第27話 新世界
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『母親から返してもらうんだ、君の『可能性』を。父親と妹を助けたいのなら、それしか方法はない』
『可能性』とは、きっと術式のことだ。
だけど、返してもらうなんて一体どうすれば?
『『かしわみ』は『かわしみ』、つまり『かわし身』の言葉が言い変わって伝わった名前。災いをかわす効力をもたらすことから名づけられた場所だ』
その時、かつて五条さんが話していたことを思い出した。
私はハッと息を呑む。
『和紗のお母さんは、『香志和彌 神社』で百度参りの儀式を行い、『縛り』を結ぶことで、和紗を昏睡状態から救ったんだ』
・・・その時。
確かに、何も見えなかった暗闇に微かな光が差した気がした。
「香志和彌神社・・・」
私の呟きに、新田さんが反応する。
「え?どうしたッスか?」
「・・・新田さん」
私は言った。
「私、金沢じゃなくて京都に向かいます」
「えっ!?どうしてっスか?」
「えっと、その・・・京都には親戚がいるから。親戚のところに身を寄せようと思って」
嘘ではないけれど(実際、母方の祖父母達がいるし)本当の目的はそうじゃない。
香志和彌神社。
まだ方法はわからないままだけれど、私はそこへ向かわなければならない。
「京都へ行きます」
・・・それから、大宮へ向かっていたのを方向転換して、新横浜へ向かいそこから新幹線に乗って京都へ行くことにした。
私には、まだ出来ることがある。
いや。
やらなければならないことがある。
私の術式。
それはおそらく、お父さんと同じ呪力を物質化する『造砡包呪呪術』だ。
再び五条さんの言葉を思い出す。
『退魔の力は、呪霊にぶつければ強烈な攻撃となる。でも、それを人間が取り込むと・・・あらゆる呪いによる攻撃を撥ね退け無効にする、いわば無敵状態になることができるんだ』
その術式があれば、襲いかかってくる相手を殺さなくても、お父さんたちを守れるかもしれない。
例え違ったとしても、私が『死滅回游』に参加するには、術式は必須だ。
(・・・五条さん)
五条さんが今までくれた言葉が、私を導いてくれる。
離れていても、これまでより一番強くその存在を感じる。
(私も、自分がいる場所で今、自分が出来ることをするから)
それがどんなに小さなことでも。
取るに足りない、ささやかなことだとしても。
このまま何もせず、諦めたりしない。
だから、待っていて。
いつか、必ず助けるから。
それが、どれだけ長い道のりになったとしても。
新横浜に到着して、新田さんとはそこで別れた。
駅構内は東京から逃れてきた、あるいは、これから関東から離れようとする多くの人でごった返していた。しかし混乱している様子はなく、落ち着いた様子だ。
それでも構内にある大型ビジョンに荒廃した東京の様子が映し出されると、人々は足を止めてそれを不安な眼差しでそれを見つめていた。
(乗車券を・・・。座席、空きはあるのかな・・・)
人々の間を縫うように足早で駆けていく。
「きゃあっ!」
突如、後ろから女性の悲鳴が響いて聞こえてきた。
「・・・?」
足を止めて振り返る。
するとそこには、上半身を縦に真っ二つに裂かれ、血を吹き出しながら倒れ込む男の人の姿があった。
一瞬の沈黙の後、周辺に連鎖するように悲鳴が響き渡る。
「うわあっ!」
「いやああっ!」
そして、蜘蛛の子を散らすように人々はその場から逃げ出す。
だけど、私は逃げずにその場に佇み一点を見据えていた。
「どこ行くつもりなの、和紗」
血を吹き出し倒れた遺体の向う側。
そこには、奇子がいた。
『可能性』とは、きっと術式のことだ。
だけど、返してもらうなんて一体どうすれば?
『『かしわみ』は『かわしみ』、つまり『かわし身』の言葉が言い変わって伝わった名前。災いをかわす効力をもたらすことから名づけられた場所だ』
その時、かつて五条さんが話していたことを思い出した。
私はハッと息を呑む。
『和紗のお母さんは、『
・・・その時。
確かに、何も見えなかった暗闇に微かな光が差した気がした。
「香志和彌神社・・・」
私の呟きに、新田さんが反応する。
「え?どうしたッスか?」
「・・・新田さん」
私は言った。
「私、金沢じゃなくて京都に向かいます」
「えっ!?どうしてっスか?」
「えっと、その・・・京都には親戚がいるから。親戚のところに身を寄せようと思って」
嘘ではないけれど(実際、母方の祖父母達がいるし)本当の目的はそうじゃない。
香志和彌神社。
まだ方法はわからないままだけれど、私はそこへ向かわなければならない。
「京都へ行きます」
・・・それから、大宮へ向かっていたのを方向転換して、新横浜へ向かいそこから新幹線に乗って京都へ行くことにした。
私には、まだ出来ることがある。
いや。
やらなければならないことがある。
私の術式。
それはおそらく、お父さんと同じ呪力を物質化する『造砡包呪呪術』だ。
再び五条さんの言葉を思い出す。
『退魔の力は、呪霊にぶつければ強烈な攻撃となる。でも、それを人間が取り込むと・・・あらゆる呪いによる攻撃を撥ね退け無効にする、いわば無敵状態になることができるんだ』
その術式があれば、襲いかかってくる相手を殺さなくても、お父さんたちを守れるかもしれない。
例え違ったとしても、私が『死滅回游』に参加するには、術式は必須だ。
(・・・五条さん)
五条さんが今までくれた言葉が、私を導いてくれる。
離れていても、これまでより一番強くその存在を感じる。
(私も、自分がいる場所で今、自分が出来ることをするから)
それがどんなに小さなことでも。
取るに足りない、ささやかなことだとしても。
このまま何もせず、諦めたりしない。
だから、待っていて。
いつか、必ず助けるから。
それが、どれだけ長い道のりになったとしても。
新横浜に到着して、新田さんとはそこで別れた。
駅構内は東京から逃れてきた、あるいは、これから関東から離れようとする多くの人でごった返していた。しかし混乱している様子はなく、落ち着いた様子だ。
それでも構内にある大型ビジョンに荒廃した東京の様子が映し出されると、人々は足を止めてそれを不安な眼差しでそれを見つめていた。
(乗車券を・・・。座席、空きはあるのかな・・・)
人々の間を縫うように足早で駆けていく。
「きゃあっ!」
突如、後ろから女性の悲鳴が響いて聞こえてきた。
「・・・?」
足を止めて振り返る。
するとそこには、上半身を縦に真っ二つに裂かれ、血を吹き出しながら倒れ込む男の人の姿があった。
一瞬の沈黙の後、周辺に連鎖するように悲鳴が響き渡る。
「うわあっ!」
「いやああっ!」
そして、蜘蛛の子を散らすように人々はその場から逃げ出す。
だけど、私は逃げずにその場に佇み一点を見据えていた。
「どこ行くつもりなの、和紗」
血を吹き出し倒れた遺体の向う側。
そこには、奇子がいた。