第25話 渋谷事変ー壱ー
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呪骸達に導かれて、私はようやく渋谷料金所に辿り着いた。
夜蛾さんと硝子さんは、料金所の傍の、普段は従業員の休憩所や道路整備の道具を納めるのに使用されているプレハブ小屋にいた。
そのプレハブ小屋の周りを棍棒を持った呪骸が4体ほど警備していた。
プレハブ小屋の前まで行くと、私たちを案内してくれた呪骸達が、
「(警備ご苦労!)」
と言うように右手を額に当てて敬礼した。
それを受けて警備している呪骸達も、
「(送迎ご苦労!)」
と言うように敬礼した。
そして、
「鶴來君、それにフレデリック」
プレハブ小屋から夜蛾さんが出てきて、私の目の前まで駆けつけた(フレデリックはサトルの本名だ)。
「よく駆けつけてくれた」
「硝子さんは」
「さっきまで治療に追われていたが、今は状況は落ち着いている。しかし・・・」
「さっき、ビルが幾つも破壊されるのを見ました」
私は言った。
すると、夜蛾さんは「気づいていたか」というように息を飲んだ。
「きっと沢山の人が巻き込まれてます。じき、ここに沢山の怪我人が運ばれます。私もすぐに準備します」
私が予想外に落ち着いているので、夜蛾さんは驚いている。
しかしすぐにコクリと深く頷いて、
「ああ、頼む」
と言った。
「はい!」
と、私はプレハブ小屋の中へ駈け込もうとしたその時。
「・・・悟のことだが」
夜蛾さんがそう言って、私は足を止めた。
「さっきの電話では話せなかったことだが、悟は・・・」
「封印されたんですね」
夜蛾さんの言葉を先回りして、私は言った。
夜蛾さんはさっきよりも更に驚いて、申し訳なさそうに言った。
「知っていたのか」
「・・・はい」
「・・・すまない。事態を甘く見積もり、初動の判断を誤ったのは我々だ」
「・・・でも、私心配してません」
「・・・・・・」
「だって、あの五条さんだもの。それに・・・」
「・・・・・・」
「みんながいる」
悠仁君が、伏黒君が、野薔薇ちゃんがいる。
それに、真希ちゃん、狗巻君、パンダ君、七海さんもいる。
「きっと、みんなが五条さんを助け出してくれる」
そして、私はみんなを護るために、ここに来た。
(五条さんの大切な仲間を、夢を)
───絶対に、誰一人死なせない。
プレハブ小屋の中は、必要最低限の医療器具と簡易ベッドが数台用意されていて、仕切りのないひとつの空間には布で間に合わせの間仕切りがされていた。
さながら野戦病院の雰囲気だ。
「和紗」
硝子さんは私の姿を見るやいなや、駆けつけてきてギュッと抱きしめてくれた。
きっと、硝子さんも状況を把握しているのだろう。
私の気持ちも。
それをわかって、こうしてくれているのだ。
「・・・・・・」
硝子さんの体温に心が緩んで、涙が零れそうになる。
「来てくれてありがとう。助かるよ」
硝子さんはそう言って、私から身体を離した。
「ゆっくりお茶しようって言いたいところだけど、そうもいかなそうだ。ベッドと備品の準備をしてくれる?」
「はい」
と、私は少し潤んだ目元を拭って頷いた。
そしてふと簡易ベッドに目を遣ると、
「・・・伊地知さん!?それに、猪野さん・・・!」
既に簡易ベッドには伊地知さんと猪野さんのふたりが横たわっていた。
「大丈夫。命に別条はない」
と硝子さんは言った。
「でも、時折苦しそうにしてるから、傍についてなだめてやってくれ」
「はい・・・」
「重傷者にはこのベッドで。軽傷者は仕切りの向う側に待機させる。怪我人が搬送され次第、和紗には彼らの治療を任せる」
「・・・はい」
「ごめん、さすがにちょっと疲れた。また忙しくなる前に、一服してきていい?」
「はい。・・・硝子さん、煙草吸うんですか?」
「うん。久々に解禁」
と硝子さんはイタズラっぽく笑って、外に出た。
私はベッドの傍に寄り伊地知さんと猪野さんの顔を覗き込んだ。
二人とも深く眠っている。
猪野さんの顔は、硝子さんの治療を受けても尚腫れていて赤く皮膚が爛れていた。
そして硝子さんの言ったように、時折苦しそうに唸るので、
「・・・猪野さん」
と、そっとその手を握った。
すると猪野さんは薄っすらと目を開いて、
「・・・和紗ちゃん?」
「・・・大丈夫ですか」
「・・・どうしてここに・・・俺、幻を見てるのかな・・・?」
その言葉に私は小さく微笑む。
すると、猪野さんもホッとしたように微笑んだ。
「・・・でも、幻でも、いいや・・・。和紗ちゃんに、手を握ってもらえるなんて・・・役得・・・。でも、五条サンに、怒られっかな・・・」
と言ってから、再び眠りに落ちた。
今度は安らかに眠っているので、私もホッとしてその手を離した。
その直後。
ガタン
音がして、私はそちらの方を振り返る。
するとそこには。
「・・・悠仁君?」
そう、そこには悠仁君が立っていた。
しかし。
「・・・この姿で会うのは久しいな、饅頭娘」
そう言って、邪悪な笑みを浮かべるその者の名前を、私は呼び直した。
「両面・・・宿儺・・・!」
つづく
夜蛾さんと硝子さんは、料金所の傍の、普段は従業員の休憩所や道路整備の道具を納めるのに使用されているプレハブ小屋にいた。
そのプレハブ小屋の周りを棍棒を持った呪骸が4体ほど警備していた。
プレハブ小屋の前まで行くと、私たちを案内してくれた呪骸達が、
「(警備ご苦労!)」
と言うように右手を額に当てて敬礼した。
それを受けて警備している呪骸達も、
「(送迎ご苦労!)」
と言うように敬礼した。
そして、
「鶴來君、それにフレデリック」
プレハブ小屋から夜蛾さんが出てきて、私の目の前まで駆けつけた(フレデリックはサトルの本名だ)。
「よく駆けつけてくれた」
「硝子さんは」
「さっきまで治療に追われていたが、今は状況は落ち着いている。しかし・・・」
「さっき、ビルが幾つも破壊されるのを見ました」
私は言った。
すると、夜蛾さんは「気づいていたか」というように息を飲んだ。
「きっと沢山の人が巻き込まれてます。じき、ここに沢山の怪我人が運ばれます。私もすぐに準備します」
私が予想外に落ち着いているので、夜蛾さんは驚いている。
しかしすぐにコクリと深く頷いて、
「ああ、頼む」
と言った。
「はい!」
と、私はプレハブ小屋の中へ駈け込もうとしたその時。
「・・・悟のことだが」
夜蛾さんがそう言って、私は足を止めた。
「さっきの電話では話せなかったことだが、悟は・・・」
「封印されたんですね」
夜蛾さんの言葉を先回りして、私は言った。
夜蛾さんはさっきよりも更に驚いて、申し訳なさそうに言った。
「知っていたのか」
「・・・はい」
「・・・すまない。事態を甘く見積もり、初動の判断を誤ったのは我々だ」
「・・・でも、私心配してません」
「・・・・・・」
「だって、あの五条さんだもの。それに・・・」
「・・・・・・」
「みんながいる」
悠仁君が、伏黒君が、野薔薇ちゃんがいる。
それに、真希ちゃん、狗巻君、パンダ君、七海さんもいる。
「きっと、みんなが五条さんを助け出してくれる」
そして、私はみんなを護るために、ここに来た。
(五条さんの大切な仲間を、夢を)
───絶対に、誰一人死なせない。
プレハブ小屋の中は、必要最低限の医療器具と簡易ベッドが数台用意されていて、仕切りのないひとつの空間には布で間に合わせの間仕切りがされていた。
さながら野戦病院の雰囲気だ。
「和紗」
硝子さんは私の姿を見るやいなや、駆けつけてきてギュッと抱きしめてくれた。
きっと、硝子さんも状況を把握しているのだろう。
私の気持ちも。
それをわかって、こうしてくれているのだ。
「・・・・・・」
硝子さんの体温に心が緩んで、涙が零れそうになる。
「来てくれてありがとう。助かるよ」
硝子さんはそう言って、私から身体を離した。
「ゆっくりお茶しようって言いたいところだけど、そうもいかなそうだ。ベッドと備品の準備をしてくれる?」
「はい」
と、私は少し潤んだ目元を拭って頷いた。
そしてふと簡易ベッドに目を遣ると、
「・・・伊地知さん!?それに、猪野さん・・・!」
既に簡易ベッドには伊地知さんと猪野さんのふたりが横たわっていた。
「大丈夫。命に別条はない」
と硝子さんは言った。
「でも、時折苦しそうにしてるから、傍についてなだめてやってくれ」
「はい・・・」
「重傷者にはこのベッドで。軽傷者は仕切りの向う側に待機させる。怪我人が搬送され次第、和紗には彼らの治療を任せる」
「・・・はい」
「ごめん、さすがにちょっと疲れた。また忙しくなる前に、一服してきていい?」
「はい。・・・硝子さん、煙草吸うんですか?」
「うん。久々に解禁」
と硝子さんはイタズラっぽく笑って、外に出た。
私はベッドの傍に寄り伊地知さんと猪野さんの顔を覗き込んだ。
二人とも深く眠っている。
猪野さんの顔は、硝子さんの治療を受けても尚腫れていて赤く皮膚が爛れていた。
そして硝子さんの言ったように、時折苦しそうに唸るので、
「・・・猪野さん」
と、そっとその手を握った。
すると猪野さんは薄っすらと目を開いて、
「・・・和紗ちゃん?」
「・・・大丈夫ですか」
「・・・どうしてここに・・・俺、幻を見てるのかな・・・?」
その言葉に私は小さく微笑む。
すると、猪野さんもホッとしたように微笑んだ。
「・・・でも、幻でも、いいや・・・。和紗ちゃんに、手を握ってもらえるなんて・・・役得・・・。でも、五条サンに、怒られっかな・・・」
と言ってから、再び眠りに落ちた。
今度は安らかに眠っているので、私もホッとしてその手を離した。
その直後。
ガタン
音がして、私はそちらの方を振り返る。
するとそこには。
「・・・悠仁君?」
そう、そこには悠仁君が立っていた。
しかし。
「・・・この姿で会うのは久しいな、饅頭娘」
そう言って、邪悪な笑みを浮かべるその者の名前を、私は呼び直した。
「両面・・・宿儺・・・!」
つづく
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