第26話 渋谷事変ー弐ー
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アザラシのような姿形の呪霊。
しかし、本物のアザラシのような可愛げはない。目玉は眼孔から飛び出し、黒目は左右焦点が定まっていない。口は張り裂けそうなほど大きく、ポッカリと空いた口からは鋭い牙が剥き出しになっている。
ヒレをばたつかせて巨体を揺らしながら、高速道路を爆走して、こちらの野営病院まで迫ってきた。
「ハ``ウワウハ``ウッ!!」
その雄叫びに、空気がビリビリと震える。
「・・・・っ!!」
思わず手で両耳を塞ぐ。
そうしている間にも、アザラシ型呪霊はもう目前まで来ていた。
「・・・・っ」
私は愕然として呪霊を見上げる。
(戦わなくちゃ。でも、こんな大きな呪霊とどうやって?)
するとその時。
「来訪瑞獣。一番『獬豸』」
角がミサイルの様に飛んできて、アザラシ型の呪霊のこめかみに着弾した。
「ハ``ウッ!!」
アザラシ型呪霊は悲鳴を上げて倒れる。
私はハッとして後ろを振り返ると、
「猪野さん!」
寝込んでいるはずの猪野さんがいた。
「和紗ちゃん・・・大丈夫・・・?」
と言って、猪野さんはガクッと片膝をつく。
私は慌てて猪野さんの元へ駆けつけて支える。
「猪野さん・・・!」
その間にも、倒れていたアザラシ型呪霊がゆっくりと起き上がる。
「ハ``ウ、ウゥウウ~・・・」
倒しきれなかった。
私と猪野さんは再び身構える。しかし、
「囲い込め!」
「一斉に攻撃するぞ!」
怪我を負って待機していた呪術師の人達が駆けつけてきて、アザラシ型呪霊を取り囲んでいた。そして、力を合わせて呪霊を祓った。
「・・・・・・」
ホッとして胸を撫でおろしていると、
「・・・まだだ」
「夜蛾さん」
夜蛾さんも野営病院から出てきて、遠方をジッと見据えていた。
その視線につられて、私も同じ方向を見据える。
崩れたビルの向う側に、昏い空に、先程の呪霊と同じくらいの規模の影が見える。
夜蛾さんは、息を飲むように低い声で言った。
「・・・来る・・・」
夜蛾さんのその言葉通り、まもなく超大型呪霊が何匹も野営病院を襲撃してきた。
ここを狙って来ているというよりは、通りかかった時にここにいる人間を見つけて襲い掛かる・・・そういう感じだった。
この呪霊たちは、解き放たれたものたち。
深い眠りから解き放たれて、久方ぶりに自由を得て、人間を蹂躙して高揚している。
そう感じた。
そう、さっき宿儺が言っていた言葉は、きっとこういう光景なんだ。
「うわああああっ!」
身体を踏みにじり、
「いやっ、いやぁぁああ!!」
口の中に放り込んで嚙み砕き、
「やめ、やめっ・・・」
手のひらで叩き潰す。
まるでそこら辺にある木の枝の様に、木の実の様に、虫けらのように。
「撤退だ!」
そんな悪夢のような光景の中、夜蛾さんが叫ぶ。
「呪術高専へ撤退する!この戦いは・・・我々の負けだ」
その声を聞いて、この場にいる呪術師たちは敗走を始めた。
そんな中で私は、
(助けなくちゃ。ひとりでも、多くの人を・・・)
呆然としながらも、倒れている呪術師に駆け寄った。
そして、『反転術式』をかけようとしたら、
「和紗」
硝子さんにグイッと腕を引っ張られて制止された。
私と目が合うと、硝子さんは横に首を振った。
「学長の言葉、聞こえただろう。逃げるよ」
「でも・・・」
私はチラッと倒れている呪術師へ視線を向けた。
まだ、息がある。
しかし、硝子さんは言った。
「治したところで、もう自力で歩けない。背負って逃げることも出来ない」
「・・・でも・・・っ」
「以前にも言ったけれど、回復役 の最優先事項は自身の安全確保。でないと、救えるものも救えなくなる」
「でもっ!」
「そのために、トリアージ もしなければならない」
「・・・・・・」
その硝子さんの言葉を聞いた時、ガクリと身体から力が抜けていくのがわかった。
硝子さんはそのまま私を腕を引き上げて立たせて、その場から連れていく。
「う・・・」
去り際、倒れている呪術師の声が聞こえた。
その声が、「構わずに行ってくれ」「置いて行かないでくれ」、どちらの意味だったのか・・・。
もう、私にはわからなかった。
しかし、本物のアザラシのような可愛げはない。目玉は眼孔から飛び出し、黒目は左右焦点が定まっていない。口は張り裂けそうなほど大きく、ポッカリと空いた口からは鋭い牙が剥き出しになっている。
ヒレをばたつかせて巨体を揺らしながら、高速道路を爆走して、こちらの野営病院まで迫ってきた。
「ハ``ウワウハ``ウッ!!」
その雄叫びに、空気がビリビリと震える。
「・・・・っ!!」
思わず手で両耳を塞ぐ。
そうしている間にも、アザラシ型呪霊はもう目前まで来ていた。
「・・・・っ」
私は愕然として呪霊を見上げる。
(戦わなくちゃ。でも、こんな大きな呪霊とどうやって?)
するとその時。
「来訪瑞獣。一番『獬豸』」
角がミサイルの様に飛んできて、アザラシ型の呪霊のこめかみに着弾した。
「ハ``ウッ!!」
アザラシ型呪霊は悲鳴を上げて倒れる。
私はハッとして後ろを振り返ると、
「猪野さん!」
寝込んでいるはずの猪野さんがいた。
「和紗ちゃん・・・大丈夫・・・?」
と言って、猪野さんはガクッと片膝をつく。
私は慌てて猪野さんの元へ駆けつけて支える。
「猪野さん・・・!」
その間にも、倒れていたアザラシ型呪霊がゆっくりと起き上がる。
「ハ``ウ、ウゥウウ~・・・」
倒しきれなかった。
私と猪野さんは再び身構える。しかし、
「囲い込め!」
「一斉に攻撃するぞ!」
怪我を負って待機していた呪術師の人達が駆けつけてきて、アザラシ型呪霊を取り囲んでいた。そして、力を合わせて呪霊を祓った。
「・・・・・・」
ホッとして胸を撫でおろしていると、
「・・・まだだ」
「夜蛾さん」
夜蛾さんも野営病院から出てきて、遠方をジッと見据えていた。
その視線につられて、私も同じ方向を見据える。
崩れたビルの向う側に、昏い空に、先程の呪霊と同じくらいの規模の影が見える。
夜蛾さんは、息を飲むように低い声で言った。
「・・・来る・・・」
夜蛾さんのその言葉通り、まもなく超大型呪霊が何匹も野営病院を襲撃してきた。
ここを狙って来ているというよりは、通りかかった時にここにいる人間を見つけて襲い掛かる・・・そういう感じだった。
この呪霊たちは、解き放たれたものたち。
深い眠りから解き放たれて、久方ぶりに自由を得て、人間を蹂躙して高揚している。
そう感じた。
そう、さっき宿儺が言っていた言葉は、きっとこういう光景なんだ。
「うわああああっ!」
身体を踏みにじり、
「いやっ、いやぁぁああ!!」
口の中に放り込んで嚙み砕き、
「やめ、やめっ・・・」
手のひらで叩き潰す。
まるでそこら辺にある木の枝の様に、木の実の様に、虫けらのように。
「撤退だ!」
そんな悪夢のような光景の中、夜蛾さんが叫ぶ。
「呪術高専へ撤退する!この戦いは・・・我々の負けだ」
その声を聞いて、この場にいる呪術師たちは敗走を始めた。
そんな中で私は、
(助けなくちゃ。ひとりでも、多くの人を・・・)
呆然としながらも、倒れている呪術師に駆け寄った。
そして、『反転術式』をかけようとしたら、
「和紗」
硝子さんにグイッと腕を引っ張られて制止された。
私と目が合うと、硝子さんは横に首を振った。
「学長の言葉、聞こえただろう。逃げるよ」
「でも・・・」
私はチラッと倒れている呪術師へ視線を向けた。
まだ、息がある。
しかし、硝子さんは言った。
「治したところで、もう自力で歩けない。背負って逃げることも出来ない」
「・・・でも・・・っ」
「以前にも言ったけれど、
「でもっ!」
「そのために、
「・・・・・・」
その硝子さんの言葉を聞いた時、ガクリと身体から力が抜けていくのがわかった。
硝子さんはそのまま私を腕を引き上げて立たせて、その場から連れていく。
「う・・・」
去り際、倒れている呪術師の声が聞こえた。
その声が、「構わずに行ってくれ」「置いて行かないでくれ」、どちらの意味だったのか・・・。
もう、私にはわからなかった。