第28話 問題児二人
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任務という言葉に、緩み切っていた三人がピクっと反応する。
「任務は、『土蜘蛛』の隠れアジトへの潜伏と調査」
夜蛾さんが言った。
「あくまでも目的は調査で討伐ではない。気をつけろ」
「土蜘蛛ぉ~?」
夜蛾さんの言葉に、五条さんの言葉が重なった。
「それってどういう呪霊なの?」
「呪霊じゃない。古の大和王朝に従わなかった土着勢力の総称だよ」
五条さんの疑問に答えたのは、夜蛾さんではなく夏油さんだった。
「大和王朝に征伐された恨みと呪いを子孫が受け継いで、呪詛師の一団となった。近代においても、時の政府に対し度々呪術テロを起こしてきたと聞いたことがある。しかし、政府からの指令を受けた呪術高専が徹底的に連中のアジトを叩いて以来、その鳴りを潜めていたが・・・」
「そうだ。その『土蜘蛛』が再び近々呪術テロを画索しているという情報が入った。その『土蜘蛛』の隠れアジトに潜入し、呪術テロ計画の情報を入手する。それが任務だ」
にわかに緊張感が走る。
私に至っては、物騒な言葉の響きに胸がドキドキしている。
「この任務には、悟と傑。そして・・・」
夜蛾さんは言った。
「和紗に行ってもらう」
その言葉に、
「え・・・」
「コイツもぉ?」
私だけでなく、五条さんも戸惑いの声を上げる。
いや、むしろ迷惑そうだ。
「コイツ連れてくなら硝子の方がいいんじゃない?」
「硝子を長期間高専から外へ出しておくわけにはいかない」
「だったら、俺と傑のふたりでいいじゃん」
「そういう訳にはいかん。これは、和紗の力を試す実地試験でもあるのだ」
「ん?ってことは」
「当然、私も一緒に行く」
「げ・・・」
と、五条さんはますます不服そうな顔をした。
それを見て、夜蛾さんは眉を顰めた。
「何だ、その顔は?」
「いや・・・」
「また勝手に観光されても困るしな」
すると五条さんは諦めついたのか何も言わなくなった。
(そっか。夜蛾さんが一緒なら安心だな、色んな意味で)
と、私は少しホッとした。
「出発は明日の明朝。気を引き締めろ。いいな!」
夜蛾さんの言葉を聞いて、五条さんと夏油さんは不敵な笑みを浮かべている。
一方で私は、
(任務・・・大丈夫かな・・・)
内心、まだドキドキしていた。
その日の授業が終わり、私は購買部に向かい小麦粉を一袋買った。
そして、学生寮の自分の部屋へ戻ると、急いで水と粉を練って蒸しただけの簡単な饅頭を幾つか作った。
『明埜乃舞降鶴乃擬砡 』用のためだ。
(この夢の世界の私が、どんな能力を持っているのかわからないけれど、念のため。みんなの足手まといになるわけにはいかない)
この世界でも、『反転術式』は使えるのかな。
いっそ、術式を持っていたらいいのに。
「・・・・・・」
そこで、ふと思い出した。
お母さんから術式を返してもらうために、『香志和彌 神社』へ行くはずだったのに。
こんなところで足止めを食っている時間なんてないのに。
現実の世界では、どれくらいの時間が経っているのだろうか。
『死滅回游』は、もう始まってしまったのだろうか。
(でも、どうやってここから抜け出せばいいのかわからない・・・)
いずれ眠りから目を覚ますように、この夢も醒めるのだろうか。
早く、その時が来ればいいのに。
「・・・・・・」
ふと窓に目を遣ると、外はすっかり暗くなっていた。
窓ガラスに疲れ切った私の顔が映っている。
カーテンを閉めようと、窓に近づいた時だった。
「!」
窓に自分ではない顔がぼんやりと映し出されていることに気づいた。
それはジワジワと鮮明に映し出されてゆき、やがてその顔がはっきりとわかった。
「・・・奇子・・・!」
驚きと忌々しさを込めて、その名を呼ぶ。
そう、窓ガラスには奇子の顔が映し出されていた。
「任務は、『土蜘蛛』の隠れアジトへの潜伏と調査」
夜蛾さんが言った。
「あくまでも目的は調査で討伐ではない。気をつけろ」
「土蜘蛛ぉ~?」
夜蛾さんの言葉に、五条さんの言葉が重なった。
「それってどういう呪霊なの?」
「呪霊じゃない。古の大和王朝に従わなかった土着勢力の総称だよ」
五条さんの疑問に答えたのは、夜蛾さんではなく夏油さんだった。
「大和王朝に征伐された恨みと呪いを子孫が受け継いで、呪詛師の一団となった。近代においても、時の政府に対し度々呪術テロを起こしてきたと聞いたことがある。しかし、政府からの指令を受けた呪術高専が徹底的に連中のアジトを叩いて以来、その鳴りを潜めていたが・・・」
「そうだ。その『土蜘蛛』が再び近々呪術テロを画索しているという情報が入った。その『土蜘蛛』の隠れアジトに潜入し、呪術テロ計画の情報を入手する。それが任務だ」
にわかに緊張感が走る。
私に至っては、物騒な言葉の響きに胸がドキドキしている。
「この任務には、悟と傑。そして・・・」
夜蛾さんは言った。
「和紗に行ってもらう」
その言葉に、
「え・・・」
「コイツもぉ?」
私だけでなく、五条さんも戸惑いの声を上げる。
いや、むしろ迷惑そうだ。
「コイツ連れてくなら硝子の方がいいんじゃない?」
「硝子を長期間高専から外へ出しておくわけにはいかない」
「だったら、俺と傑のふたりでいいじゃん」
「そういう訳にはいかん。これは、和紗の力を試す実地試験でもあるのだ」
「ん?ってことは」
「当然、私も一緒に行く」
「げ・・・」
と、五条さんはますます不服そうな顔をした。
それを見て、夜蛾さんは眉を顰めた。
「何だ、その顔は?」
「いや・・・」
「また勝手に観光されても困るしな」
すると五条さんは諦めついたのか何も言わなくなった。
(そっか。夜蛾さんが一緒なら安心だな、色んな意味で)
と、私は少しホッとした。
「出発は明日の明朝。気を引き締めろ。いいな!」
夜蛾さんの言葉を聞いて、五条さんと夏油さんは不敵な笑みを浮かべている。
一方で私は、
(任務・・・大丈夫かな・・・)
内心、まだドキドキしていた。
その日の授業が終わり、私は購買部に向かい小麦粉を一袋買った。
そして、学生寮の自分の部屋へ戻ると、急いで水と粉を練って蒸しただけの簡単な饅頭を幾つか作った。
『
(この夢の世界の私が、どんな能力を持っているのかわからないけれど、念のため。みんなの足手まといになるわけにはいかない)
この世界でも、『反転術式』は使えるのかな。
いっそ、術式を持っていたらいいのに。
「・・・・・・」
そこで、ふと思い出した。
お母さんから術式を返してもらうために、『
こんなところで足止めを食っている時間なんてないのに。
現実の世界では、どれくらいの時間が経っているのだろうか。
『死滅回游』は、もう始まってしまったのだろうか。
(でも、どうやってここから抜け出せばいいのかわからない・・・)
いずれ眠りから目を覚ますように、この夢も醒めるのだろうか。
早く、その時が来ればいいのに。
「・・・・・・」
ふと窓に目を遣ると、外はすっかり暗くなっていた。
窓ガラスに疲れ切った私の顔が映っている。
カーテンを閉めようと、窓に近づいた時だった。
「!」
窓に自分ではない顔がぼんやりと映し出されていることに気づいた。
それはジワジワと鮮明に映し出されてゆき、やがてその顔がはっきりとわかった。
「・・・奇子・・・!」
驚きと忌々しさを込めて、その名を呼ぶ。
そう、窓ガラスには奇子の顔が映し出されていた。