第25話 渋谷事変ー壱ー
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【同日 PM21:30】
それからも駅周辺は渋谷方面から流れてきた人でどんどん密集していき、運行再開もされないままだった。
なので、私たちはダメ元でバス停に向かった。
やはりバス停には長蛇の列が出来ていて、しばらく並んでバスが来るのを待っていたけれど、待てども待てどもくる気配がないので離脱して、今度はタクシーをつかまえようと大通り沿いを歩き続けた。
時々、稀にタクシーが数台通りかかったけれど、あっさり争奪戦に敗れてしまってなかなかつかまえられない。
「おいっ!割り込むな!つかまえたのは俺だぞ!」
「うるせぇ!」
タクシーをつかまえたとしても、割り込もうとする人が殺到して、小競り合いがあちこちで起きている。
「・・・・・・」
不安と、疲労と、それ付随する苛立ちで殺伐とする周囲の雰囲気に私たちは溜息を吐いた。
そんな時だった。
「鶴來さん!下井さん!大野君!」
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、陵 先生がこちらに向かって走って来ていた。
「陵先生!」
「よかった、無事で・・・」
と、陵先生は息切らしながら私たちの元へ駆けつけた。
「渋谷に行ってるんじゃないかと思ったから・・・」
「陵先生・・・」
私は言った。
「お母様と祐平さんは?」
別れ際、渋谷に行くと言っていた。
すると、陵先生はふるふると首を横に振った。
「・・・連絡がとれない。ずっと電話もメッセージも送ってるけれど、繋がらないし既読にもならない」
そして、不安そうに瞼を伏せた。
こんな状況だ。私たちは下手に励ましの言葉も口にすることが出来なかった。
「渋谷では、一部通信障害が起きてるみたいです・・・」
とだけ、大野君が言うのみだった。
すると、陵先生は顔を上げて言った。
「僕は今から渋谷に向かう」
「陵先生」
「鶴來さん達は、気をつけて帰って」
と、陵先生は私の言葉を遮って、振り返ることなく渋谷方面へと歩き出した。
「・・・・・・」
お母様と祐平さん、そして陵先生の事が気がかりだ。
出来ることなら一緒に行って探してあげたい。
だけど、陵先生は私たちを巻き込むまいと思っているんだ。
私は、ただ遠ざかる陵先生の背中を見送ることしか出来なかった。
「・・・行こう」
とモイちゃんが言って、私たちは再び歩き出した。
そうして歩き続けて20分程経った頃、
プルルル・・・
「もしもしっ」
モイちゃんの電話が鳴った。
電話に出ると、モイちゃんは少し目を潤ませながら話を続けた。
「うん、うん、ウチは大丈夫・・・」
その声は少しばかり安堵の色が伺えた。
おそらく電話の相手はカレシさんなのだろう。
ふと思いついて、私は大野君に尋ねた。
「大野君、お家の人から連絡は?」
「あ、うん。さっきLINEがきたよ。だから、徒歩で帰ってるって伝えたところ」
「そっか・・・」
「鶴來さんは?五条さんに連絡した?五条さん、心配してるんじゃない?」
「・・・・・・」
そういえば、電話はもちろんLINEも来ていない。
何なら、私が帰宅難民になっていると気づいてたら、高速移動で迎えに来るか、伊地知さんの車を迎えに寄越しそうなことをしかねないのに(別にうぬぼれでもないと思うのだけど)。
任務中で、渋谷駅全線が止まっていることを知らないのかもしれない。
「・・・・・・」
ふいに胸騒ぎがした。
(知らない・・・?ううん、もしかして、この状況って)
───五条さんも何かしら巻き込まれてるんじゃ。
プルルルルッ
突然、そこへ私の電話が鳴って、私はハッと我に返った。
「あ、噂をすればホラ」
と大野君が笑う傍で、私はコートのポケットからスマホを取り出した。
だけど、電話をかけてきたのは。
「硝子さん・・・?」
電話をかけてきたのは、五条さんではなく硝子さんだった。
それからも駅周辺は渋谷方面から流れてきた人でどんどん密集していき、運行再開もされないままだった。
なので、私たちはダメ元でバス停に向かった。
やはりバス停には長蛇の列が出来ていて、しばらく並んでバスが来るのを待っていたけれど、待てども待てどもくる気配がないので離脱して、今度はタクシーをつかまえようと大通り沿いを歩き続けた。
時々、稀にタクシーが数台通りかかったけれど、あっさり争奪戦に敗れてしまってなかなかつかまえられない。
「おいっ!割り込むな!つかまえたのは俺だぞ!」
「うるせぇ!」
タクシーをつかまえたとしても、割り込もうとする人が殺到して、小競り合いがあちこちで起きている。
「・・・・・・」
不安と、疲労と、それ付随する苛立ちで殺伐とする周囲の雰囲気に私たちは溜息を吐いた。
そんな時だった。
「鶴來さん!下井さん!大野君!」
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、
「陵先生!」
「よかった、無事で・・・」
と、陵先生は息切らしながら私たちの元へ駆けつけた。
「渋谷に行ってるんじゃないかと思ったから・・・」
「陵先生・・・」
私は言った。
「お母様と祐平さんは?」
別れ際、渋谷に行くと言っていた。
すると、陵先生はふるふると首を横に振った。
「・・・連絡がとれない。ずっと電話もメッセージも送ってるけれど、繋がらないし既読にもならない」
そして、不安そうに瞼を伏せた。
こんな状況だ。私たちは下手に励ましの言葉も口にすることが出来なかった。
「渋谷では、一部通信障害が起きてるみたいです・・・」
とだけ、大野君が言うのみだった。
すると、陵先生は顔を上げて言った。
「僕は今から渋谷に向かう」
「陵先生」
「鶴來さん達は、気をつけて帰って」
と、陵先生は私の言葉を遮って、振り返ることなく渋谷方面へと歩き出した。
「・・・・・・」
お母様と祐平さん、そして陵先生の事が気がかりだ。
出来ることなら一緒に行って探してあげたい。
だけど、陵先生は私たちを巻き込むまいと思っているんだ。
私は、ただ遠ざかる陵先生の背中を見送ることしか出来なかった。
「・・・行こう」
とモイちゃんが言って、私たちは再び歩き出した。
そうして歩き続けて20分程経った頃、
プルルル・・・
「もしもしっ」
モイちゃんの電話が鳴った。
電話に出ると、モイちゃんは少し目を潤ませながら話を続けた。
「うん、うん、ウチは大丈夫・・・」
その声は少しばかり安堵の色が伺えた。
おそらく電話の相手はカレシさんなのだろう。
ふと思いついて、私は大野君に尋ねた。
「大野君、お家の人から連絡は?」
「あ、うん。さっきLINEがきたよ。だから、徒歩で帰ってるって伝えたところ」
「そっか・・・」
「鶴來さんは?五条さんに連絡した?五条さん、心配してるんじゃない?」
「・・・・・・」
そういえば、電話はもちろんLINEも来ていない。
何なら、私が帰宅難民になっていると気づいてたら、高速移動で迎えに来るか、伊地知さんの車を迎えに寄越しそうなことをしかねないのに(別にうぬぼれでもないと思うのだけど)。
任務中で、渋谷駅全線が止まっていることを知らないのかもしれない。
「・・・・・・」
ふいに胸騒ぎがした。
(知らない・・・?ううん、もしかして、この状況って)
───五条さんも何かしら巻き込まれてるんじゃ。
プルルルルッ
突然、そこへ私の電話が鳴って、私はハッと我に返った。
「あ、噂をすればホラ」
と大野君が笑う傍で、私はコートのポケットからスマホを取り出した。
だけど、電話をかけてきたのは。
「硝子さん・・・?」
電話をかけてきたのは、五条さんではなく硝子さんだった。