第27話 新世界
夢小説設定
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「あぁ、妹と言っても腹違いか」
ふと思い出したように夏油が言った。
「取り急ぎだったから、彼女にはあまり良いものを取り込ませられなかったんだけどね。それに、上物は元々使い切っていたし」
「・・・どうして・・・」
私は愕然としていた。
『一緒にクッキー作って?』
そして、そう言って無邪気に笑うあの子のことを思い出していた。
カタカタと肩が震える。
それが、恐怖でなのか怒りでなのか、わからない。
「どうして!?あの子は関係ないでしょう!?」
震える声で問い詰めると、夏油はソファから立ち上がり私の元へ歩み寄ってきた。そしてすぐ傍まで来ると、
「そう。あの子がどうなろうが、君には関係ないよね」
私の耳元で、囁くように言った。
「妹と言っても、ひとかけらの情も持ち合わせていない。それどころか、君から父親を奪った恨めしい相手だ」
「・・・・・・」
そんなことない。
否定したいのに。
見透かされているんだ、奇子の術式で。
でも。
「でも、君の父親はどうするのかな?」
その言葉に、私は勢いよく顔を上げて夏油の顔を見た。
夏油は、私を挑発するような笑みを口元に浮かべている。
「臆病な君の父親でも、まだ幼い愛する娘が生き残りをかけた闘いに巻き込まれたとなれば、逃げるわけにはいかないだろうね」
「・・・・っっ!」
私はギリッと唇を噛み締め、これ以上ないほどの憎しみ込めた視線を夏油に向けた。
「止めて・・・!今すぐ止めて・・・!!」
「無理だよ。言っただろう、私は仕込みをしただけなんだ」
夏油は私の視線に動じることなく言った。
「海流は止められない。流れに抗う者、諦めて身を任せる者、運良く適応する者、死して海の命の源となる者・・・。『泳者 』達がこの先どうなるのか、私にはわからない。わかっているのは、いかようでも無駄な事はないということだ」
「・・・ふざけるな!」
「大真面目さ。これから試されようとしているのは、可能性なんだ」
そう話しながら、夏油は右手で私の頭を撫でた。
「そして、君の『可能性』も」
私はハッと目を見開いた。
そして、夏油の額を横に走る痕跡を改めて見つめた。
『気になる?この傷が』
再び、記憶が脳裏を横切る。
私が幼かった頃の記憶。
私とお母さんの運命が大きく変わってしまった、あの日のことを。
「思い出したようだね」
夏油が言った。
「もっとも、『あの時』の私は現在と違う姿だったがね」
「・・・・・・」
「『あの時』、私は君に『可能性』を見た。だからマーキングをしておいたんだ。だけど、渋谷で再会した時、君につけたマーキングは消えていた。だから、君が『あの時』の子どもだとしばらく気づかなかった」
「・・・・・・」
「マーキングだけじゃない。君の『可能性』まで消えていた。不思議だったよ。だけど、奇子の術式で君の過去を知って腑に落ちた」
「・・・・・・」
「君の母親が、全てをおっ被って持って行ってしまったんだね」
コイツが。
コイツのせいで、私とお母さんの運命が変えられてしまった。
コイツのせいで、私の家族がバラバラになってしまった。
コイツのせいで、高専のみんなが傷つけられた。
コイツのせいで、五条さんが。
そして今、お父さんまで。
コイツのせいで。
コイツのせいで。
コイツのせいで。
「・・・・っ!」
私は両手を伸ばして、夏油の胸倉を掴みかかった。
しかし、夏油は私を抱き留めるとそのまま床に押し倒した。
「・・・っ」
押し倒されて背中をぶつけた痛みに、私は顔を歪める。
そんな私を夏油は見下ろしながら、
「言っただろう。私がしたことは、ただの仕込みなんだ。君の父親と妹のことも。君の『可能性』を試すためのね」
「・・・・・・」
「母親から返してもらうんだ、君の『可能性』を。父親と妹を助けたいのなら、それしか方法はない」
と言い終えると、夏油は身体を起こして立ちあがった。
ふと思い出したように夏油が言った。
「取り急ぎだったから、彼女にはあまり良いものを取り込ませられなかったんだけどね。それに、上物は元々使い切っていたし」
「・・・どうして・・・」
私は愕然としていた。
『一緒にクッキー作って?』
そして、そう言って無邪気に笑うあの子のことを思い出していた。
カタカタと肩が震える。
それが、恐怖でなのか怒りでなのか、わからない。
「どうして!?あの子は関係ないでしょう!?」
震える声で問い詰めると、夏油はソファから立ち上がり私の元へ歩み寄ってきた。そしてすぐ傍まで来ると、
「そう。あの子がどうなろうが、君には関係ないよね」
私の耳元で、囁くように言った。
「妹と言っても、ひとかけらの情も持ち合わせていない。それどころか、君から父親を奪った恨めしい相手だ」
「・・・・・・」
そんなことない。
否定したいのに。
見透かされているんだ、奇子の術式で。
でも。
「でも、君の父親はどうするのかな?」
その言葉に、私は勢いよく顔を上げて夏油の顔を見た。
夏油は、私を挑発するような笑みを口元に浮かべている。
「臆病な君の父親でも、まだ幼い愛する娘が生き残りをかけた闘いに巻き込まれたとなれば、逃げるわけにはいかないだろうね」
「・・・・っっ!」
私はギリッと唇を噛み締め、これ以上ないほどの憎しみ込めた視線を夏油に向けた。
「止めて・・・!今すぐ止めて・・・!!」
「無理だよ。言っただろう、私は仕込みをしただけなんだ」
夏油は私の視線に動じることなく言った。
「海流は止められない。流れに抗う者、諦めて身を任せる者、運良く適応する者、死して海の命の源となる者・・・。『
「・・・ふざけるな!」
「大真面目さ。これから試されようとしているのは、可能性なんだ」
そう話しながら、夏油は右手で私の頭を撫でた。
「そして、君の『可能性』も」
私はハッと目を見開いた。
そして、夏油の額を横に走る痕跡を改めて見つめた。
『気になる?この傷が』
再び、記憶が脳裏を横切る。
私が幼かった頃の記憶。
私とお母さんの運命が大きく変わってしまった、あの日のことを。
「思い出したようだね」
夏油が言った。
「もっとも、『あの時』の私は現在と違う姿だったがね」
「・・・・・・」
「『あの時』、私は君に『可能性』を見た。だからマーキングをしておいたんだ。だけど、渋谷で再会した時、君につけたマーキングは消えていた。だから、君が『あの時』の子どもだとしばらく気づかなかった」
「・・・・・・」
「マーキングだけじゃない。君の『可能性』まで消えていた。不思議だったよ。だけど、奇子の術式で君の過去を知って腑に落ちた」
「・・・・・・」
「君の母親が、全てをおっ被って持って行ってしまったんだね」
コイツが。
コイツのせいで、私とお母さんの運命が変えられてしまった。
コイツのせいで、私の家族がバラバラになってしまった。
コイツのせいで、高専のみんなが傷つけられた。
コイツのせいで、五条さんが。
そして今、お父さんまで。
コイツのせいで。
コイツのせいで。
コイツのせいで。
「・・・・っ!」
私は両手を伸ばして、夏油の胸倉を掴みかかった。
しかし、夏油は私を抱き留めるとそのまま床に押し倒した。
「・・・っ」
押し倒されて背中をぶつけた痛みに、私は顔を歪める。
そんな私を夏油は見下ろしながら、
「言っただろう。私がしたことは、ただの仕込みなんだ。君の父親と妹のことも。君の『可能性』を試すためのね」
「・・・・・・」
「母親から返してもらうんだ、君の『可能性』を。父親と妹を助けたいのなら、それしか方法はない」
と言い終えると、夏油は身体を起こして立ちあがった。