第27話 新世界
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「・・・・・・」
私はよろめきながらも身体を起こし、立ち去ろうとする夏油を目で追った。
「・・・貴方は、夏油傑じゃない」
私がそう言うと、夏油はピタリと立ち止まった。
「貴方が、五条さんの親友のはずがない。貴方は・・・一体何者なの」
「羂索」
夏油、いや、『羂索』は言った。
「呼び名なんて最早どうでもいいんだけどね。夏油と呼ぶのが気に食わないなら、そう呼ぶと言い」
そう言いながら、割れた窓を塞いでいた呪霊を元の姿に戻した。
そこから更にグニャリと形を変えて、呪霊は次に鳥の形になった。そして、
「それじゃあ、和紗」
と鳥の形の呪霊に跨りながら、最後にもう一度私の方を振り返って、
「次こそ、君が真に目覚めた時にもう一度会おう」
と言った後、窓から外へ飛び出して行った。
「・・・・・・」
立ち上がらないと。
そして、行かないと。
だけど、身体に力が入らず立ち上がることが出来ない。
張り詰めていたのが一気に切れてしまったことと、絶望に押しつぶされて、立ち上がることが出来ない。
そんな時だった。
「鶴來さん!」
玄関からドンドンと乱暴にドアがノックする音と共に、新田さんの声が聞こえてきた。
それから間もなくドアを開く気配がして、新田さんが部屋に駆け込んできた。
「どうしたんですか!?大丈夫っスか?」
そして、床に座り込んで動けない私に駆け寄った。
「道中の飲み物でも買おうと自販機探して戻って来たら、マンションの窓から呪霊が飛び出したのが見えて・・・。ソイツに何かされたッスか?」
「・・・大丈夫」
心配そうに私の顔を覗き込む新田さんをなだめるように私は言った。
「私は大丈夫。だけど・・・」
そして、『死滅回游』のことを話した。
ただし、私のお父さんと紗樹ちゃんが巻き込まれていることは伏せて。
「『死滅回游』?」
スピーカーにした電話の向こうから、そう訝しそうに言った硝子さんの声が響いた。
私から『死滅回游』のことを聞いた後、新田さんが硝子さんに電話したのだ。
「そういうことなら、そのうち高専の方へ向こうから具体的な布告があるだろうな」
「硝子さん、どうすれば・・・」
と言う私に対して、
「どうするもこうも、アンタは何もしなくてもいいよ、和紗」
と硝子さんは言った。
「アンタは故郷に帰るんだ。対策はこっちで考える。アンタは余計なことを考えるな。『死滅回游』のことは忘れろ」
「・・・・・・・」
でも、羂索は私を巻き込もうとしている。
お父さんたちを利用して。
私は、『死滅回游』に決して無関係ではないのだ。
私は、羂索によって仕込まれた泳者 なんだ。
「夏油の言ってることがハッタリじゃないなら、『死滅回游』とやらは、術師同士の殺し合いだ」
硝子さんの言葉に、私はその残酷な事実に改めて息を呑む。
「アンタの手をそんなことで汚したくない。それは、五条の思いでもあるんだ」
「・・・・・・」
そうだ、私には出来ない。
かつて、悠仁君に話したことだけれど。
『きっとその瞬間が来るまでわからない、本能に委ねるしかないことなの』
その瞬間が来ても、私には出来ない。
私は人を殺すなんて出来ない。
例え、呪詛師でも。
私では、お父さんも紗樹ちゃんも、守ることなんて出来ない。
そもそも私はお父さんに見捨てられたんだ。
その私が、お父さんを守らなくちゃいけないの?
まして、ずっと存在を知らなかった妹のことなんて。
そう思う一方で。
どうにかしなければと、居ても立っても居られなかった。
葛藤は続いていた。
「大宮からは通常通り運転してるみたいッス」
硝子さんとの通話を終えて、私と新田さんは再び車に乗り込んだ。
「大宮から新幹線に乗り込んで、あとは金沢へ一直線ッス!」
そう新田さんが話したように、車は大宮へ向かう。
「・・・・・・」
車の窓の外の流れる景色を見ながら、私は思う。
私に出来ることはない。
もうこの状況は、私の手には負えない。
だから、このまま糠田が森へ。
(でも、本当にそれでいいの・・・?)
私はよろめきながらも身体を起こし、立ち去ろうとする夏油を目で追った。
「・・・貴方は、夏油傑じゃない」
私がそう言うと、夏油はピタリと立ち止まった。
「貴方が、五条さんの親友のはずがない。貴方は・・・一体何者なの」
「羂索」
夏油、いや、『羂索』は言った。
「呼び名なんて最早どうでもいいんだけどね。夏油と呼ぶのが気に食わないなら、そう呼ぶと言い」
そう言いながら、割れた窓を塞いでいた呪霊を元の姿に戻した。
そこから更にグニャリと形を変えて、呪霊は次に鳥の形になった。そして、
「それじゃあ、和紗」
と鳥の形の呪霊に跨りながら、最後にもう一度私の方を振り返って、
「次こそ、君が真に目覚めた時にもう一度会おう」
と言った後、窓から外へ飛び出して行った。
「・・・・・・」
立ち上がらないと。
そして、行かないと。
だけど、身体に力が入らず立ち上がることが出来ない。
張り詰めていたのが一気に切れてしまったことと、絶望に押しつぶされて、立ち上がることが出来ない。
そんな時だった。
「鶴來さん!」
玄関からドンドンと乱暴にドアがノックする音と共に、新田さんの声が聞こえてきた。
それから間もなくドアを開く気配がして、新田さんが部屋に駆け込んできた。
「どうしたんですか!?大丈夫っスか?」
そして、床に座り込んで動けない私に駆け寄った。
「道中の飲み物でも買おうと自販機探して戻って来たら、マンションの窓から呪霊が飛び出したのが見えて・・・。ソイツに何かされたッスか?」
「・・・大丈夫」
心配そうに私の顔を覗き込む新田さんをなだめるように私は言った。
「私は大丈夫。だけど・・・」
そして、『死滅回游』のことを話した。
ただし、私のお父さんと紗樹ちゃんが巻き込まれていることは伏せて。
「『死滅回游』?」
スピーカーにした電話の向こうから、そう訝しそうに言った硝子さんの声が響いた。
私から『死滅回游』のことを聞いた後、新田さんが硝子さんに電話したのだ。
「そういうことなら、そのうち高専の方へ向こうから具体的な布告があるだろうな」
「硝子さん、どうすれば・・・」
と言う私に対して、
「どうするもこうも、アンタは何もしなくてもいいよ、和紗」
と硝子さんは言った。
「アンタは故郷に帰るんだ。対策はこっちで考える。アンタは余計なことを考えるな。『死滅回游』のことは忘れろ」
「・・・・・・・」
でも、羂索は私を巻き込もうとしている。
お父さんたちを利用して。
私は、『死滅回游』に決して無関係ではないのだ。
私は、羂索によって仕込まれた
「夏油の言ってることがハッタリじゃないなら、『死滅回游』とやらは、術師同士の殺し合いだ」
硝子さんの言葉に、私はその残酷な事実に改めて息を呑む。
「アンタの手をそんなことで汚したくない。それは、五条の思いでもあるんだ」
「・・・・・・」
そうだ、私には出来ない。
かつて、悠仁君に話したことだけれど。
『きっとその瞬間が来るまでわからない、本能に委ねるしかないことなの』
その瞬間が来ても、私には出来ない。
私は人を殺すなんて出来ない。
例え、呪詛師でも。
私では、お父さんも紗樹ちゃんも、守ることなんて出来ない。
そもそも私はお父さんに見捨てられたんだ。
その私が、お父さんを守らなくちゃいけないの?
まして、ずっと存在を知らなかった妹のことなんて。
そう思う一方で。
どうにかしなければと、居ても立っても居られなかった。
葛藤は続いていた。
「大宮からは通常通り運転してるみたいッス」
硝子さんとの通話を終えて、私と新田さんは再び車に乗り込んだ。
「大宮から新幹線に乗り込んで、あとは金沢へ一直線ッス!」
そう新田さんが話したように、車は大宮へ向かう。
「・・・・・・」
車の窓の外の流れる景色を見ながら、私は思う。
私に出来ることはない。
もうこの状況は、私の手には負えない。
だから、このまま糠田が森へ。
(でも、本当にそれでいいの・・・?)