第24話 藍色好きさ
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(1991年、2歳、90センチ・・・。1992年、3歳、96センチ・・・)
と心の中で読み上げながら、ふと思った。
(・・・『すぐる』って・・・)
どこかで聞いたことがある?
(・・・いやいや。『すぐる』なんてよくある名前だし・・・)
でも、何故か胸がざわざわする。
私は、何か大事なことを忘れているのだろうか。
「・・・・・・」
その『何か』を思い出そうとしていると、今、目にしている柱に刻まれた横線の印が、別の何かに見えてきた。
(・・・傷跡・・・)
それが何か。
それは。
「お先でした~」
と、突然耳元に囁かれて、
「わぁっ!?」
私は驚き飛びのいた。
「そんなにビックリしなくても。こっちがビックリするよ」
振り向くと、お風呂から上がってきた五条さんがいた。
もはやサングラスはかけていない。
風呂上がりのために、白い肌はほんのり紅潮していて、うっすら汗ばんでいる。
その熱に乗って、石鹸の香りが私の鼻先をくすぐる。
「・・・・・・」
おまけに、浴衣姿で妙に色っぽい。
私は内心ドキドキしながら、五条さんの姿をみつめた。
そんな私の心を、五条さんは気づいているのかいないのか、それとも気づかないふりをしているのか。
ニッコリしながら、私に向かって言った。
「和紗も入って来なよ。和紗の浴衣も脱衣所に置いてあるよ」
「は、はい・・・」
私はギクシャクしながら立ち上がって、
「そ、それではお風呂、いいいただいてきます」
と、部屋を出てピシャリと襖を閉めた。
と、次の瞬間。
(あぁぁぁぁあああ~~~っ。どうしたらいいのぉおおぉ〜〜〜っ)
私は両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ。
(いや、もうどうしようもない・・・)
しかし、心臓が振り切れて千切れてしまいそうなほど、早く激しく鼓動している。
(と、取り合えず、お風呂に・・・)
心臓が千切れてこぼれないように、私は胸元を押さえながら浴室に向かった。
浴室は床も天井も壁も湯船も、全面檜張りのお風呂だ。
檜の香りと程よい湯加減のおかげで、幾らかは緊張感がほぐれていった。
「・・・・・・」
湯船に浸かりながら天井を見上げる。
ボーっと頭がのぼせているのは、お湯のせいなのか。
それとも、これから起こる未知の出来事への漠然とした不安のせいなのか。
のぼせたせいか、身体がずっと浮遊しているような感覚で、緊張感が緩んだ代わりに現実感も次第に無くなっていった。
「・・・・・・」
湯船から上がり、浴室を出る。
濡れた身体を入念に拭き上げて、その上に浴衣を身に着ける。
そこでふと、姿見の鏡に目を遣った。
「・・・・・・」
胸元に、五条さんの瞳と同じ色の宝石が輝いている。
私は女なんだ。
現実感のない中で、肌の上の輝きが、そのことだけを強く意識させた。
階段を上がり部屋に戻ると、畳には布団が二組、既にピッタリとくっついて敷かれていた。
その布団の上で、五条さんはこちらに背を向けて足を崩して座っている。
「・・・・・・」
浴衣の衿からのぞくうなじの美しさに見とれていたら、五条さんがゆっくりとこちらを振り向いた。
視線がぶつかると、唇にニッと笑みを浮かべる。
そして、腕を伸ばして私の手首をつかむと、そのままグイっと引っ張った。
「あ・・・」
引き寄せられて私は、膝から布団の上に倒れ込みそうになる。
だけど、五条さんがそれを受け止めて、器用に私の身体を反転させて自分の膝の上に抱きかかえる態勢にさせた。
「・・・・・・」
五条さんは優しく目をすがめて、愛おしむように私をみつめながら、ゆっくりと顔を近づける。
そうして互いの鼻先がくっつくほど近づくと、
「好きだよ」
と言った。
片手は私を抱きかかえたまま、もう片方の手は私の輪郭に添える。
私は気づく。
キスする合図。
そんなクセがあることを、五条さんは気づいてるのかな?
気づいてないといいな。
気づいてるのは、私だけがいいな。
私はそっと目を閉じる。
もう何もこわくない。
だって、この人は私に全てを教えてくれた人。
そして、私が全てを捧げた人だから。
ひとりの人を思うことの、こんなにも深い、愛しさと哀しさを。
つづく
※14ページからは、踏み込んだ表現のラヴシーンがございます。
18歳未満の方、そうしたものが苦手な方はこのままページを閉じてください。
この先のページを読まなくても、今後の展開に何の支障もありません。
読まれる方は、色々と分別ある大人の方と思われるので、色々ツッコミどころはありますが割り切って楽しんで頂けるようお願いします。
と心の中で読み上げながら、ふと思った。
(・・・『すぐる』って・・・)
どこかで聞いたことがある?
(・・・いやいや。『すぐる』なんてよくある名前だし・・・)
でも、何故か胸がざわざわする。
私は、何か大事なことを忘れているのだろうか。
「・・・・・・」
その『何か』を思い出そうとしていると、今、目にしている柱に刻まれた横線の印が、別の何かに見えてきた。
(・・・傷跡・・・)
それが何か。
それは。
「お先でした~」
と、突然耳元に囁かれて、
「わぁっ!?」
私は驚き飛びのいた。
「そんなにビックリしなくても。こっちがビックリするよ」
振り向くと、お風呂から上がってきた五条さんがいた。
もはやサングラスはかけていない。
風呂上がりのために、白い肌はほんのり紅潮していて、うっすら汗ばんでいる。
その熱に乗って、石鹸の香りが私の鼻先をくすぐる。
「・・・・・・」
おまけに、浴衣姿で妙に色っぽい。
私は内心ドキドキしながら、五条さんの姿をみつめた。
そんな私の心を、五条さんは気づいているのかいないのか、それとも気づかないふりをしているのか。
ニッコリしながら、私に向かって言った。
「和紗も入って来なよ。和紗の浴衣も脱衣所に置いてあるよ」
「は、はい・・・」
私はギクシャクしながら立ち上がって、
「そ、それではお風呂、いいいただいてきます」
と、部屋を出てピシャリと襖を閉めた。
と、次の瞬間。
(あぁぁぁぁあああ~~~っ。どうしたらいいのぉおおぉ〜〜〜っ)
私は両手で顔を覆ってその場にしゃがみ込んだ。
(いや、もうどうしようもない・・・)
しかし、心臓が振り切れて千切れてしまいそうなほど、早く激しく鼓動している。
(と、取り合えず、お風呂に・・・)
心臓が千切れてこぼれないように、私は胸元を押さえながら浴室に向かった。
浴室は床も天井も壁も湯船も、全面檜張りのお風呂だ。
檜の香りと程よい湯加減のおかげで、幾らかは緊張感がほぐれていった。
「・・・・・・」
湯船に浸かりながら天井を見上げる。
ボーっと頭がのぼせているのは、お湯のせいなのか。
それとも、これから起こる未知の出来事への漠然とした不安のせいなのか。
のぼせたせいか、身体がずっと浮遊しているような感覚で、緊張感が緩んだ代わりに現実感も次第に無くなっていった。
「・・・・・・」
湯船から上がり、浴室を出る。
濡れた身体を入念に拭き上げて、その上に浴衣を身に着ける。
そこでふと、姿見の鏡に目を遣った。
「・・・・・・」
胸元に、五条さんの瞳と同じ色の宝石が輝いている。
私は女なんだ。
現実感のない中で、肌の上の輝きが、そのことだけを強く意識させた。
階段を上がり部屋に戻ると、畳には布団が二組、既にピッタリとくっついて敷かれていた。
その布団の上で、五条さんはこちらに背を向けて足を崩して座っている。
「・・・・・・」
浴衣の衿からのぞくうなじの美しさに見とれていたら、五条さんがゆっくりとこちらを振り向いた。
視線がぶつかると、唇にニッと笑みを浮かべる。
そして、腕を伸ばして私の手首をつかむと、そのままグイっと引っ張った。
「あ・・・」
引き寄せられて私は、膝から布団の上に倒れ込みそうになる。
だけど、五条さんがそれを受け止めて、器用に私の身体を反転させて自分の膝の上に抱きかかえる態勢にさせた。
「・・・・・・」
五条さんは優しく目をすがめて、愛おしむように私をみつめながら、ゆっくりと顔を近づける。
そうして互いの鼻先がくっつくほど近づくと、
「好きだよ」
と言った。
片手は私を抱きかかえたまま、もう片方の手は私の輪郭に添える。
私は気づく。
キスする合図。
そんなクセがあることを、五条さんは気づいてるのかな?
気づいてないといいな。
気づいてるのは、私だけがいいな。
私はそっと目を閉じる。
もう何もこわくない。
だって、この人は私に全てを教えてくれた人。
そして、私が全てを捧げた人だから。
ひとりの人を思うことの、こんなにも深い、愛しさと哀しさを。
つづく
※14ページからは、踏み込んだ表現のラヴシーンがございます。
18歳未満の方、そうしたものが苦手な方はこのままページを閉じてください。
この先のページを読まなくても、今後の展開に何の支障もありません。
読まれる方は、色々と分別ある大人の方と思われるので、色々ツッコミどころはありますが割り切って楽しんで頂けるようお願いします。