第28話 問題児二人
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五条さんの部屋は2階の廊下の一番突き当たりにあった。
部屋に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、ベッドの側の壁に貼られた、水着姿のグラビアアイドルのポスターだった。
キュッとウエストがくびれたスレンダーな身体に、不釣り合いな豊満な胸。
肉厚な唇に、潤んだ黒目がちな瞳。
「・・・誰コレ」
思わず呟くと、五条さんが恥いるでもなく堂々と答えた。
「井上◯香だよー。知らねぇの、ワカパイ。いい女だよなー」
「・・・・・・(ムーッ)」
「んだよ」
「別に・・・」
五条さんだって男の子で、アイドルとかそういうものに夢中になった時期があったっておかしくない。
(だけど、面白くない!)
私がひとりむくれているのを気に留めず、五条さんは小さな備え付けのキッチンで何やらゴソゴソと作業を始めた。
それからまもなく、
「ほら、座ってコレ飲めよ」
と、マグカップを差し出してきた。
「・・・・・・」
受け取りながら、そのマグカップの中身に目を遣る。
マグカップには、カラースプレーチョコやアラザンがトッピングされた生クリームが渦を巻いてこんもりと盛られている。
マグの表面は温かく、ほのかにココアの甘い香りがする。
「五条悟特製生クリームましましココアだ」
もうひとつ同じ中身のマグカップを手にしながら、五条さんが得意げに言った。
「ありがたく飲めよ」
「・・・うわぁ・・・」
「んだよ。何か不満かよ」
「いや、これもうココアじゃなくて、ほぼ生クリームじゃない」
「文句あんなら返せよ」
「や、いただきます!」
と、私は床に座りマグカップに唇をつけて一口飲んだ。
「・・・おいしい」
ポツリと呟くと、五条さんは得意げに笑って私の向かいに座った。
「だろー?この生クリーム7:ココア3の黄金比率が一番美味いんだよ」
と一口飲んで、満足げに唸る。
「ん-、美味い!」
口元にクリームがついて、まるでヒゲみたいになっている。
それを見て、私はクスクスと笑った。
「・・・この頃から甘党なんだ」
思わず言葉にして零すと、五条さんは不思議そうな顔をした。
「この頃?」
「ん?や、何でもない。それより口にクリームついてるよ」
「んー?」
私に指摘されて、五条さんは手の甲で口元を拭った。
そして、
「そういや、オマエん家の水羊羹も美味かったよなー」
と、ふと思い出したように言った。
その言葉に、私はハッとする。
「・・・水羊羹も美味しいけど、もっと美味しいものがあるよ」
試すように私がそう言うと、五条さんはすぐに食いついた。
「もっと美味いもの?」
「うん。『あけづる』っていうの」
私は言った。
「白い皮に餡子を包んだシンプルなお饅頭で、『つるぎ庵』の名物なの」
すると五条さんは、
「ふーん。饅頭ねぇ。なんか名物にしては地味だな」
と言った。
「・・・・・・」
五条さんが『あけづる』を知らない。
当然だけど、胸がキリっと痛んだ。
「オマエさぁ、何で呪術師になろうって思ったの」
唐突に訊かれて、私は目を瞬かせた。
「え・・・」
「実家を継いで和菓子職人になろうって考えなかったの」
「・・・・・・」
「何かオマエ、無理してる気がする」
「・・・・・・」
「呪術師なんて目指さず、実家継ぐ方が良かったんじゃねぇの」
核心を突かれたようで、私は言葉を失った。
呪術を学ぼうと思ったのは、自分の意志だ。
だって、そうしないと故郷も大切な人も護れないから。
だから、これまでずっと必死に走り続けてきた。
五条さんや悠仁君や伏黒君や野薔薇ちゃん達に、追いつけなくても置いて行かれないように。
そして今も、お父さん達を護るために足掻いている。
「・・・・・・」
でも、本当は少し疲れてしまったのかもしれない。
「・・・強き者が弱きを助け、強きを挫く」
それでも、諦めるわけにはいかない。
だって、貴方が諦めなかったから。
「って言うでしょ?だからだよ。だって、そういうものでしょ?」
と言った私の言葉に、今度は五条さんがサングラスの奥の目を瞬かせた。
しかし、すぐに「ふーん」という風に笑みを浮かべて、
「そんないきがったこと言っといて、明日俺らの足引っ張んなよ。ジャマになるようなら放っていくからな」
と言った。
部屋に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、ベッドの側の壁に貼られた、水着姿のグラビアアイドルのポスターだった。
キュッとウエストがくびれたスレンダーな身体に、不釣り合いな豊満な胸。
肉厚な唇に、潤んだ黒目がちな瞳。
「・・・誰コレ」
思わず呟くと、五条さんが恥いるでもなく堂々と答えた。
「井上◯香だよー。知らねぇの、ワカパイ。いい女だよなー」
「・・・・・・(ムーッ)」
「んだよ」
「別に・・・」
五条さんだって男の子で、アイドルとかそういうものに夢中になった時期があったっておかしくない。
(だけど、面白くない!)
私がひとりむくれているのを気に留めず、五条さんは小さな備え付けのキッチンで何やらゴソゴソと作業を始めた。
それからまもなく、
「ほら、座ってコレ飲めよ」
と、マグカップを差し出してきた。
「・・・・・・」
受け取りながら、そのマグカップの中身に目を遣る。
マグカップには、カラースプレーチョコやアラザンがトッピングされた生クリームが渦を巻いてこんもりと盛られている。
マグの表面は温かく、ほのかにココアの甘い香りがする。
「五条悟特製生クリームましましココアだ」
もうひとつ同じ中身のマグカップを手にしながら、五条さんが得意げに言った。
「ありがたく飲めよ」
「・・・うわぁ・・・」
「んだよ。何か不満かよ」
「いや、これもうココアじゃなくて、ほぼ生クリームじゃない」
「文句あんなら返せよ」
「や、いただきます!」
と、私は床に座りマグカップに唇をつけて一口飲んだ。
「・・・おいしい」
ポツリと呟くと、五条さんは得意げに笑って私の向かいに座った。
「だろー?この生クリーム7:ココア3の黄金比率が一番美味いんだよ」
と一口飲んで、満足げに唸る。
「ん-、美味い!」
口元にクリームがついて、まるでヒゲみたいになっている。
それを見て、私はクスクスと笑った。
「・・・この頃から甘党なんだ」
思わず言葉にして零すと、五条さんは不思議そうな顔をした。
「この頃?」
「ん?や、何でもない。それより口にクリームついてるよ」
「んー?」
私に指摘されて、五条さんは手の甲で口元を拭った。
そして、
「そういや、オマエん家の水羊羹も美味かったよなー」
と、ふと思い出したように言った。
その言葉に、私はハッとする。
「・・・水羊羹も美味しいけど、もっと美味しいものがあるよ」
試すように私がそう言うと、五条さんはすぐに食いついた。
「もっと美味いもの?」
「うん。『あけづる』っていうの」
私は言った。
「白い皮に餡子を包んだシンプルなお饅頭で、『つるぎ庵』の名物なの」
すると五条さんは、
「ふーん。饅頭ねぇ。なんか名物にしては地味だな」
と言った。
「・・・・・・」
五条さんが『あけづる』を知らない。
当然だけど、胸がキリっと痛んだ。
「オマエさぁ、何で呪術師になろうって思ったの」
唐突に訊かれて、私は目を瞬かせた。
「え・・・」
「実家を継いで和菓子職人になろうって考えなかったの」
「・・・・・・」
「何かオマエ、無理してる気がする」
「・・・・・・」
「呪術師なんて目指さず、実家継ぐ方が良かったんじゃねぇの」
核心を突かれたようで、私は言葉を失った。
呪術を学ぼうと思ったのは、自分の意志だ。
だって、そうしないと故郷も大切な人も護れないから。
だから、これまでずっと必死に走り続けてきた。
五条さんや悠仁君や伏黒君や野薔薇ちゃん達に、追いつけなくても置いて行かれないように。
そして今も、お父さん達を護るために足掻いている。
「・・・・・・」
でも、本当は少し疲れてしまったのかもしれない。
「・・・強き者が弱きを助け、強きを挫く」
それでも、諦めるわけにはいかない。
だって、貴方が諦めなかったから。
「って言うでしょ?だからだよ。だって、そういうものでしょ?」
と言った私の言葉に、今度は五条さんがサングラスの奥の目を瞬かせた。
しかし、すぐに「ふーん」という風に笑みを浮かべて、
「そんないきがったこと言っといて、明日俺らの足引っ張んなよ。ジャマになるようなら放っていくからな」
と言った。