第26話 渋谷事変ー弐ー
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「伏黒君」
私はホッとして伏黒君の傍へ駆け寄った。
伏黒君はまだ朦朧としていて、焦点の定まらない目で天井を見ている。
「・・・ここは・・・」
「首都高速3号線の渋谷料金所。そこに設けた野営病院」
「・・・俺は、どうやってここへ・・・。調伏は・・・?」
「ちょうぶく?」
「・・・・・・」
すると突然、伏黒君はガバッと勢いよく起き上がった。
意識がハッキリしたようで、しっかりとした視線で私を見ている。
「鶴來さん!?」
「ダメだよ、そんな急に起きちゃ」
「どうしてここに・・・」
「私は渋谷の近くに居合わせてて。夜蛾さんから治療の手助けを頼まれて、ここに・・・」
「・・・・・・」
私にそう言われて、伏黒君は状況を確認するように辺りを見回し始めた。
隣に眠る皆の姿を見て愕然とする。
「・・・真希さん・・・狗巻先輩・・・。猪野さん、伊地知さんまで・・・」
「何とか今は、皆、症状は落ち着いてる」
「・・・虎杖と釘崎は・・・」
「ここには来てない・・・」
そう言った後すぐ、
「・・・宿儺が、伏黒君をここに・・・」
と私が言い改めると、伏黒君はハッと息を飲んだ。
そして、
「・・・それであの時、宿儺の気配が・・・」
と、思い返すように呟いた。
そしてそのすぐ後、ベッドから出て起きあがろうとしたものの、
「伏黒君!」
足に力が入らなかったようで、ベッドから落ちるように床に倒れ込んだ。
私はしゃがみ込んで伏黒君を支える。
「無茶しないで」
「こんな状況で、奴を野放しに出来ない・・・。奴を・・・宿儺を止めねぇと・・・」
「伏黒君」
「どうして・・・虎杖に何が・・・」
私が諌めるのも聞かず、伏黒君は床に這ってでも行こうとする。
宿儺を放っておかないのはわかる。
でも、もはやボロボロの伏黒君を行かせる訳にはいかない。
「・・・・・・・」
その時、ふと思い当たった。
「・・・多分、宿儺にはもう悠仁君の身体を乗っ取る時間は無いと思う」
「・・・え」
「私に言ったの。『あまり時間は残されていないようだ』って」
「・・・・・・」
すると、伏黒君は幾分か落ち着きを取り戻したらしく、床に伏せっている身体をゆっくりと起こした。
そして、
「・・・五条先生のことは」
と、尋ねるように言ったので、
「・・・知ってる」
と、私は答えた。
すると、伏黒君は申し訳なさそうに眉をひそめて、私の顔を見返した。
「・・・でも、私、大丈夫だって信じてる」
声が震えそうになるのをグッと堪えて、私は言った。
大丈夫。
でも、さっき同じことを言った時よりも、その思いは揺らいでいた。
それでも、自分に言い聞かすように繰り返した。
「大丈夫だって、信じてる」
「・・・・・・」
「・・・でも」
堰き止められない思いがこぼれ落ちる。
「どうして、逃げられなかったのかなって」
「・・・・・・」
「封印だなんて、そんな、モノみたいに・・・。五条さんだったら、逃げられないはずないのに・・・」
「・・・・・・」
「何かあったのかなって・・・」
「・・・・・・」
「・・・私のせいなのかな」
「・・・え」
「私が、あんな事を、言ったから」
『呪いを祓い続けて、たくさんの人を助けて』
私の言葉が五条さんを縛り付けてしまったのではないか。
そんな思いがずっと心に引っかかっていた。
「私のせいで・・・」
「自惚れんなよ」
思いがけない言葉に、私は驚いて顔を上げた。
「どんな事言ったか知らねぇけど、アンタの言葉ひとつで、呪術師としての在り方を左右されるほど、あの人はヤワじゃねぇよ」
厳しい言葉とは裏腹に、伏黒君は心配そうに私を見つめている。
「あの人は、自分の居場所で、自分のやれる事をやっただけだ。誰のせいでも、誰の為でもない」
「・・・・・・」
その瞬間、かつて五条さんに言われた言葉を思い出した。
『だから、それまで和紗も踏ん張って。自分に今出来ることを、自分の場所で、小さなことでいいから』
五条さんは、あの時私に言った事を、自分自身が。
私はホッとして伏黒君の傍へ駆け寄った。
伏黒君はまだ朦朧としていて、焦点の定まらない目で天井を見ている。
「・・・ここは・・・」
「首都高速3号線の渋谷料金所。そこに設けた野営病院」
「・・・俺は、どうやってここへ・・・。調伏は・・・?」
「ちょうぶく?」
「・・・・・・」
すると突然、伏黒君はガバッと勢いよく起き上がった。
意識がハッキリしたようで、しっかりとした視線で私を見ている。
「鶴來さん!?」
「ダメだよ、そんな急に起きちゃ」
「どうしてここに・・・」
「私は渋谷の近くに居合わせてて。夜蛾さんから治療の手助けを頼まれて、ここに・・・」
「・・・・・・」
私にそう言われて、伏黒君は状況を確認するように辺りを見回し始めた。
隣に眠る皆の姿を見て愕然とする。
「・・・真希さん・・・狗巻先輩・・・。猪野さん、伊地知さんまで・・・」
「何とか今は、皆、症状は落ち着いてる」
「・・・虎杖と釘崎は・・・」
「ここには来てない・・・」
そう言った後すぐ、
「・・・宿儺が、伏黒君をここに・・・」
と私が言い改めると、伏黒君はハッと息を飲んだ。
そして、
「・・・それであの時、宿儺の気配が・・・」
と、思い返すように呟いた。
そしてそのすぐ後、ベッドから出て起きあがろうとしたものの、
「伏黒君!」
足に力が入らなかったようで、ベッドから落ちるように床に倒れ込んだ。
私はしゃがみ込んで伏黒君を支える。
「無茶しないで」
「こんな状況で、奴を野放しに出来ない・・・。奴を・・・宿儺を止めねぇと・・・」
「伏黒君」
「どうして・・・虎杖に何が・・・」
私が諌めるのも聞かず、伏黒君は床に這ってでも行こうとする。
宿儺を放っておかないのはわかる。
でも、もはやボロボロの伏黒君を行かせる訳にはいかない。
「・・・・・・・」
その時、ふと思い当たった。
「・・・多分、宿儺にはもう悠仁君の身体を乗っ取る時間は無いと思う」
「・・・え」
「私に言ったの。『あまり時間は残されていないようだ』って」
「・・・・・・」
すると、伏黒君は幾分か落ち着きを取り戻したらしく、床に伏せっている身体をゆっくりと起こした。
そして、
「・・・五条先生のことは」
と、尋ねるように言ったので、
「・・・知ってる」
と、私は答えた。
すると、伏黒君は申し訳なさそうに眉をひそめて、私の顔を見返した。
「・・・でも、私、大丈夫だって信じてる」
声が震えそうになるのをグッと堪えて、私は言った。
大丈夫。
でも、さっき同じことを言った時よりも、その思いは揺らいでいた。
それでも、自分に言い聞かすように繰り返した。
「大丈夫だって、信じてる」
「・・・・・・」
「・・・でも」
堰き止められない思いがこぼれ落ちる。
「どうして、逃げられなかったのかなって」
「・・・・・・」
「封印だなんて、そんな、モノみたいに・・・。五条さんだったら、逃げられないはずないのに・・・」
「・・・・・・」
「何かあったのかなって・・・」
「・・・・・・」
「・・・私のせいなのかな」
「・・・え」
「私が、あんな事を、言ったから」
『呪いを祓い続けて、たくさんの人を助けて』
私の言葉が五条さんを縛り付けてしまったのではないか。
そんな思いがずっと心に引っかかっていた。
「私のせいで・・・」
「自惚れんなよ」
思いがけない言葉に、私は驚いて顔を上げた。
「どんな事言ったか知らねぇけど、アンタの言葉ひとつで、呪術師としての在り方を左右されるほど、あの人はヤワじゃねぇよ」
厳しい言葉とは裏腹に、伏黒君は心配そうに私を見つめている。
「あの人は、自分の居場所で、自分のやれる事をやっただけだ。誰のせいでも、誰の為でもない」
「・・・・・・」
その瞬間、かつて五条さんに言われた言葉を思い出した。
『だから、それまで和紗も踏ん張って。自分に今出来ることを、自分の場所で、小さなことでいいから』
五条さんは、あの時私に言った事を、自分自身が。