第25話 渋谷事変ー壱ー
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「もしもし?」
「和紗?今話せる?話せる状況じゃなくても聞いてほしいんだけど」
「え、大丈夫ですけど」
「じゃあ、さっそく学長と替わるから」
「え?え?」
応答するなり一気にそう言われて、私は混乱する。
しばらく間があって、
「突然すまない。私だ。夜蛾だ」
と、電話の向うから低い声が聞こえてきた。
「夜蛾さん」
「君に頼みたいことがあって硝子に連絡を取ってもらった。時間がない。手短に言う」
夜蛾さんは私に心構えする間も与えず言った。
「現在、渋谷で無差別呪術テロが起きている。呪術師、一般人共に死傷者が多数出ている。治療が硝子だけでは追いつかない。君に協力してほしい」
それを聞いて、私は息を飲んだ。
予感は、当たっていたんだ。
(五条さん・・・)
その時、私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、五条さんただひとりのことだった。
「怪我人の程度をこちらで選別して、軽傷者は現場で硝子が治療して直ちに任務へ戻す。重傷者は高専に搬送し、君に治療を頼みたい」
「・・・・・・」
「すまないが、考える猶予はない。すぐにそちらへ迎えを寄越す。今どこにいる?」
「・・・・・・」
五条さんは?
今、何処に?
「鶴來君?」
夜蛾さんが呼びかける。
私は零れそうになる幾つもの問いかけをグッと飲み込んで、
「・・・わかりました」
と、努めて冷静な声で応えた。
「でも私、今渋谷からそう離れてない場所にいるんです。だから高専に向かうより、そちらで硝子さんと一緒に治療にあたった方がいいと思います」
「何っ。しかし・・・ここは決して安全とは言えないが」
「大丈夫です。どこに向えばいいですか?」
それから夜蛾さんに行き先を教えてもらい、電話を切ろうとしたその間際。
「悟は現場の平定にあたっている」
夜蛾さんは言った。
「アイツのことだ。心配することはない」
「・・・・・・」
慰めになっていない。
それは、夜蛾さんもわかっているのだろう。
だけど、そう言うしかないのだ。
「・・・私は大丈夫です。じゃあ、今からそちらに向かいます」
と私は通話を切り、モイちゃんと大野君の顔を見た。
「鶴來ちゃん?」
ただ事ではないことに勘づいて、ふたりは心配そうに私の顔を見返す。
「・・・・・・」
私は自分の鞄の中を手で探った。
『明埜乃舞降鶴乃擬砡 』のために予め作っておいた玉は8個ある。
(今の私が呪力を込めて、それが留まっていられる時間は半日ほど)
呪術テロという事は、この先、呪詛師や呪霊と遭遇する危険性を否定できない。
私は、私自身の呪力とサトルがある。
(『擬砡』は全部ふたりに渡す方が良い)
そう考えながら、私は密かに鞄の中の『擬砡』に『反転術式』の呪力を込めた。
「モイちゃん、大野君」
そして、ふたりに『擬砡』を手渡した。
「この先、命にかかわるような怪我をするようなことがあれば、これを食べて。そして、もしもバケモノに追いかけられて逃げきれないときは、これを投げつけて」
「鶴來ちゃん・・・何言うてんの?」
「早く遠くへ逃げて!ごめんね、私、行かなくちゃ」
そうして、私は踵を返して走り出した。
「鶴來ちゃん!」
「鶴來さん!?」
戸惑う二人の声が聞こえ続けたけれど、私は振り返らず走り続けた。
何も知らない二人を置いて行くことは心苦しかったけれど、連れて行く訳にはいかない。
それに、この周辺はまだ比較的安全なはずだ。今のうちに離れれば危険な目には遭わないはずだ。
(どうか無事で・・・!)
そう祈りながら、私は駆けていく。
向かうのは、首都高速3号渋谷線渋谷料金所。
そこに、夜蛾さんと硝子さんがいる。
「和紗?今話せる?話せる状況じゃなくても聞いてほしいんだけど」
「え、大丈夫ですけど」
「じゃあ、さっそく学長と替わるから」
「え?え?」
応答するなり一気にそう言われて、私は混乱する。
しばらく間があって、
「突然すまない。私だ。夜蛾だ」
と、電話の向うから低い声が聞こえてきた。
「夜蛾さん」
「君に頼みたいことがあって硝子に連絡を取ってもらった。時間がない。手短に言う」
夜蛾さんは私に心構えする間も与えず言った。
「現在、渋谷で無差別呪術テロが起きている。呪術師、一般人共に死傷者が多数出ている。治療が硝子だけでは追いつかない。君に協力してほしい」
それを聞いて、私は息を飲んだ。
予感は、当たっていたんだ。
(五条さん・・・)
その時、私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、五条さんただひとりのことだった。
「怪我人の程度をこちらで選別して、軽傷者は現場で硝子が治療して直ちに任務へ戻す。重傷者は高専に搬送し、君に治療を頼みたい」
「・・・・・・」
「すまないが、考える猶予はない。すぐにそちらへ迎えを寄越す。今どこにいる?」
「・・・・・・」
五条さんは?
今、何処に?
「鶴來君?」
夜蛾さんが呼びかける。
私は零れそうになる幾つもの問いかけをグッと飲み込んで、
「・・・わかりました」
と、努めて冷静な声で応えた。
「でも私、今渋谷からそう離れてない場所にいるんです。だから高専に向かうより、そちらで硝子さんと一緒に治療にあたった方がいいと思います」
「何っ。しかし・・・ここは決して安全とは言えないが」
「大丈夫です。どこに向えばいいですか?」
それから夜蛾さんに行き先を教えてもらい、電話を切ろうとしたその間際。
「悟は現場の平定にあたっている」
夜蛾さんは言った。
「アイツのことだ。心配することはない」
「・・・・・・」
慰めになっていない。
それは、夜蛾さんもわかっているのだろう。
だけど、そう言うしかないのだ。
「・・・私は大丈夫です。じゃあ、今からそちらに向かいます」
と私は通話を切り、モイちゃんと大野君の顔を見た。
「鶴來ちゃん?」
ただ事ではないことに勘づいて、ふたりは心配そうに私の顔を見返す。
「・・・・・・」
私は自分の鞄の中を手で探った。
『
(今の私が呪力を込めて、それが留まっていられる時間は半日ほど)
呪術テロという事は、この先、呪詛師や呪霊と遭遇する危険性を否定できない。
私は、私自身の呪力とサトルがある。
(『擬砡』は全部ふたりに渡す方が良い)
そう考えながら、私は密かに鞄の中の『擬砡』に『反転術式』の呪力を込めた。
「モイちゃん、大野君」
そして、ふたりに『擬砡』を手渡した。
「この先、命にかかわるような怪我をするようなことがあれば、これを食べて。そして、もしもバケモノに追いかけられて逃げきれないときは、これを投げつけて」
「鶴來ちゃん・・・何言うてんの?」
「早く遠くへ逃げて!ごめんね、私、行かなくちゃ」
そうして、私は踵を返して走り出した。
「鶴來ちゃん!」
「鶴來さん!?」
戸惑う二人の声が聞こえ続けたけれど、私は振り返らず走り続けた。
何も知らない二人を置いて行くことは心苦しかったけれど、連れて行く訳にはいかない。
それに、この周辺はまだ比較的安全なはずだ。今のうちに離れれば危険な目には遭わないはずだ。
(どうか無事で・・・!)
そう祈りながら、私は駆けていく。
向かうのは、首都高速3号渋谷線渋谷料金所。
そこに、夜蛾さんと硝子さんがいる。