第24話 藍色好きさ
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「え・・・」
私は五条さんを振り返る。
すると五条さんは私の方へ手を伸ばし、汗で額に張り付く前髪を指先で払いながら、
「和紗の中が気持ち良すぎて、無下限のゴムすんの、忘れそうになっちゃった」
と言って、たはーっと笑った。
その言葉に、私はギョッと目を剥く。
「!!??」
「あ、安心して。忘れてたけどギリギリのとこでちゃんとしたから」
「〜〜〜っっ、そういう・・・っ」
「ん?」
「そういうデリカシーのない言い方やめてくださいっ!」
私はガバッと起き上がって言った。
「さ、最中も、私は、はっ、初めてでそれだけでいっぱいいっぱいなのに、ネチネチネチネチと・・・!」
「ヤダなぁ。あれも言葉責めって行為のひとつじゃない」
「ことっ!?と、とにかく、少しは私のことも慮ってくださいっ」
それに、と私は付け加えて言った。
「それに・・・顔が見えないのは、嫌」
「・・・・・・」
五条さんは一瞬キョトンとした後、
「じゃあ・・・」
私を両腕で引き寄せると、胡座をかいたその上に向き合うように座らせた。
「これで、あとは黙っていればいい?」
「・・・少しくらいは、別に」
「ん・・・」
そうして、五条さんは私の首筋に顔を埋めて、私は五条さんの首に両腕を回した。
───この時の私は、もう何もかも忘れていたと思う。
どうでもいいなんて言わないでって、自分で五条さんに言ったのに。
『糠田が森』のことも。
『つるぎ庵』のことも。
『あけづる』のことも。
五条さんを好きということ以外は、どうでもいいなんて思ってしまった。
ずっと、こうしていたい。
「すき・・・悟さん・・・」
そう夢中で呟いた後、私は意識を手放し深い眠りに落ちた。
「・・・ん」
目を覚ますと、真っ先に眠っている五条さんの顔が見えた。
長い睫毛をふせて、穏やかな寝息を立てる五条さんの表情は、なんだか幼く見えた。
(五条さんでも眠るんだ)
なんて当たり前のことに感動しながら、ジッと見つめ続けた。
そんな無防備な寝顔を見ていると、この人が『最強』だなんて呼ばれていることが、信じられなくなってくる。
私の今目の前で眠るこの人は、性格が悪くて、子どもっぽくて、甘い物が好きで、とびきり可愛くて、ただただ普通の、私の愛しい人だ。
「・・・・・・」
それなのに、その背中に背負っているものを思うと、なぜか涙が滲んで来て溢れた。
私は目を擦って顔を上げた。
僅かに開いている雨戸から、空の色が見える。
空が藍色に染められている。
惚けた頭では、これから訪れようとするのが、朝なのか夜なのかどちらなのかわからない。
でも、それがいいと思った。
このまま朝も夜もない場所で、ずっとふたりでいたいと思った。
「・・・・・・」
部屋に籠った冷気にひとつ身震いしてから、私は再び布団の中に戻った。
愛しい人の眠る顔を見つめながら思う。
今だけは、何もかも忘れて、この人のことだけ考えていよう。
そう、この藍色が消えるまでは。
そうして、私は五条さんの懐に潜り込んでいつのまにか再び眠っていた。
つづく
私は五条さんを振り返る。
すると五条さんは私の方へ手を伸ばし、汗で額に張り付く前髪を指先で払いながら、
「和紗の中が気持ち良すぎて、無下限のゴムすんの、忘れそうになっちゃった」
と言って、たはーっと笑った。
その言葉に、私はギョッと目を剥く。
「!!??」
「あ、安心して。忘れてたけどギリギリのとこでちゃんとしたから」
「〜〜〜っっ、そういう・・・っ」
「ん?」
「そういうデリカシーのない言い方やめてくださいっ!」
私はガバッと起き上がって言った。
「さ、最中も、私は、はっ、初めてでそれだけでいっぱいいっぱいなのに、ネチネチネチネチと・・・!」
「ヤダなぁ。あれも言葉責めって行為のひとつじゃない」
「ことっ!?と、とにかく、少しは私のことも慮ってくださいっ」
それに、と私は付け加えて言った。
「それに・・・顔が見えないのは、嫌」
「・・・・・・」
五条さんは一瞬キョトンとした後、
「じゃあ・・・」
私を両腕で引き寄せると、胡座をかいたその上に向き合うように座らせた。
「これで、あとは黙っていればいい?」
「・・・少しくらいは、別に」
「ん・・・」
そうして、五条さんは私の首筋に顔を埋めて、私は五条さんの首に両腕を回した。
───この時の私は、もう何もかも忘れていたと思う。
どうでもいいなんて言わないでって、自分で五条さんに言ったのに。
『糠田が森』のことも。
『つるぎ庵』のことも。
『あけづる』のことも。
五条さんを好きということ以外は、どうでもいいなんて思ってしまった。
ずっと、こうしていたい。
「すき・・・悟さん・・・」
そう夢中で呟いた後、私は意識を手放し深い眠りに落ちた。
「・・・ん」
目を覚ますと、真っ先に眠っている五条さんの顔が見えた。
長い睫毛をふせて、穏やかな寝息を立てる五条さんの表情は、なんだか幼く見えた。
(五条さんでも眠るんだ)
なんて当たり前のことに感動しながら、ジッと見つめ続けた。
そんな無防備な寝顔を見ていると、この人が『最強』だなんて呼ばれていることが、信じられなくなってくる。
私の今目の前で眠るこの人は、性格が悪くて、子どもっぽくて、甘い物が好きで、とびきり可愛くて、ただただ普通の、私の愛しい人だ。
「・・・・・・」
それなのに、その背中に背負っているものを思うと、なぜか涙が滲んで来て溢れた。
私は目を擦って顔を上げた。
僅かに開いている雨戸から、空の色が見える。
空が藍色に染められている。
惚けた頭では、これから訪れようとするのが、朝なのか夜なのかどちらなのかわからない。
でも、それがいいと思った。
このまま朝も夜もない場所で、ずっとふたりでいたいと思った。
「・・・・・・」
部屋に籠った冷気にひとつ身震いしてから、私は再び布団の中に戻った。
愛しい人の眠る顔を見つめながら思う。
今だけは、何もかも忘れて、この人のことだけ考えていよう。
そう、この藍色が消えるまでは。
そうして、私は五条さんの懐に潜り込んでいつのまにか再び眠っていた。
つづく
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