第26話 渋谷事変ー弐ー
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「三輪ちゃん・・・?」
と私が呼びかけると、三輪ちゃんはハッとしてこちらを振り向いた。
「大丈夫?」
「あ、は、はい・・・」
と三輪ちゃんは頷いたものの、
「・・・いえ、本当は、大丈夫じゃないです」
そう言って、三輪ちゃんは両手を開いて握りしめているものを私に見せた。
「これは・・・」
メダルのような金属物。
それに顔のような模様が刻まれている。
「メカ丸の一部です」
三輪ちゃんは言った。
「メカ丸は、敵と通じてました」
「え・・・」
「でも、それは私達を守るためだったんです」
「・・・・・・」
「そして、メカ丸はひとりで戦って・・・そして・・・」
そこまで話すと、三輪ちゃんは泣き崩れてしまった。
「だから、和紗さん、メカ丸を責めないで・・・!メカ丸は、止めようとしたんです・・・。こんなことになる前に・・・!」
「・・・三輪ちゃん」
「・・・うぅっ。ひっぐ・・・」
「・・・責めたりしないよ。だから、もう泣かないで」
それは口先の慰めじゃなくて本心だった。
私にメカ丸を責める気持ちは欠片もなかった。
それに、例えメカ丸が敵と通じていなくても、きっと、この『渋谷事変』は起こっていた。そう思ったからだ。
「・・・もうすぐ高専に到着するっス」
と新田さんが言って、私は窓の外に目を遣った。
そこは筵山の麓だった。
高専周辺は思いの外平穏で、変わった様子は今のところ見受けられない。
それから私達は車から降りて、高専の敷地内に入った。
それから間もなく、
「よくぞ戻って来てくれた」
夜蛾さんが出迎えてくれた。
サトルが嬉しそうにピョンピョン跳ねながら夜蛾さんに飛びつく。
そこで呪力が尽きて、夜蛾さんの腕の中でくったりとしてそのまま動かなくなった。
私も夜蛾さんの元へ駆けつける。
「夜蛾さんも・・・!硝子さんに伊地知さん、猪野さんは・・・」
「皆無事だ」
と夜蛾さんが言ったので、私はホッとした。
しかし、それも一瞬だけで。
「あの、野薔薇ちゃんは・・・」
と私が問いかけると、夜蛾さんの表情が険しくなった。
「今、硝子が治療にあたってる。しかし・・・」
「・・・・・・!」
私は夜蛾さんの言葉を最後まで聞くことなく、踵を返し医務室に向かって駆け出した。
(野薔薇ちゃん・・・!)
ノックもせずに医務室の扉を開く。
「わっ!?」
すると、同時に中から出てきた硝子さんとぶつかった。
「痛っ・・・って、和紗。良かった、無事だったんだね」
「硝子さん、野薔薇ちゃんは・・・」
すると、硝子さんの表情が硬く凍り付いた。
「・・・・・・」
私は硝子さんの肩越しに医務室の中を見た。
窓際に置かれたベッドに横たわる人が見える。
私は硝子さんの横をすり抜けるようにして中に入った。
「・・・見ない方がいい」
と硝子さんが言ったけれど、私は無視してベッドに近づいた。
「・・・・・・」
左目の辺りを覆い隠すように顔の半分を包帯で巻かれて、野薔薇ちゃんが目を閉じて横たわっていた。
「・・・野薔薇ちゃん・・・」
震える声で呼びかけるけれど、野薔薇ちゃんは目を覚まさない。
「・・・出来ることは全て手を尽くした」
硝子さんが私の隣に来て言った。
「あとは、釘崎自身の生命力にかけるしかない」
「・・・・・・」
私は右手を伸ばして、包帯に覆い隠された野薔薇ちゃんの顔に触れた。
そして、『反転術式』をかけようとする。
それを察して、硝子さんが言った。
「これ以上やっても無意味だよ」
だけど、私は続行する。
「和紗」
「・・・・・・」
「やめなって」
「・・・・・・」
「やめなさい」
と、硝子さんは私の手を強く引いて止めた。
「・・・何かせずにはいられないのはわかる。だけど、これ以上もうどうしようもないんだ」
「・・・でも」
「和紗、アンタだってもう限界だろう。全く呪力が練れていない」
「・・・でも・・・」
「どうしたの」
「・・・守るって、誓った」
五条さんの生徒の皆を。
五条さんの夢を。
「それなのに、私・・・っ」
それなのに、皆傷だらけになって、離れて行くのを繋ぎ止められなくて。
と私が呼びかけると、三輪ちゃんはハッとしてこちらを振り向いた。
「大丈夫?」
「あ、は、はい・・・」
と三輪ちゃんは頷いたものの、
「・・・いえ、本当は、大丈夫じゃないです」
そう言って、三輪ちゃんは両手を開いて握りしめているものを私に見せた。
「これは・・・」
メダルのような金属物。
それに顔のような模様が刻まれている。
「メカ丸の一部です」
三輪ちゃんは言った。
「メカ丸は、敵と通じてました」
「え・・・」
「でも、それは私達を守るためだったんです」
「・・・・・・」
「そして、メカ丸はひとりで戦って・・・そして・・・」
そこまで話すと、三輪ちゃんは泣き崩れてしまった。
「だから、和紗さん、メカ丸を責めないで・・・!メカ丸は、止めようとしたんです・・・。こんなことになる前に・・・!」
「・・・三輪ちゃん」
「・・・うぅっ。ひっぐ・・・」
「・・・責めたりしないよ。だから、もう泣かないで」
それは口先の慰めじゃなくて本心だった。
私にメカ丸を責める気持ちは欠片もなかった。
それに、例えメカ丸が敵と通じていなくても、きっと、この『渋谷事変』は起こっていた。そう思ったからだ。
「・・・もうすぐ高専に到着するっス」
と新田さんが言って、私は窓の外に目を遣った。
そこは筵山の麓だった。
高専周辺は思いの外平穏で、変わった様子は今のところ見受けられない。
それから私達は車から降りて、高専の敷地内に入った。
それから間もなく、
「よくぞ戻って来てくれた」
夜蛾さんが出迎えてくれた。
サトルが嬉しそうにピョンピョン跳ねながら夜蛾さんに飛びつく。
そこで呪力が尽きて、夜蛾さんの腕の中でくったりとしてそのまま動かなくなった。
私も夜蛾さんの元へ駆けつける。
「夜蛾さんも・・・!硝子さんに伊地知さん、猪野さんは・・・」
「皆無事だ」
と夜蛾さんが言ったので、私はホッとした。
しかし、それも一瞬だけで。
「あの、野薔薇ちゃんは・・・」
と私が問いかけると、夜蛾さんの表情が険しくなった。
「今、硝子が治療にあたってる。しかし・・・」
「・・・・・・!」
私は夜蛾さんの言葉を最後まで聞くことなく、踵を返し医務室に向かって駆け出した。
(野薔薇ちゃん・・・!)
ノックもせずに医務室の扉を開く。
「わっ!?」
すると、同時に中から出てきた硝子さんとぶつかった。
「痛っ・・・って、和紗。良かった、無事だったんだね」
「硝子さん、野薔薇ちゃんは・・・」
すると、硝子さんの表情が硬く凍り付いた。
「・・・・・・」
私は硝子さんの肩越しに医務室の中を見た。
窓際に置かれたベッドに横たわる人が見える。
私は硝子さんの横をすり抜けるようにして中に入った。
「・・・見ない方がいい」
と硝子さんが言ったけれど、私は無視してベッドに近づいた。
「・・・・・・」
左目の辺りを覆い隠すように顔の半分を包帯で巻かれて、野薔薇ちゃんが目を閉じて横たわっていた。
「・・・野薔薇ちゃん・・・」
震える声で呼びかけるけれど、野薔薇ちゃんは目を覚まさない。
「・・・出来ることは全て手を尽くした」
硝子さんが私の隣に来て言った。
「あとは、釘崎自身の生命力にかけるしかない」
「・・・・・・」
私は右手を伸ばして、包帯に覆い隠された野薔薇ちゃんの顔に触れた。
そして、『反転術式』をかけようとする。
それを察して、硝子さんが言った。
「これ以上やっても無意味だよ」
だけど、私は続行する。
「和紗」
「・・・・・・」
「やめなって」
「・・・・・・」
「やめなさい」
と、硝子さんは私の手を強く引いて止めた。
「・・・何かせずにはいられないのはわかる。だけど、これ以上もうどうしようもないんだ」
「・・・でも」
「和紗、アンタだってもう限界だろう。全く呪力が練れていない」
「・・・でも・・・」
「どうしたの」
「・・・守るって、誓った」
五条さんの生徒の皆を。
五条さんの夢を。
「それなのに、私・・・っ」
それなのに、皆傷だらけになって、離れて行くのを繋ぎ止められなくて。