第27話 新世界
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私は茫然としながら、五条さんが話すのを聞いていた。
だけど、内容のほとんどが頭に入って来ない。
そうして校舎から外へ出て、そのまま歩き続けていると、校門の前でひとつの人影が、私たちを待つように佇んでいるのが見えた。
「・・・・・・」
ゆっくりと近づいていくと、その姿がはっきりと見えてくる。
その人影は、長身の男の人だ。
その人は、私たちに背を向けるようにして立っている。
裾の辺りが提灯の様にダボッとしたズボンの学ラン姿。
長い髪を後頭部でひとつにお団子の様にひっつめてまとめている。
「傑ーっ」
と五条さんが呼びかけると、
「悟」
と、その人はこちらを振り向いて微笑んだ。
額の前に流れるひと房の長い前髪。
大きな耳たぶに光る黒い石のピアス。
涼やかな眼差しでいて柔和な顔立ち。
「・・・・・・!」
その顔を見て、私は立ち止まり凍り付いたように動けなくなる。
五条さんはそんな私の様子に気づくことなく、彼の前まで駆けていく。
「おまたーっ・・・て、ガキんちょどもは?」
「先に家に送り届けたよ」
五条さんの問いかけに答えた後、彼は私の方を振り向いた。
「鶴來和紗さん、だね」
そして、私の前まで歩み寄る。
「はじめまして。私は夏油傑。東京都立呪術高等専門学校二年生。君を迎えに来た」
「・・・・・・」
「この廃校跡には呪霊が生得領域を展開していた。肝試しに来た子どもたちと君はその中に迷い込んで閉じ込められていたんだ」
「・・・・・・」
「それで・・・」
そう、彼は夏油傑だ。
五条さんの親友。
「・・・・・・」
もはや話なんて頭に入っていない。
私はただ茫然として、夏油さんの顔を見上げていた。
すると、夏油さんは私の様子がおかしいことに気づいて、
「どうしたの?大丈夫?」
と、グッと近づいて私の顔を覗き込んだ。
その刹那、
『次こそ、君が真に目覚めた時にもう一度会おう』
羂索の面影が重なって見えた。
「・・・いやっ!」
私は身体ごと顔を逸らして拒絶する。
思わぬ反応に、夏油さんは戸惑うように目を瞬かせる。
そんな私たちの様子を見て、
「ハハッ。傑オマエ、めちゃくちゃ怖がられてるじゃん」
と、五条さんは愉快そうに笑っている。
夏油さんは戸惑いながらも、言葉を紡いだ。
「ごめん。初対面なのに馴れ馴れしかったよね」
「・・・・・・」
「でも、君のことが心配だったんだ。お互いマイノリティな呪術師同士。これからは大切な仲間になるのだからね」
「・・・・・・」
「君が無事でよかった」
同じ顔。
同じ声。
あの羂索と。
だけど、この人の言葉には、眼差しには、心を感じる。
そうなんだ。この人こそが、五条さんの親友なんだ。
「・・・・・・」
私はゆっくりと警戒を解いて、夏油さんの顔を見返した。
目が合うと、夏油さんは目をますます細めて微笑んだ。
「よろしく、和紗」
そのまましばらくの間顔を見合わせていたら、
「そんじゃっ、ガキんちょ共も助けたし転入生も見つけ出したし、さっさと東京に戻ろうぜ~」
と、五条さんがお気楽な様子で言った。
それをすかさず夏油さんが咎める。
「まだだよ、悟」
「あ?」
「和紗のご家族に彼女の無事を報告しないと」
「えー?別にそんなの電話でよくねぇ?」
「よくないよ。ちゃんと挨拶もしないと。そんな訳で、和紗」
と夏油さんが私の方を振り返る。
「今から君の家に行くけどいいかな?」
そう言われて私はハッとする。
「家・・・?」
家なんて、私にはもうない。
それに、家族も。
戸惑う私に、夏油さんは言った。
「おじいさんが心配なさってたから。早く無事を知らせてあげよう」
だけど、内容のほとんどが頭に入って来ない。
そうして校舎から外へ出て、そのまま歩き続けていると、校門の前でひとつの人影が、私たちを待つように佇んでいるのが見えた。
「・・・・・・」
ゆっくりと近づいていくと、その姿がはっきりと見えてくる。
その人影は、長身の男の人だ。
その人は、私たちに背を向けるようにして立っている。
裾の辺りが提灯の様にダボッとしたズボンの学ラン姿。
長い髪を後頭部でひとつにお団子の様にひっつめてまとめている。
「傑ーっ」
と五条さんが呼びかけると、
「悟」
と、その人はこちらを振り向いて微笑んだ。
額の前に流れるひと房の長い前髪。
大きな耳たぶに光る黒い石のピアス。
涼やかな眼差しでいて柔和な顔立ち。
「・・・・・・!」
その顔を見て、私は立ち止まり凍り付いたように動けなくなる。
五条さんはそんな私の様子に気づくことなく、彼の前まで駆けていく。
「おまたーっ・・・て、ガキんちょどもは?」
「先に家に送り届けたよ」
五条さんの問いかけに答えた後、彼は私の方を振り向いた。
「鶴來和紗さん、だね」
そして、私の前まで歩み寄る。
「はじめまして。私は夏油傑。東京都立呪術高等専門学校二年生。君を迎えに来た」
「・・・・・・」
「この廃校跡には呪霊が生得領域を展開していた。肝試しに来た子どもたちと君はその中に迷い込んで閉じ込められていたんだ」
「・・・・・・」
「それで・・・」
そう、彼は夏油傑だ。
五条さんの親友。
「・・・・・・」
もはや話なんて頭に入っていない。
私はただ茫然として、夏油さんの顔を見上げていた。
すると、夏油さんは私の様子がおかしいことに気づいて、
「どうしたの?大丈夫?」
と、グッと近づいて私の顔を覗き込んだ。
その刹那、
『次こそ、君が真に目覚めた時にもう一度会おう』
羂索の面影が重なって見えた。
「・・・いやっ!」
私は身体ごと顔を逸らして拒絶する。
思わぬ反応に、夏油さんは戸惑うように目を瞬かせる。
そんな私たちの様子を見て、
「ハハッ。傑オマエ、めちゃくちゃ怖がられてるじゃん」
と、五条さんは愉快そうに笑っている。
夏油さんは戸惑いながらも、言葉を紡いだ。
「ごめん。初対面なのに馴れ馴れしかったよね」
「・・・・・・」
「でも、君のことが心配だったんだ。お互いマイノリティな呪術師同士。これからは大切な仲間になるのだからね」
「・・・・・・」
「君が無事でよかった」
同じ顔。
同じ声。
あの羂索と。
だけど、この人の言葉には、眼差しには、心を感じる。
そうなんだ。この人こそが、五条さんの親友なんだ。
「・・・・・・」
私はゆっくりと警戒を解いて、夏油さんの顔を見返した。
目が合うと、夏油さんは目をますます細めて微笑んだ。
「よろしく、和紗」
そのまましばらくの間顔を見合わせていたら、
「そんじゃっ、ガキんちょ共も助けたし転入生も見つけ出したし、さっさと東京に戻ろうぜ~」
と、五条さんがお気楽な様子で言った。
それをすかさず夏油さんが咎める。
「まだだよ、悟」
「あ?」
「和紗のご家族に彼女の無事を報告しないと」
「えー?別にそんなの電話でよくねぇ?」
「よくないよ。ちゃんと挨拶もしないと。そんな訳で、和紗」
と夏油さんが私の方を振り返る。
「今から君の家に行くけどいいかな?」
そう言われて私はハッとする。
「家・・・?」
家なんて、私にはもうない。
それに、家族も。
戸惑う私に、夏油さんは言った。
「おじいさんが心配なさってたから。早く無事を知らせてあげよう」