第28話 問題児二人
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12年前の高専の風景は、現在と全く変わっていなかった。
居並ぶ神社仏閣。石畳の道。石造りの灯篭。狛犬の石像。空に向かって真っすぐ伸びる杉の木。
この空間だけが時間を止めているかのようだった。
「転入初日をバックレて旅行なんて、アンタもやるね」
一緒に歩いていると、そう硝子さんが言った。
私は慌てて弁明する。
「ち、違うの!あれは五条さんに半ば無理矢理に連れまわされて・・・!夏油さんも止めるどころか一緒にその気になっちゃって・・・!」
「あー。あのクズ共のノリに振り回されない方がいいよ」
「クズ共って・・・」
「ホント、ろくでもないんだから。それで苦労してんだから、私。でも和紗が来てくれたから、これで2対2で心強いな」
「・・・二年生って、4人だけなの?」
「そっ。気づいてると思うけど呪術師ってマイノリティだからね。他の学年もこんなもんだよ」
そう話しながら硝子さんはポケットの中を探り始めた。
そしてタバコとライターを取り出し、おもむろに一本を口にくわえ火をつけようとする。
「ちょっ!?」
私はギョッとして、慌ててタバコを硝子さんの口から奪い取った。
硝子さんは少し驚いたように目をパチクリさせる。
「あ、ゴメン。煙いのキライだった?」
「いや、キライとかじゃなくて!まだ高校生でしょ、今の硝子さんは!?」
「今の?」
「あ・・・」
しまった。変な言い方をしてしまった。
だけど硝子さんはたいして気に留める様子もなく、
「ハイハイ。高校生はタバコはダメってんでしょ。わかったよ、ママ」
と、少し不貞腐れながらもタバコとライターをポケットにしまい込んだ。
私はホッとしながらも、
「・・・ママ?」
さっき何気なく言われた言葉が引っかかった。
すると硝子さんはイタズラな笑みを浮かべる。
「和紗、口うるさいんだもん。母親みたいだなって」
「そ、それは硝子さんが・・・」
「和紗こそ、なんで「さん」づけなの?タメでしょ?呼び捨てでいいよ」
「いやぁ、そんなわけには・・・」
この夢の中では、確かに私と硝子さんは同い年だ。
だけど、まだ幼さを残した姿をしていても、私にとっては硝子さんは硝子さんだ。呼び捨てするのは気が引ける。
「じゃあ、硝子ちゃんって呼んでもいい?」
「ヤダ。気持ち悪い。却下」
「えー・・・」
そんな会話をしながらも、すっかり12年前の硝子さんとも打ち解けた。
呪術高専の敷地内はとても広く歩き疲れたので、購買部(といっても普通の学校のそれではなく、まるでお茶屋さんのような佇まいをしている)で休憩をすることにした。
「硝子ー?」
購買部前の腰掛に座ってアイスを食べていたら、二人組の女子生徒に声を掛けられた。
「五条と夏油のバカ共、ちゃんと帰ってきたの?転入生迎えに行ったきり帰ってないってきいたけど」
と話す女子生徒は、巫女姿で髪をふたつに結わえ前髪を短く切りそろえている。
彼女が誰なのかすぐにわかった。
「歌姫さん・・・」
まだ顔に傷がない。
やっぱりまだどこか幼くて、だけど生真面目そうな印象は現在と全く変わっていない。
思わずその名前を呟くと、硝子さんと歌姫さんが不思議そうに私の顔を見た。
「なんで歌姫先輩の名前知ってんの?」
と硝子さんに訊かれて、私はハッとする。
「あ、あの、五条さんと夏油さんから話をきいて、それで・・・」
「あの二人が私の話を?」
すると、歌姫さんは訝し気に眉を顰めた。
「どうせろくなこと話してないんでしょ。弱いとかなんとか陰口言って!」
「え、いや、えっと」
なぜか私が責められて、しどろもどろしていると、
「それは自虐が過ぎるよ。彼女が困っているじゃないか」
と、歌姫さんの隣にいた女子生徒が諫めに入る。
「君が転入生だね。ということは、あの問題児二人もお戻りって訳か」
黒のワイシャツにネクタイ、ズボン姿。
前髪をスッキリと上げた長いポニーテール。
黒目がちな切れ長の目。
この人のことは、知らない。
けれど、この冷静な話し方、どこかで聞いたことがあるような・・・。
そんなことを考えながら、じっと彼女の顔を見つめていると、
「冥さんも昨日まで任務だったんでしょ。無事で何よりで」
と硝子さんが言ったので、私は驚いて声を上げた。
「冥さん!?あなたが!?」
すると、冥さんはフッとあの妖艶な微笑みを浮かべた。
「私の話もあの二人から聞いていたのかな。どんな話だったのか是非聞いてみたいね」
居並ぶ神社仏閣。石畳の道。石造りの灯篭。狛犬の石像。空に向かって真っすぐ伸びる杉の木。
この空間だけが時間を止めているかのようだった。
「転入初日をバックレて旅行なんて、アンタもやるね」
一緒に歩いていると、そう硝子さんが言った。
私は慌てて弁明する。
「ち、違うの!あれは五条さんに半ば無理矢理に連れまわされて・・・!夏油さんも止めるどころか一緒にその気になっちゃって・・・!」
「あー。あのクズ共のノリに振り回されない方がいいよ」
「クズ共って・・・」
「ホント、ろくでもないんだから。それで苦労してんだから、私。でも和紗が来てくれたから、これで2対2で心強いな」
「・・・二年生って、4人だけなの?」
「そっ。気づいてると思うけど呪術師ってマイノリティだからね。他の学年もこんなもんだよ」
そう話しながら硝子さんはポケットの中を探り始めた。
そしてタバコとライターを取り出し、おもむろに一本を口にくわえ火をつけようとする。
「ちょっ!?」
私はギョッとして、慌ててタバコを硝子さんの口から奪い取った。
硝子さんは少し驚いたように目をパチクリさせる。
「あ、ゴメン。煙いのキライだった?」
「いや、キライとかじゃなくて!まだ高校生でしょ、今の硝子さんは!?」
「今の?」
「あ・・・」
しまった。変な言い方をしてしまった。
だけど硝子さんはたいして気に留める様子もなく、
「ハイハイ。高校生はタバコはダメってんでしょ。わかったよ、ママ」
と、少し不貞腐れながらもタバコとライターをポケットにしまい込んだ。
私はホッとしながらも、
「・・・ママ?」
さっき何気なく言われた言葉が引っかかった。
すると硝子さんはイタズラな笑みを浮かべる。
「和紗、口うるさいんだもん。母親みたいだなって」
「そ、それは硝子さんが・・・」
「和紗こそ、なんで「さん」づけなの?タメでしょ?呼び捨てでいいよ」
「いやぁ、そんなわけには・・・」
この夢の中では、確かに私と硝子さんは同い年だ。
だけど、まだ幼さを残した姿をしていても、私にとっては硝子さんは硝子さんだ。呼び捨てするのは気が引ける。
「じゃあ、硝子ちゃんって呼んでもいい?」
「ヤダ。気持ち悪い。却下」
「えー・・・」
そんな会話をしながらも、すっかり12年前の硝子さんとも打ち解けた。
呪術高専の敷地内はとても広く歩き疲れたので、購買部(といっても普通の学校のそれではなく、まるでお茶屋さんのような佇まいをしている)で休憩をすることにした。
「硝子ー?」
購買部前の腰掛に座ってアイスを食べていたら、二人組の女子生徒に声を掛けられた。
「五条と夏油のバカ共、ちゃんと帰ってきたの?転入生迎えに行ったきり帰ってないってきいたけど」
と話す女子生徒は、巫女姿で髪をふたつに結わえ前髪を短く切りそろえている。
彼女が誰なのかすぐにわかった。
「歌姫さん・・・」
まだ顔に傷がない。
やっぱりまだどこか幼くて、だけど生真面目そうな印象は現在と全く変わっていない。
思わずその名前を呟くと、硝子さんと歌姫さんが不思議そうに私の顔を見た。
「なんで歌姫先輩の名前知ってんの?」
と硝子さんに訊かれて、私はハッとする。
「あ、あの、五条さんと夏油さんから話をきいて、それで・・・」
「あの二人が私の話を?」
すると、歌姫さんは訝し気に眉を顰めた。
「どうせろくなこと話してないんでしょ。弱いとかなんとか陰口言って!」
「え、いや、えっと」
なぜか私が責められて、しどろもどろしていると、
「それは自虐が過ぎるよ。彼女が困っているじゃないか」
と、歌姫さんの隣にいた女子生徒が諫めに入る。
「君が転入生だね。ということは、あの問題児二人もお戻りって訳か」
黒のワイシャツにネクタイ、ズボン姿。
前髪をスッキリと上げた長いポニーテール。
黒目がちな切れ長の目。
この人のことは、知らない。
けれど、この冷静な話し方、どこかで聞いたことがあるような・・・。
そんなことを考えながら、じっと彼女の顔を見つめていると、
「冥さんも昨日まで任務だったんでしょ。無事で何よりで」
と硝子さんが言ったので、私は驚いて声を上げた。
「冥さん!?あなたが!?」
すると、冥さんはフッとあの妖艶な微笑みを浮かべた。
「私の話もあの二人から聞いていたのかな。どんな話だったのか是非聞いてみたいね」