さっさと立てよ」
と、立ちあがらせる。
すると、『土蜘蛛』の人型の部分の顔がギョロリと一斉にこちらを向いた。
『わ、わレわレハ、『土蜘蛛』にアラズ・・・ワれワれハ、ホコリタカき、『まつろわぬ民』・・・ワれワれヲ侮辱スルコトはユルサヌ・・・」
そのおぞましさに私は硬直するけれど、
「あのまま籠に閉じ込めときゃよかったのにさぁ。それをわざわざ出すなんて頭悪ぃんじゃねーの?」
と、五条さんは伸びをしながら言った。
すると『土蜘蛛』は、
『しゅるるるうるる!!』
それぞれの口から一斉に糸を吐き出した。
糸は無下限のバリアに弾き飛ばされ、周囲がベトベトになる。
糸が効かないことに『土蜘蛛』は一瞬動揺したものの、すぐに切り替えて、その長い八本足をカサカサと動かしてこちらに迫ってきた。
「来る・・・!」
と私は身構えるけれど、五条さんは暢気な様子で、
「あ、そうだ。アレ試してみよっかな」
と、ふと思い出したかのように零した。
「あれって・・・?」
と私が不思議に思うのと同時に、五条さんは右手を銃の様に構えてその指先を『土蜘蛛』に向けた。そして、
「術式反転『赫』」
と、諳んじる。
次に来るであろう衝撃に、私と『土蜘蛛』は身を竦めて構える、が。
シーーーン・・・
何も起こらず、私と『土蜘蛛』はポカンとなる。
すぐに『土蜘蛛』はハッと我に返って、猛然と襲い掛かってくる。
「わははは」
と笑いながら、私を小脇に抱えてピョンピョンと飛んで避ける。
「失敗しちゃった☆」
「失敗って・・・」
五条さんもそんな時代があったのね。
「ふーん」
と、さして興味無さそうに相槌を打った。
自分から質問したくせに。
退屈だからというのは本音らしい。
(あなたのことなんだよ)
そう話したら、今私の目の前にいる五条さんはどう反応するのだろうか。
これが記憶と私の願望で作られた世界なのだと打ち明けたら、今私の目の前にある景色は全て消滅したりするのだろうか。
夢から醒めるように。
そして、私は現実の世界に戻れるのだろうか。
(でも、私・・・)
まだ戻りたくない。
まだ五条さんと一緒にいたい。
だって、五条さんの心拍音も聞こえてくるから。体温が伝わるから。
もっと、感じていたい。
この心拍音も体温も、ただの私の記憶に過ぎないのだとしても。
「・・・・・・」
ゆっくりと委ねるように、頭を五条さんの胸にもたれかける。
こんなことしたら、迷惑がられるかな。
でも。
「え・・・」
と、驚き戸惑う声をあげたのは私。
五条さんが、両腕を回して私を抱き締めたからだ。
ドキンと心が弾む。が、次の瞬間。
ドスッッ
突然、外から鋭い爪のようなものが籠を突き破った。
そのまま爪は私の背中に迫って来るが、無下限のバリアで塞がれた。
「何!?」
驚いて振り返ると、籠を突き破った牙は引っ込み、空いた穴からギョロリと目玉がこちらを覗き込んでいた。
「呪霊・・・!」
と、私は息を飲む。
それに対して五条さんは呪霊に気づいていたようで冷静な様子だ。
『しゅるるるぅるるるぅ・・・』
と唸り声をあげながら、覗き込んでいた目を引っ込ませたかと思ったら、
ガキンンッ
鋭利な爪を籠の天板部分にひっかけて、そのまま引き剥がしにかかった。
『しゅるるるぅるるるぅ・・・・』
天板が剝がされて、私たちの前に呪霊の全貌が明らかになる。
呪霊は、巨大な蜘蛛だ。
いや、八本の足に大きく膨らんだ腹部を持つ人型の呪霊と呼ぶべきだろうか。
しかも、人の形をした上半身部分は一人ではなく複数人が合体してひしめき合っている。
「なるほど。だから『土蜘蛛』ってワケね」
不敵に笑いながら立ち上がり、五条さんは言った。
そして私の腕を引いて、
「オラ、さっさと立てよ」
と、立ちあがらせる。
すると、『土蜘蛛』の人型の部分の顔がギョロリと一斉にこちらを向いた。
『わ、わレわレハ、『土蜘蛛』にアラズ・・・ワれワれハ、ホコリタカき、『まつろわぬ民』・・・ワれワれヲ侮辱スルコトはユルサヌ・・・」
そのおぞましさに私は硬直するけれど、
「あのまま籠に閉じ込めときゃよかったのにさぁ。それをわざわざ出すなんて頭悪ぃんじゃねーの?」
と、五条さんは伸びをしながら言った。
すると『土蜘蛛』は、
『しゅるるるうるる!!』
それぞれの口から一斉に糸を吐き出した。
糸は無下限のバリアに弾き飛ばされ、周囲がベトベトになる。
糸が効かないことに『土蜘蛛』は一瞬動揺したものの、すぐに切り替えて、その長い八本足をカサカサと動かしてこちらに迫ってきた。
「来る・・・!」
と私は身構えるけれど、五条さんは暢気な様子で、
「あ、そうだ。アレ試してみよっかな」
と、ふと思い出したかのように零した。
「あれって・・・?」
と私が不思議に思うのと同時に、五条さんは右手を銃の様に構えてその指先を『土蜘蛛』に向けた。そして、
「術式反転『赫』」
と、諳んじる。
次に来るであろう衝撃に、私と『土蜘蛛』は身を竦めて構える、が。
シーーーン・・・
何も起こらず、私と『土蜘蛛』はポカンとなる。
すぐに『土蜘蛛』はハッと我に返って、猛然と襲い掛かってくる。
「わははは」
と笑いながら、私を小脇に抱えてピョンピョンと飛んで避ける。
「失敗しちゃった☆」
「失敗って・・・」
五条さんもそんな時代があったのね。