第26話 渋谷事変ー弐ー
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「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ここはどのあたりなんだろう。
どれぐらい歩いたんだろう。
今、何時なんだろう。
スマホもさっき高速道路から落ちた時に、鞄ごと失くしてしまった。
硝子さんや夜蛾さんたちは無事なのかな。
他の人たちも。
一緒に高速道路から落ちた人たち・・・助けられなかった。
助けられなかった。
(・・・疲れた・・・)
呪霊の集団から逃れられたものの、皆とはぐれてしまって、私はサトルと二人きりで歩き続けていた。
すると、川沿いの道に辿り着いた。
「川・・・」
何川だろう。
名前がわかれば、今どこにいるのか何となく見当つくのに。
でも、もうどうでもいいや。
もう、これ以上歩けない。
もう・・・、これ以上。
「・・・・・・」
私は川岸の柵にもたれかかるようにして、その場に座り込んだ。
すると。
ザバァン・・・
背後を流れる川の中から、大型呪霊が現れた気配を感じた。
(今度は何)
アザラシ、闘牛ときて、今度はどんな呪霊?
だけど、顔を上げて確認する気も起らなかった。
・・・戦うことも逃げることも、気力がなかった。
(・・・もう、どこにも五条さんはいないのに)
私の背後に、呪霊の息がかかる。
グパァッ・・・と口を開く気配を感じる。
もうこのままひと飲みにされればいいのに。
「・・・・・・」
サトルが逃げろというように私の手を引っ張る。
(・・・ごめんね、サトル。もう私、動けない)
私はそんなサトルを突き飛ばした。
(サトルは、逃げて)
そう小さく微笑みかけた後、私は目を閉じて顔を空に向かって上げた。
その時だった。
『ただいま〜和紗、おかえり~僕』
ふいに、五条さんの場違いな能天気な声が聞こえた。
「・・・・・・」
ううん、聞こえるはずがない。
これは、私の記憶の中の声だ。
だけど。
『きっと、離れている時間の方が一緒にいる時間より長くなる』
『それでも、僕は和紗と人生を分かち合っていきたい』
『『行ってきます』と『ただいま』を何度も繰り返して、一緒に生きていきたい』
私の中にある、確かな声。
「・・・・っ!」
私は柵に掴まりながら立ち上がり、後ろを振り返った。
カエル型の大型呪霊が、今にも私を食べようと大きな口を開けていた。
「・・・くっ」
もう呪力はほとんど残っていない。
『退魔の力』を練ったところで、僅かな力では大型呪霊に効かないかもしれない。
だけど、あの人のどんな声でもいい。
もう一度、あの人の声を聞くために。
「うわああああああっ!」
残った全ての呪力を振り絞る。
───私も帰るから。
どんな事があっても、どれだけ時間がかかっても、どんなに道のりが遠くても。
「!」
カエル型の大型呪霊の舌が私の胴回りに巻き付き、そのまま釣り上げる。
「うっ・・・」
このままでは口の中に放り込まれる。
そうはさせない。
絞り集めた全ての呪力を、カエルの舌に叩きつけようとしたその時だった。
ドゴッッッ!!
凄まじい一撃が大型呪霊の頭に炸裂して破裂した。
私を捉えていた舌が緩んで解放された。
そのまま川に落下しそうになる私を、何者かが抱き上げた。そして、大型呪霊を踏み台にしてジャンプして川岸に着地した。
「ゆ・・・」
私はその人の名を呼んだ。
「悠仁君・・・?」
すると、悠仁君は私の顔を見て微笑みかけた後、
「大丈夫?和紗さん。立てる?」
と言った。
「・・・・・・」
私は呆然として答えないまま、しばらく悠仁君の顔を見つめていた。
悠仁君は小首を傾げて、私の顔を見返す。
「無理そう?どっか怪我した?」
「あ、う、ううん!大丈夫!」
「そお?」
「うん・・・」
そうして、悠仁君はお姫様抱っこしていた私をそっと降ろした。
ここはどのあたりなんだろう。
どれぐらい歩いたんだろう。
今、何時なんだろう。
スマホもさっき高速道路から落ちた時に、鞄ごと失くしてしまった。
硝子さんや夜蛾さんたちは無事なのかな。
他の人たちも。
一緒に高速道路から落ちた人たち・・・助けられなかった。
助けられなかった。
(・・・疲れた・・・)
呪霊の集団から逃れられたものの、皆とはぐれてしまって、私はサトルと二人きりで歩き続けていた。
すると、川沿いの道に辿り着いた。
「川・・・」
何川だろう。
名前がわかれば、今どこにいるのか何となく見当つくのに。
でも、もうどうでもいいや。
もう、これ以上歩けない。
もう・・・、これ以上。
「・・・・・・」
私は川岸の柵にもたれかかるようにして、その場に座り込んだ。
すると。
ザバァン・・・
背後を流れる川の中から、大型呪霊が現れた気配を感じた。
(今度は何)
アザラシ、闘牛ときて、今度はどんな呪霊?
だけど、顔を上げて確認する気も起らなかった。
・・・戦うことも逃げることも、気力がなかった。
(・・・もう、どこにも五条さんはいないのに)
私の背後に、呪霊の息がかかる。
グパァッ・・・と口を開く気配を感じる。
もうこのままひと飲みにされればいいのに。
「・・・・・・」
サトルが逃げろというように私の手を引っ張る。
(・・・ごめんね、サトル。もう私、動けない)
私はそんなサトルを突き飛ばした。
(サトルは、逃げて)
そう小さく微笑みかけた後、私は目を閉じて顔を空に向かって上げた。
その時だった。
『ただいま〜和紗、おかえり~僕』
ふいに、五条さんの場違いな能天気な声が聞こえた。
「・・・・・・」
ううん、聞こえるはずがない。
これは、私の記憶の中の声だ。
だけど。
『きっと、離れている時間の方が一緒にいる時間より長くなる』
『それでも、僕は和紗と人生を分かち合っていきたい』
『『行ってきます』と『ただいま』を何度も繰り返して、一緒に生きていきたい』
私の中にある、確かな声。
「・・・・っ!」
私は柵に掴まりながら立ち上がり、後ろを振り返った。
カエル型の大型呪霊が、今にも私を食べようと大きな口を開けていた。
「・・・くっ」
もう呪力はほとんど残っていない。
『退魔の力』を練ったところで、僅かな力では大型呪霊に効かないかもしれない。
だけど、あの人のどんな声でもいい。
もう一度、あの人の声を聞くために。
「うわああああああっ!」
残った全ての呪力を振り絞る。
───私も帰るから。
どんな事があっても、どれだけ時間がかかっても、どんなに道のりが遠くても。
「!」
カエル型の大型呪霊の舌が私の胴回りに巻き付き、そのまま釣り上げる。
「うっ・・・」
このままでは口の中に放り込まれる。
そうはさせない。
絞り集めた全ての呪力を、カエルの舌に叩きつけようとしたその時だった。
ドゴッッッ!!
凄まじい一撃が大型呪霊の頭に炸裂して破裂した。
私を捉えていた舌が緩んで解放された。
そのまま川に落下しそうになる私を、何者かが抱き上げた。そして、大型呪霊を踏み台にしてジャンプして川岸に着地した。
「ゆ・・・」
私はその人の名を呼んだ。
「悠仁君・・・?」
すると、悠仁君は私の顔を見て微笑みかけた後、
「大丈夫?和紗さん。立てる?」
と言った。
「・・・・・・」
私は呆然として答えないまま、しばらく悠仁君の顔を見つめていた。
悠仁君は小首を傾げて、私の顔を見返す。
「無理そう?どっか怪我した?」
「あ、う、ううん!大丈夫!」
「そお?」
「うん・・・」
そうして、悠仁君はお姫様抱っこしていた私をそっと降ろした。