第26話 渋谷事変ー弐ー
夢小説設定
「虫の息だ」
夜蛾さんが伏黒君をベッドに降ろすと、硝子さんはすぐさま『反転術式』をかけ始めた。
「でも生きてるよ」
それを聞いて、私はホッと息を吐いた。
そうしていると、夜蛾さんが上着を脱いで、私の肩に羽織らせた。
「あ、ありがとうございます」
「君は見たのか」
「え?」
「伏黒をここへ連れてきたのは・・・」
「・・・・・・」
一瞬、答えるのを戸惑ったけれど、
「・・・宿儺が・・・」
とだけ私は言った。
すると夜蛾さんはハッと息を飲んで、
「何故!?虎杖は・・・」
その時だった。
「家入さん!急いで治療をお願いします!重傷者です!」
と切羽詰まった声と共に、怪我人を背負った補助監督が駆け込んできた。
そちらを振り向いた次の瞬間、私も硝子さんも夜蛾さんも、愕然として一瞬言葉を失った。
「狗巻君・・・!」
補助監督に連れてこられたのは、狗巻君だった。
左腕が切断されて欠損している。
応急処置で止血はしているようだが、その容態は明らかに思わしくない。
硝子さんは「クッ」と小さく唸った後、
「和紗、伏黒を頼む。私は狗巻を・・・!」
「はい!」
硝子さんは狗巻君の治療に当たり、それと入れ替わるように私が伏黒君に『反転術式』をかけ始めた。
その間にも、負傷者が次々と運び込まれる。
「・・・よし。次!次の負傷者を連れてきて!」
最初に決めた通り、重傷者は硝子さんが受け持ち、
「すぐそっちに行きます!もう少しだけ待っててください!」
私が軽傷者の治療にあたる。
しかし、軽傷といっても「比較して」というだけで、もはや軽傷と言える負傷者はここにはいなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
途中まで治療した人数を数えていたけれど、現場はどんどん混沌としていき、もはや目の前の人を手あたり次第治療するようになっていった。
「!」
鼻の中からツーッと血が流れ出る感覚がして、私は指先で鼻に触れた。
指の先が真っ赤に染まる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
もう既に私の呪力は限界を超えていた。
しかし、負傷者は次々と運び込まれる。
「・・・っ」
私は手の甲で鼻血を拭い去り、
「こっちです・・・!負傷者の方はこっちへ・・・1」
治療を続行した。
【2018年 10月31日 PM23:50】
もうすぐ、日付が変わる。
治療も幾らか落ち着き、野営病院は静けさを取り戻していた。
「・・・・・・」
私は重傷者が眠るベッドを見回っていた。
伊地知さん。
猪野さん。
伏黒君。
狗巻君。
そして、真希ちゃん。
真希ちゃんが運ばれたのは、今から10分前のことだった。
真希ちゃんは全身に重度の火傷を負って運ばれてきた。
それは、真希ちゃんだと識別できないほどの酷いものだった。
硝子さんひとりだけではなく、私も一緒に治療に当たった。
「さすが天与呪縛 だな」
治療しながら、硝子さんが言った。
「普通なら死んでもおかしくないほどの火傷だ。でも、肉体の強さが命を繋ぎとめた」
───そして現在、病院で治療を受けさせるため、救急車やドクターヘリの到着を待っている。
しかし、この未曽有の呪術テロのせいで、東京の医療機関はもはや機能していないようだった。
それでも、これ以上の治療はここでは出来ない。
到着するまで、定期的に『反転術式』をかけ続ける。
「・・・・・・」
私は『反転術式』をかけながら、細々とした寝息を立てる真希ちゃんをみつめた。
身体にも、顔にも、火傷の痕が残っている。
火傷の後は、『反転術式』でも治せないそうだ。
「・・・・・・」
私は自分の無力さを噛み締めるようにギュッと拳を握った。
その時だった。
「ん・・・」
伏黒君がゆっくりと目を覚まし始めた。
夜蛾さんが伏黒君をベッドに降ろすと、硝子さんはすぐさま『反転術式』をかけ始めた。
「でも生きてるよ」
それを聞いて、私はホッと息を吐いた。
そうしていると、夜蛾さんが上着を脱いで、私の肩に羽織らせた。
「あ、ありがとうございます」
「君は見たのか」
「え?」
「伏黒をここへ連れてきたのは・・・」
「・・・・・・」
一瞬、答えるのを戸惑ったけれど、
「・・・宿儺が・・・」
とだけ私は言った。
すると夜蛾さんはハッと息を飲んで、
「何故!?虎杖は・・・」
その時だった。
「家入さん!急いで治療をお願いします!重傷者です!」
と切羽詰まった声と共に、怪我人を背負った補助監督が駆け込んできた。
そちらを振り向いた次の瞬間、私も硝子さんも夜蛾さんも、愕然として一瞬言葉を失った。
「狗巻君・・・!」
補助監督に連れてこられたのは、狗巻君だった。
左腕が切断されて欠損している。
応急処置で止血はしているようだが、その容態は明らかに思わしくない。
硝子さんは「クッ」と小さく唸った後、
「和紗、伏黒を頼む。私は狗巻を・・・!」
「はい!」
硝子さんは狗巻君の治療に当たり、それと入れ替わるように私が伏黒君に『反転術式』をかけ始めた。
その間にも、負傷者が次々と運び込まれる。
「・・・よし。次!次の負傷者を連れてきて!」
最初に決めた通り、重傷者は硝子さんが受け持ち、
「すぐそっちに行きます!もう少しだけ待っててください!」
私が軽傷者の治療にあたる。
しかし、軽傷といっても「比較して」というだけで、もはや軽傷と言える負傷者はここにはいなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
途中まで治療した人数を数えていたけれど、現場はどんどん混沌としていき、もはや目の前の人を手あたり次第治療するようになっていった。
「!」
鼻の中からツーッと血が流れ出る感覚がして、私は指先で鼻に触れた。
指の先が真っ赤に染まる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
もう既に私の呪力は限界を超えていた。
しかし、負傷者は次々と運び込まれる。
「・・・っ」
私は手の甲で鼻血を拭い去り、
「こっちです・・・!負傷者の方はこっちへ・・・1」
治療を続行した。
【2018年 10月31日 PM23:50】
もうすぐ、日付が変わる。
治療も幾らか落ち着き、野営病院は静けさを取り戻していた。
「・・・・・・」
私は重傷者が眠るベッドを見回っていた。
伊地知さん。
猪野さん。
伏黒君。
狗巻君。
そして、真希ちゃん。
真希ちゃんが運ばれたのは、今から10分前のことだった。
真希ちゃんは全身に重度の火傷を負って運ばれてきた。
それは、真希ちゃんだと識別できないほどの酷いものだった。
硝子さんひとりだけではなく、私も一緒に治療に当たった。
「さすが
治療しながら、硝子さんが言った。
「普通なら死んでもおかしくないほどの火傷だ。でも、肉体の強さが命を繋ぎとめた」
───そして現在、病院で治療を受けさせるため、救急車やドクターヘリの到着を待っている。
しかし、この未曽有の呪術テロのせいで、東京の医療機関はもはや機能していないようだった。
それでも、これ以上の治療はここでは出来ない。
到着するまで、定期的に『反転術式』をかけ続ける。
「・・・・・・」
私は『反転術式』をかけながら、細々とした寝息を立てる真希ちゃんをみつめた。
身体にも、顔にも、火傷の痕が残っている。
火傷の後は、『反転術式』でも治せないそうだ。
「・・・・・・」
私は自分の無力さを噛み締めるようにギュッと拳を握った。
その時だった。
「ん・・・」
伏黒君がゆっくりと目を覚まし始めた。