第25話 渋谷事変ー壱ー
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それを聞いて、今度は五条さんがキョトンとする。
「なんで?バイトだったっけ?」
「バイトはバイトですけど。助っ人に行くんです、陵 先生のお店の。今日がオープンの日だから」
「ああ」
五条さんは納得したように頷いた。
「そういや前に話してたね。そっか、今日だったか」
「はい」
「慶太によろしく言っといてよ」
「はい」
それから家を出る時間になって、五条さんが私を玄関で見送る。
「じゃあ、いってきます」
「うん、気をつけてね」
「五条さんも」
「うん」
「・・・・・・」
「ん?行かないの?」
「あの、五条さん」
私は五条さんの顔を見上げてコソッと言った。
「五条さんはハロウィンに気乗してないみたいだけど、帰ってきた時、私にきいてみてくださいね」
「ん?何を?」
「その・・・『トリック・オア・トリート』って」
すると五条さんは目をパチクリさせた後、ニヤッと笑った。
「イタズラされたいの?」
「ちがいます」
私はキッパリ言った。
「私はちゃんと用意してますから、お菓子!」
「・・・ちぇっ」
「・・・どうして舌打ちなんですか」
「気のせいだよ~。楽しみにしてる」
「はい、楽しみにしてください!」
いってきます、と私はドアを開けた。
そして外を出て、もう一度振り返る。
閉じていくドアの間から、五条さんが微笑みながら、私に向かってヒラヒラと手を振る姿が見えた。
私も手を振り返した後、ドアはゆっくりと閉まっていった。
(さっ、今日も一日頑張ろ!)
そんな事を考えながら、私は身につけているネックレスのチャームを触る。
キラキラと光る蒼い石。
五条さんからもらった、私の大切な宝物。
触れると、自然と微笑みが浮かぶ。
それから私は前を向いて歩き出した。
───鎌倉旅行の後。しばらくして私はアパートを解約して、再び五条さんのマンションで暮らすことにした。
奇子らによる襲撃を警戒してという事もあるけれど、それ以上に出来るだけ一緒にいたいからというのが、五条さんと私のふたりの総意だった。
もちろん警戒は今も続けているのだけれど、以前よりもそのレベルは下がって、五条さんの高速移動が可能な範囲内では、私はひとりでも行動出来る様になった。
陵先生が勤めるお店、『ル・シュクレール』もその範囲内だった。
【同日 PM16:00】
「ル・シュクレールです。本日オープンしましたー。よろしくお願いしまーす」
代官山駅前でビラ配りをする。
通りを行き交う人々のほとんどが仮装姿で、平日の日暮れ前だというのに、街はハロウィンの雰囲気で盛り上がっている。
「本日オープンしました、ル・シュクレールです。オープン記念とハロウィンのイベントを兼ねて、クッキーをプレゼントしてます。是非お立ち寄りください」
助っ人バイトに雇われたのは、私、そしてモイちゃんと大野君だ。
「っていうかぁ」
一緒にチラシ配りしているモイちゃんがふと大野君の方を振り向いて言った。
「アンタ、よその店手伝うとる場合なんか?自分とこの店は?」
すると、大野君もクルリとモイちゃんの方を振り向き言った。
「父さんが手伝いに行きなさいって言ってくれたんだ。よその店を手伝うことで学ぶことがあるだろうって」
「ふーん。そうなん」
自分から尋ねておいて、モイちゃんは興味なさそうに聞き流した。
その間にも、私はせっせとチラシを配る。
「洋菓子店のル・シュクレールです。本日オープンしました。よろしくお願いします」
と、目の前を横切ろうとする大学生ぐらいの男の人にチラシを差し出した。
その人はチラシを受け取ると、ピタリと私の前で立ち止まり、
「和紗ちゃん?」
と、何故か私の名前を呼んだ。
私は驚いてその人の顔を見返した。
茶髪にピアスのどこか軟派な雰囲気のその人は、嬉々とした様子で関西訛りで言った。
「俺俺!俺、祐平!覚えてへん?」
「え、えっと」
「慶太兄ちゃんの弟の」
「あ」
「なんで?バイトだったっけ?」
「バイトはバイトですけど。助っ人に行くんです、
「ああ」
五条さんは納得したように頷いた。
「そういや前に話してたね。そっか、今日だったか」
「はい」
「慶太によろしく言っといてよ」
「はい」
それから家を出る時間になって、五条さんが私を玄関で見送る。
「じゃあ、いってきます」
「うん、気をつけてね」
「五条さんも」
「うん」
「・・・・・・」
「ん?行かないの?」
「あの、五条さん」
私は五条さんの顔を見上げてコソッと言った。
「五条さんはハロウィンに気乗してないみたいだけど、帰ってきた時、私にきいてみてくださいね」
「ん?何を?」
「その・・・『トリック・オア・トリート』って」
すると五条さんは目をパチクリさせた後、ニヤッと笑った。
「イタズラされたいの?」
「ちがいます」
私はキッパリ言った。
「私はちゃんと用意してますから、お菓子!」
「・・・ちぇっ」
「・・・どうして舌打ちなんですか」
「気のせいだよ~。楽しみにしてる」
「はい、楽しみにしてください!」
いってきます、と私はドアを開けた。
そして外を出て、もう一度振り返る。
閉じていくドアの間から、五条さんが微笑みながら、私に向かってヒラヒラと手を振る姿が見えた。
私も手を振り返した後、ドアはゆっくりと閉まっていった。
(さっ、今日も一日頑張ろ!)
そんな事を考えながら、私は身につけているネックレスのチャームを触る。
キラキラと光る蒼い石。
五条さんからもらった、私の大切な宝物。
触れると、自然と微笑みが浮かぶ。
それから私は前を向いて歩き出した。
───鎌倉旅行の後。しばらくして私はアパートを解約して、再び五条さんのマンションで暮らすことにした。
奇子らによる襲撃を警戒してという事もあるけれど、それ以上に出来るだけ一緒にいたいからというのが、五条さんと私のふたりの総意だった。
もちろん警戒は今も続けているのだけれど、以前よりもそのレベルは下がって、五条さんの高速移動が可能な範囲内では、私はひとりでも行動出来る様になった。
陵先生が勤めるお店、『ル・シュクレール』もその範囲内だった。
【同日 PM16:00】
「ル・シュクレールです。本日オープンしましたー。よろしくお願いしまーす」
代官山駅前でビラ配りをする。
通りを行き交う人々のほとんどが仮装姿で、平日の日暮れ前だというのに、街はハロウィンの雰囲気で盛り上がっている。
「本日オープンしました、ル・シュクレールです。オープン記念とハロウィンのイベントを兼ねて、クッキーをプレゼントしてます。是非お立ち寄りください」
助っ人バイトに雇われたのは、私、そしてモイちゃんと大野君だ。
「っていうかぁ」
一緒にチラシ配りしているモイちゃんがふと大野君の方を振り向いて言った。
「アンタ、よその店手伝うとる場合なんか?自分とこの店は?」
すると、大野君もクルリとモイちゃんの方を振り向き言った。
「父さんが手伝いに行きなさいって言ってくれたんだ。よその店を手伝うことで学ぶことがあるだろうって」
「ふーん。そうなん」
自分から尋ねておいて、モイちゃんは興味なさそうに聞き流した。
その間にも、私はせっせとチラシを配る。
「洋菓子店のル・シュクレールです。本日オープンしました。よろしくお願いします」
と、目の前を横切ろうとする大学生ぐらいの男の人にチラシを差し出した。
その人はチラシを受け取ると、ピタリと私の前で立ち止まり、
「和紗ちゃん?」
と、何故か私の名前を呼んだ。
私は驚いてその人の顔を見返した。
茶髪にピアスのどこか軟派な雰囲気のその人は、嬉々とした様子で関西訛りで言った。
「俺俺!俺、祐平!覚えてへん?」
「え、えっと」
「慶太兄ちゃんの弟の」
「あ」