第26話 渋谷事変ー弐ー
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そんなこと言われても信じられない。
そもそも悠仁君のお兄ちゃんだなんて、どういうのつもりなの。
その時だった。
一台の車がこちらに向かって走って来る。
それは、高専の社用車だった。
「・・・迎えが来たようだな」
脹相が言った。
「俺はここまでだ」
「脹相・・・さん」
踵を返し立ち去ろうとする脹相を私は呼び止めた。
「悠仁君をお願いします」
信じることなんて到底出来ない。
だけど、今の悠仁君に寄り添えられるのは、この人だけなんだ。
すると脹相は少し驚いた顔をしていたものの、コクリと深く頷いて、
「わかった」
と言い残して、去って行った。
遠ざかる彼の後ろ姿を見送っていたら、高専の車が停まり、
「鶴來さん!探したっスよ〜。無事で良かった!」
新田さんが車から降りて、私の元へ駆けつける。それだけでなく。
「真依ちゃん、三輪ちゃん!?」
と、私は驚きの声を上げた。
新田さんと同時に車から降りて来たのは、京都にいるはずの真依ちゃんと三輪ちゃんだった。
「どうして・・・?」
「どうしてもこうしてもないわよ」
真依ちゃんが言った。
「東京がこんなことになってるんだから加勢に来た以外に理由があると思う?」
「・・・そっか」
「ま、加勢に来たものの、けんもほろろにやられたけど」
「・・・何があったの?」
「・・・加茂憲倫」
ポツリと、三輪ちゃんが言った。
私は三輪ちゃんの方は視線を向ける。
三輪ちゃんは両手の中に何かを握りしめながら、もう一度言った。
「加茂憲倫。この『渋谷事変』の首謀者と戦ったんです」
「え・・・」
「でも、ちっとも歯が立たなかった・・・」
「・・・・・・」
「全ての呪力をのせたのに。もう二度と、刀を振るえなくてもいいって、思ったのに・・・」
そこまで話すと、三輪ちゃんはスーッと静かに涙を流した。
「三輪ちゃん・・・」
三輪ちゃんを慰めるように、その肩に触れながら、私はもうひとつ別の事を考えていた。
(加茂憲倫・・・?)
首謀者は夏油さんのはずじゃ。
奇子も脹相もそう言っていた。
もう一人、別の首謀者がいるということなのだろうか。
『あの夏油の姿もかりそめのモノに過ぎない』
ふと、奇子の言葉が脳裏をよぎった。
「積もる話の続きは、車内でするっス」
新田さんが言った。
「とにかく急いで高専に戻るっス!」
その言葉に頷き、私達は車に乗り込んだ。
真依ちゃん達京都校の皆が東京に到着したのは、23時半を過ぎた頃。
東京に向かう直前までは京都以南での任務に就いていて、『渋谷事変』のことを知ったのは、京都に戻ってきてからの事だった。
それから先に東京に向かった東堂君と新田さんの弟を追って東京に向かった。そして、『加茂憲倫』と戦闘になり追い詰められ窮地に陥ったところを、途中で参戦してきた高専に所属していない呪術師一派に救助され、高専に移送されたという。
「で、アナタが渋谷から撤退する途中ではぐれたっていうのを東京校の学長から聞いて、捜索するよう頼まれたのよ」
真依ちゃんが言った。
「東京校の連中とウチの学校の数名は皆ボロボロだったしね。それで比較的元気な私達にお鉢が回って来たってワケ」
「そうだったんだ」
「ま、すぐ見つかって良かったわ」
「うん、ありがとう」
と言った後、私は伺うように続けた。
「・・・真希ちゃんとは、会った?」
すると真依ちゃんは眉をひそめて、
「・・・ええ。ホントしぶといわよねぇ。普通死んじゃうと思うじゃない、あんな大火傷したら。でも、普通に会話が出来るんだもの」
と言った。
真依ちゃんの話を聞いて、私はホッとした。
(よかった・・・。意識を取り戻したんだ、真希ちゃん)
皮肉めいた口ぶりだけど、きっと真依ちゃんもホッとしたのだと思う。
そんな傍らで、三輪ちゃんがさっきからずっと黙っていることに気が付いた。
「・・・・・・」
三輪ちゃんはさっきずっと胸元で何かを両手で包む込むように握りしめて、思いつめた顔をしている。
そもそも悠仁君のお兄ちゃんだなんて、どういうのつもりなの。
その時だった。
一台の車がこちらに向かって走って来る。
それは、高専の社用車だった。
「・・・迎えが来たようだな」
脹相が言った。
「俺はここまでだ」
「脹相・・・さん」
踵を返し立ち去ろうとする脹相を私は呼び止めた。
「悠仁君をお願いします」
信じることなんて到底出来ない。
だけど、今の悠仁君に寄り添えられるのは、この人だけなんだ。
すると脹相は少し驚いた顔をしていたものの、コクリと深く頷いて、
「わかった」
と言い残して、去って行った。
遠ざかる彼の後ろ姿を見送っていたら、高専の車が停まり、
「鶴來さん!探したっスよ〜。無事で良かった!」
新田さんが車から降りて、私の元へ駆けつける。それだけでなく。
「真依ちゃん、三輪ちゃん!?」
と、私は驚きの声を上げた。
新田さんと同時に車から降りて来たのは、京都にいるはずの真依ちゃんと三輪ちゃんだった。
「どうして・・・?」
「どうしてもこうしてもないわよ」
真依ちゃんが言った。
「東京がこんなことになってるんだから加勢に来た以外に理由があると思う?」
「・・・そっか」
「ま、加勢に来たものの、けんもほろろにやられたけど」
「・・・何があったの?」
「・・・加茂憲倫」
ポツリと、三輪ちゃんが言った。
私は三輪ちゃんの方は視線を向ける。
三輪ちゃんは両手の中に何かを握りしめながら、もう一度言った。
「加茂憲倫。この『渋谷事変』の首謀者と戦ったんです」
「え・・・」
「でも、ちっとも歯が立たなかった・・・」
「・・・・・・」
「全ての呪力をのせたのに。もう二度と、刀を振るえなくてもいいって、思ったのに・・・」
そこまで話すと、三輪ちゃんはスーッと静かに涙を流した。
「三輪ちゃん・・・」
三輪ちゃんを慰めるように、その肩に触れながら、私はもうひとつ別の事を考えていた。
(加茂憲倫・・・?)
首謀者は夏油さんのはずじゃ。
奇子も脹相もそう言っていた。
もう一人、別の首謀者がいるということなのだろうか。
『あの夏油の姿もかりそめのモノに過ぎない』
ふと、奇子の言葉が脳裏をよぎった。
「積もる話の続きは、車内でするっス」
新田さんが言った。
「とにかく急いで高専に戻るっス!」
その言葉に頷き、私達は車に乗り込んだ。
真依ちゃん達京都校の皆が東京に到着したのは、23時半を過ぎた頃。
東京に向かう直前までは京都以南での任務に就いていて、『渋谷事変』のことを知ったのは、京都に戻ってきてからの事だった。
それから先に東京に向かった東堂君と新田さんの弟を追って東京に向かった。そして、『加茂憲倫』と戦闘になり追い詰められ窮地に陥ったところを、途中で参戦してきた高専に所属していない呪術師一派に救助され、高専に移送されたという。
「で、アナタが渋谷から撤退する途中ではぐれたっていうのを東京校の学長から聞いて、捜索するよう頼まれたのよ」
真依ちゃんが言った。
「東京校の連中とウチの学校の数名は皆ボロボロだったしね。それで比較的元気な私達にお鉢が回って来たってワケ」
「そうだったんだ」
「ま、すぐ見つかって良かったわ」
「うん、ありがとう」
と言った後、私は伺うように続けた。
「・・・真希ちゃんとは、会った?」
すると真依ちゃんは眉をひそめて、
「・・・ええ。ホントしぶといわよねぇ。普通死んじゃうと思うじゃない、あんな大火傷したら。でも、普通に会話が出来るんだもの」
と言った。
真依ちゃんの話を聞いて、私はホッとした。
(よかった・・・。意識を取り戻したんだ、真希ちゃん)
皮肉めいた口ぶりだけど、きっと真依ちゃんもホッとしたのだと思う。
そんな傍らで、三輪ちゃんがさっきからずっと黙っていることに気が付いた。
「・・・・・・」
三輪ちゃんはさっきずっと胸元で何かを両手で包む込むように握りしめて、思いつめた顔をしている。