第26話 渋谷事変ー弐ー
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(見逃してくれたの・・・?)
と、困惑しながら去って行く後ろ姿を見送っていたら。
「ん?」
硝子さん達がジッと私に視線を向けていることに気づいた。
三輪ちゃんに至っては、真っ赤に頬を染めて何やらモジモジしている。
「な、何・・・」
と私がたじろいでいると、硝子さんが言った。
「和紗、アンタ・・・」
「はい?」
「ヤッたの?五条と・・・」
「なっ!!」
硝子さんの突拍子もない質問に私は絶句した後、
「突然何言うんですかぁ!?硝子さんっ!」
と、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ゴメンゴメン。さっきアイツがあんなこと言ったからさ。気になって」
「気になっても普通ききませんよ!そんなことっ。そんなことより、夜蛾さんの無実を証明しないと・・・」
「奴らが夜蛾さんを捕らえたのは、『完全自立型呪骸』を警戒してのことだ」
私の言葉に、知らない男の人の声が被さった。
声がした方を見てみると、トレンチコートをラフに着た短髪の男の人がいた。
「『完全自立型呪骸』は、使い方によっちゃ軍隊を作り上げることも可能だからな。連中はそれを恐れてんだろう。現に、パンダも連れていかれちまった」
と、彼は言葉を続けた。
「日下部さん」
と、硝子さんが彼のこと呼んだ。
それでも、私が「誰?」と目を瞬かせていると、
「あの人は日下部篤也さん。2年生の担任っス」
と、新田さんが補足するように私に耳打ちした。
「アンタが噂の五条の嫁か」
すると日下部さんが私の方を見て言った。
「なんか想像と違ったな。もっと色っぺぇ感じのネェチャンを想像してたんだが・・・。意外と清純派が好みだったんだな、アイツ。自分があんなチャラいのに」
「・・・・・・」
一体どんな人を想像してだんだろうか。
「そんなことより、パンダ君が捕まったって」
私の言葉に日下部さんは「あぁ」と頷いてから、
「事実だ。パンダは夜蛾さんが作り上げた『完全自立型呪骸』の完成型だからな」
「完全自立型・・・?」
「例えば嬢ちゃんが抱えてるそのウサギ。呪力をチャージしてやらねぇと動かないだろ」
「はい・・・」
「が、パンダは自分の呪力を持ち、それを自己補完できる。それが『完全自立型呪骸』だ」
「・・・・・・」
「脅威とはいえ、同時に貴重なサンプルでもある。すぐにどうこうはされないだろうよ。夜蛾さんの方も、歯向かわず製造方法を吐けば司法取引で死罪は免れるかもしれん」
そんな曖昧な根拠をあてにしていいのだろうか。
早く助けなきゃ手遅れになるんじゃ。
そんなことを考えていたら、
「和紗」
硝子さんが言った。
「アンタは今すぐここを離れて、故郷に帰るんだ」
思いがけない言葉に、
「え・・・」
私は激しく動揺した。
「この状況がどこまで広がっているのかわからないが、糠田が森は少なくともここよりかは安全だろう」
「何を言ってるんですか、硝子さん。私も皆とここで・・・」
「あの総監部の奴は、きっとまだ疑っている。五条の嫁の存在を」
「・・・・・・」
「和紗がこのままここに留まり続ければ、いずれそのことがバレる。そうなれば、連中は必ずアンタを捕まえて屈辱的な取り調べをするだろう」
「・・・でもっ」
「夜蛾学長も五条もいない今、私ひとりでは和紗を守り切れない」
「・・・・・・」
「この状況に巻き込んだのは私だ。そんな私が言えた事ではないけれど・・・今すぐここを離れるんだ」
「・・・・・・」
反論も出来ず黙って立ち尽くす間にも、
「新田ちゃん。和紗を送ってやってくれないか。現地までとは言わない、せめて電車の路線が生きているところまで・・・」
と、硝子さんは新田さんに指示した。
それに新田さんも頷く。
日下部さんも、真依ちゃんも、三輪ちゃんも、引き止めない。
それで、私はわかった。
私が、この場所にいるのは、もはや意味がないことを。
と、困惑しながら去って行く後ろ姿を見送っていたら。
「ん?」
硝子さん達がジッと私に視線を向けていることに気づいた。
三輪ちゃんに至っては、真っ赤に頬を染めて何やらモジモジしている。
「な、何・・・」
と私がたじろいでいると、硝子さんが言った。
「和紗、アンタ・・・」
「はい?」
「ヤッたの?五条と・・・」
「なっ!!」
硝子さんの突拍子もない質問に私は絶句した後、
「突然何言うんですかぁ!?硝子さんっ!」
と、顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「ゴメンゴメン。さっきアイツがあんなこと言ったからさ。気になって」
「気になっても普通ききませんよ!そんなことっ。そんなことより、夜蛾さんの無実を証明しないと・・・」
「奴らが夜蛾さんを捕らえたのは、『完全自立型呪骸』を警戒してのことだ」
私の言葉に、知らない男の人の声が被さった。
声がした方を見てみると、トレンチコートをラフに着た短髪の男の人がいた。
「『完全自立型呪骸』は、使い方によっちゃ軍隊を作り上げることも可能だからな。連中はそれを恐れてんだろう。現に、パンダも連れていかれちまった」
と、彼は言葉を続けた。
「日下部さん」
と、硝子さんが彼のこと呼んだ。
それでも、私が「誰?」と目を瞬かせていると、
「あの人は日下部篤也さん。2年生の担任っス」
と、新田さんが補足するように私に耳打ちした。
「アンタが噂の五条の嫁か」
すると日下部さんが私の方を見て言った。
「なんか想像と違ったな。もっと色っぺぇ感じのネェチャンを想像してたんだが・・・。意外と清純派が好みだったんだな、アイツ。自分があんなチャラいのに」
「・・・・・・」
一体どんな人を想像してだんだろうか。
「そんなことより、パンダ君が捕まったって」
私の言葉に日下部さんは「あぁ」と頷いてから、
「事実だ。パンダは夜蛾さんが作り上げた『完全自立型呪骸』の完成型だからな」
「完全自立型・・・?」
「例えば嬢ちゃんが抱えてるそのウサギ。呪力をチャージしてやらねぇと動かないだろ」
「はい・・・」
「が、パンダは自分の呪力を持ち、それを自己補完できる。それが『完全自立型呪骸』だ」
「・・・・・・」
「脅威とはいえ、同時に貴重なサンプルでもある。すぐにどうこうはされないだろうよ。夜蛾さんの方も、歯向かわず製造方法を吐けば司法取引で死罪は免れるかもしれん」
そんな曖昧な根拠をあてにしていいのだろうか。
早く助けなきゃ手遅れになるんじゃ。
そんなことを考えていたら、
「和紗」
硝子さんが言った。
「アンタは今すぐここを離れて、故郷に帰るんだ」
思いがけない言葉に、
「え・・・」
私は激しく動揺した。
「この状況がどこまで広がっているのかわからないが、糠田が森は少なくともここよりかは安全だろう」
「何を言ってるんですか、硝子さん。私も皆とここで・・・」
「あの総監部の奴は、きっとまだ疑っている。五条の嫁の存在を」
「・・・・・・」
「和紗がこのままここに留まり続ければ、いずれそのことがバレる。そうなれば、連中は必ずアンタを捕まえて屈辱的な取り調べをするだろう」
「・・・でもっ」
「夜蛾学長も五条もいない今、私ひとりでは和紗を守り切れない」
「・・・・・・」
「この状況に巻き込んだのは私だ。そんな私が言えた事ではないけれど・・・今すぐここを離れるんだ」
「・・・・・・」
反論も出来ず黙って立ち尽くす間にも、
「新田ちゃん。和紗を送ってやってくれないか。現地までとは言わない、せめて電車の路線が生きているところまで・・・」
と、硝子さんは新田さんに指示した。
それに新田さんも頷く。
日下部さんも、真依ちゃんも、三輪ちゃんも、引き止めない。
それで、私はわかった。
私が、この場所にいるのは、もはや意味がないことを。