第25話 渋谷事変ー壱ー
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【同日 PM20:30】
夕方を過ぎてからの『ル・シュクレール』は大盛況の大混雑だった。
何とか乗り切って、無事に開店初日を終えた。
「お疲れさまでした」
店の後片付けを終えて、私たちアルバイトは陵先生たち社員より先に帰ることになった。
「あ~、つっっっかれたぁ」
店を出て、モイちゃんがそう言いながら背伸びをする。
「さっすが代官山やなぁ。オープン初日とかハロウィンとか差し引いても、客の数半端なかったな」
「さすが一等地だよね」
「あ~、お腹減ったわ。このままどっか晩飯食いに行こうや~」
「あ、ごめん。私、帰る」
と私が言うと、モイちゃんは一瞬「え~っ」と不服そうな顔したものの、すぐにハッとして、
「あ、そりゃそうやんな~。愛しい旦那様のところに早よ帰りたいわなぁ」
と、ニヤニヤしつつ言った。
「・・・別に旦那様じゃないもん」
「まだ、な。でも、もう旦那さんみたいなもんやん」
「・・・・・・」
「あ、それにもう鶴來ちゃんじゃなくて、五条ちゃんって呼んだ方がええんかな?」
「もう!からかわないで」
「ごめんごめん~」
そんなことを話しながら、駅に向かって歩いていく。
間もなく夜の9時になるというのに、通りには沢山の人で賑わっていた。
(さすがハロウィン)
と、最初はそう思っていたんだけれど。
駅に近づくにつれて、徐々に異変に気付くことになった。
「うわ、何やこれ」
駅構内に入り切らず、足止めを食っている人が駅周辺に溢れかえっている。
それだけじゃない。
人がどこからか流れるようにやって来て次々と増えていく。
「これは・・・」
「何なん、駅に入られへんの?電車は?」
ただ事ではないことが起きている。
そのことに気が付いて、私たちは不安げに辺りを見回した。
その時だった。
拡声器を手にした駅員がやって来て、
「大変ご迷惑をかけて申し訳ありません。現在渋谷駅にてトラブルがあり、当社沿線を含めた全ての沿線で運転を停止しております。トラブルの解消原因究明まで、ご迷惑おかけしますが、お客様の安全確保のためご理解下さいますようお願いします」
と、アナウンスした。
しかし理解するどころか、人々の騒めきは一層大きくなり、不安と混乱が広がっていく。
「ちょっとちょっと!」
構内へ引き下がる駅員をモイちゃんが引き留めた。
「トラブルって何があったん?再開の目処は?」
同じ質問をもう何度も繰り返しされているのだろう。
駅員は疲れ切った表情で答えた。
「現場も混乱していて、連絡も来ずこちらも何が起きているのかわかっていないんです。なので、現在目処もたっておりません」
それだけ答えると、駅員は半ば振り切るようにして立ち去っていった。
モイちゃんは愕然として呟く。
「なんや、それ!ちゃんと答えぇや!」
「モイちゃん、落ち着いて」
と、私がモイちゃんを諫めている傍らで、
「ネットニュースには渋谷駅全線停止ってことしかあがってない。情報が錯綜してるみたいだ」
と、大野君がスマホで情報収集していた。
「電車が動かないとなると、バスかタクシーか・・・」
と言いながらも、それもおそらく困難だろうという事は薄々気づいていた。
おそらくバスも路線が混乱しているし、全ての乗客を乗せるのは無理だろう。タクシーもおそらく。
(最悪徒歩で帰宅するしか・・・)
でも、問題はそれだけじゃない。
一体、渋谷で何が起こっているのか。
この代官山も渋谷からそう遠くはない。
早くここを離れなければ。
それは、勘だった。
限りなく、本能に近い、勘。
そんなことを考えてる私の隣で、大野君は情報収集を続けている。
「Twitterでも、確証はないけれど色んな情報が上がってる。テロだとか・・・通り魔だとか・・・」
「そんなんやばいやん、ここも。早よ離れ・・・」
「え!?」
すると突然、大野君がスマホをスクロールする指を止めた。
「何だこれ・・・合成かな?」
そして、その画面を私たちに向けた。
「・・・・・」
その画面には、人影ひとつもないスクランブル交差点という、ありえない風景が映っていた。
夕方を過ぎてからの『ル・シュクレール』は大盛況の大混雑だった。
何とか乗り切って、無事に開店初日を終えた。
「お疲れさまでした」
店の後片付けを終えて、私たちアルバイトは陵先生たち社員より先に帰ることになった。
「あ~、つっっっかれたぁ」
店を出て、モイちゃんがそう言いながら背伸びをする。
「さっすが代官山やなぁ。オープン初日とかハロウィンとか差し引いても、客の数半端なかったな」
「さすが一等地だよね」
「あ~、お腹減ったわ。このままどっか晩飯食いに行こうや~」
「あ、ごめん。私、帰る」
と私が言うと、モイちゃんは一瞬「え~っ」と不服そうな顔したものの、すぐにハッとして、
「あ、そりゃそうやんな~。愛しい旦那様のところに早よ帰りたいわなぁ」
と、ニヤニヤしつつ言った。
「・・・別に旦那様じゃないもん」
「まだ、な。でも、もう旦那さんみたいなもんやん」
「・・・・・・」
「あ、それにもう鶴來ちゃんじゃなくて、五条ちゃんって呼んだ方がええんかな?」
「もう!からかわないで」
「ごめんごめん~」
そんなことを話しながら、駅に向かって歩いていく。
間もなく夜の9時になるというのに、通りには沢山の人で賑わっていた。
(さすがハロウィン)
と、最初はそう思っていたんだけれど。
駅に近づくにつれて、徐々に異変に気付くことになった。
「うわ、何やこれ」
駅構内に入り切らず、足止めを食っている人が駅周辺に溢れかえっている。
それだけじゃない。
人がどこからか流れるようにやって来て次々と増えていく。
「これは・・・」
「何なん、駅に入られへんの?電車は?」
ただ事ではないことが起きている。
そのことに気が付いて、私たちは不安げに辺りを見回した。
その時だった。
拡声器を手にした駅員がやって来て、
「大変ご迷惑をかけて申し訳ありません。現在渋谷駅にてトラブルがあり、当社沿線を含めた全ての沿線で運転を停止しております。トラブルの解消原因究明まで、ご迷惑おかけしますが、お客様の安全確保のためご理解下さいますようお願いします」
と、アナウンスした。
しかし理解するどころか、人々の騒めきは一層大きくなり、不安と混乱が広がっていく。
「ちょっとちょっと!」
構内へ引き下がる駅員をモイちゃんが引き留めた。
「トラブルって何があったん?再開の目処は?」
同じ質問をもう何度も繰り返しされているのだろう。
駅員は疲れ切った表情で答えた。
「現場も混乱していて、連絡も来ずこちらも何が起きているのかわかっていないんです。なので、現在目処もたっておりません」
それだけ答えると、駅員は半ば振り切るようにして立ち去っていった。
モイちゃんは愕然として呟く。
「なんや、それ!ちゃんと答えぇや!」
「モイちゃん、落ち着いて」
と、私がモイちゃんを諫めている傍らで、
「ネットニュースには渋谷駅全線停止ってことしかあがってない。情報が錯綜してるみたいだ」
と、大野君がスマホで情報収集していた。
「電車が動かないとなると、バスかタクシーか・・・」
と言いながらも、それもおそらく困難だろうという事は薄々気づいていた。
おそらくバスも路線が混乱しているし、全ての乗客を乗せるのは無理だろう。タクシーもおそらく。
(最悪徒歩で帰宅するしか・・・)
でも、問題はそれだけじゃない。
一体、渋谷で何が起こっているのか。
この代官山も渋谷からそう遠くはない。
早くここを離れなければ。
それは、勘だった。
限りなく、本能に近い、勘。
そんなことを考えてる私の隣で、大野君は情報収集を続けている。
「Twitterでも、確証はないけれど色んな情報が上がってる。テロだとか・・・通り魔だとか・・・」
「そんなんやばいやん、ここも。早よ離れ・・・」
「え!?」
すると突然、大野君がスマホをスクロールする指を止めた。
「何だこれ・・・合成かな?」
そして、その画面を私たちに向けた。
「・・・・・」
その画面には、人影ひとつもないスクランブル交差点という、ありえない風景が映っていた。