第24話 藍色好きさ
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すると次の瞬間、
「きゃっ!?」
五条さんは私の両肩を掴んで、ガバッと勢いよく身体を引き離した。
驚いて五条さんの顔を見上げたら、
「いやいやいやいやいやいや」
と、五条さんはブンブンとかぶりを振っている。
「五条さん?」
何やってんの、と呆気に取られながら私が呼びかけると、五条さんはピタッと止まってこう言った。
「今日はもうじゅうぶん楽しかったでしょ。そんなワガママ言わないの。帰るよ」
「・・・・・・」
「ほら、帰るって言ってもどうせ同じ所に帰るんだし。帰っても一緒にいられるし」
「・・・・・・」
「・・・あのさ、僕、本当にこないだのこと反省してるんだよ?それはもうマリアナ海溝よりも深く!」
「・・・・・・」
「自分のマンションなら自制が利くけど、お泊りだとさ、非日常だし、どうしても舞い上がっちゃうしさ、タカ外れちゃいそうだしさ・・・」
「・・・・・・」
この後も、五条さんはひたすらブツブツ何かつぶやいている。
この間、私は一言も発していない。
五条さんも私にというよりも、自分自身に言い聞かせているようだった。
(でも・・・やじろべえかっていうくらいに理性と本能の間であからさまに揺れ動いてる・・・!)
なので、私は思い切って言ってみた。
「・・・いいんですよ?」
すると更に次の瞬間、
「ひゃあ!?」
五条さんは今度は勢いよくガシッと私の手を掴むと、そのまま猛スピードで走り出した。
引っ張られるようにして、私も走る羽目になる。
「ど、どこ行くんですか!?」
という私の問いかけに、
「別荘」
とだけ、切羽詰まったように五条さんは答えた。
「べ、別荘って・・・」
と戸惑う私を無言で引きつれて、五条さんは沿道まで来てタクシーを拾った。そのまま押し込めるように私を乗せると、自らも飛び込むように乗り込んだ。
そして、運転手さんに向かって行き先を告げた。
「極楽寺まで!」
こうして、五条家別荘に到着するまであっという間の出来事だった。
展開のあまりものスピード感についていけず、私が自分の言動を後悔したのは、別荘の玄関に入ってからのことだった。
(私・・・すごく軽はずみなことを言ったのでは!?)
玄関で立ち尽くしていると、五条さんが声を掛けてきた。
「ささっ、遠慮なく上がってよ」
五条さんはというと、マリアナ海溝より深い反省はどこへやら、すっかり舞い上がった様子でさっさと靴を脱いで上がり框に登っている。
「・・・あの、五条さん。私やっぱり・・・」
「ん?」
「歯ブラシとか着替えとか用意してないし・・・」
「ダイジョブダイジョブ!いつでも利用できるようにお手伝いが随時掃除に来て、アメニティも、浴衣だけど着替えも、使い捨ての下着も用意してくれてるから」
「・・・そ、そう・・・ですか」
「あ、誤解されたくないから言っとくけど、僕がここに来たの子どもの頃以来で、誰も連れてきたことないからね」
「・・・・・・」
別にそんなことは気にしてないんだけど、すっかり外堀を埋められたようで、もう取り消せないことを悟った。
「お、おじゃまします!」
私は覚悟を決めて、靴を脱ぎ上がり框に登った。
別荘と聞いて、てっきりししおどしの音が響き渡るような日本庭園や、宴会が出来るような広い畳の部屋があるような、そんな豪華絢爛な日本式家屋を想像していたのだけれど。
実際の別荘はこじんまりとした古民家で、どこか懐かしさを憶える近隣の風景とよく馴染んでいる。
緩やかな坂の上に別荘は建っていて、二階に上がると、夜の海の水平線が見えた。
「・・・・・・」
窓辺に立ってその眺めをボーっと見つめていたら、
「今、風呂溜めてるから」
と、一階から五条さんが上がってきた。
「あと10分もしたら入れるよ」
「あ、ありがとうございます」
「もちろん一緒に入るでしょ?」
「・・・・・・」
「冗談だって。そんなにらまないでよ」
「・・・冗談にきこえないんですよ、五条さんが言うと。・・・あ」
言葉の途中で、ふと部屋の柱に目が付いた。
部屋の中心を支える太いその柱には、何かの目印らしい3センチほどの横線と、年号と日付が彫られていた。
「きゃっ!?」
五条さんは私の両肩を掴んで、ガバッと勢いよく身体を引き離した。
驚いて五条さんの顔を見上げたら、
「いやいやいやいやいやいや」
と、五条さんはブンブンとかぶりを振っている。
「五条さん?」
何やってんの、と呆気に取られながら私が呼びかけると、五条さんはピタッと止まってこう言った。
「今日はもうじゅうぶん楽しかったでしょ。そんなワガママ言わないの。帰るよ」
「・・・・・・」
「ほら、帰るって言ってもどうせ同じ所に帰るんだし。帰っても一緒にいられるし」
「・・・・・・」
「・・・あのさ、僕、本当にこないだのこと反省してるんだよ?それはもうマリアナ海溝よりも深く!」
「・・・・・・」
「自分のマンションなら自制が利くけど、お泊りだとさ、非日常だし、どうしても舞い上がっちゃうしさ、タカ外れちゃいそうだしさ・・・」
「・・・・・・」
この後も、五条さんはひたすらブツブツ何かつぶやいている。
この間、私は一言も発していない。
五条さんも私にというよりも、自分自身に言い聞かせているようだった。
(でも・・・やじろべえかっていうくらいに理性と本能の間であからさまに揺れ動いてる・・・!)
なので、私は思い切って言ってみた。
「・・・いいんですよ?」
すると更に次の瞬間、
「ひゃあ!?」
五条さんは今度は勢いよくガシッと私の手を掴むと、そのまま猛スピードで走り出した。
引っ張られるようにして、私も走る羽目になる。
「ど、どこ行くんですか!?」
という私の問いかけに、
「別荘」
とだけ、切羽詰まったように五条さんは答えた。
「べ、別荘って・・・」
と戸惑う私を無言で引きつれて、五条さんは沿道まで来てタクシーを拾った。そのまま押し込めるように私を乗せると、自らも飛び込むように乗り込んだ。
そして、運転手さんに向かって行き先を告げた。
「極楽寺まで!」
こうして、五条家別荘に到着するまであっという間の出来事だった。
展開のあまりものスピード感についていけず、私が自分の言動を後悔したのは、別荘の玄関に入ってからのことだった。
(私・・・すごく軽はずみなことを言ったのでは!?)
玄関で立ち尽くしていると、五条さんが声を掛けてきた。
「ささっ、遠慮なく上がってよ」
五条さんはというと、マリアナ海溝より深い反省はどこへやら、すっかり舞い上がった様子でさっさと靴を脱いで上がり框に登っている。
「・・・あの、五条さん。私やっぱり・・・」
「ん?」
「歯ブラシとか着替えとか用意してないし・・・」
「ダイジョブダイジョブ!いつでも利用できるようにお手伝いが随時掃除に来て、アメニティも、浴衣だけど着替えも、使い捨ての下着も用意してくれてるから」
「・・・そ、そう・・・ですか」
「あ、誤解されたくないから言っとくけど、僕がここに来たの子どもの頃以来で、誰も連れてきたことないからね」
「・・・・・・」
別にそんなことは気にしてないんだけど、すっかり外堀を埋められたようで、もう取り消せないことを悟った。
「お、おじゃまします!」
私は覚悟を決めて、靴を脱ぎ上がり框に登った。
別荘と聞いて、てっきりししおどしの音が響き渡るような日本庭園や、宴会が出来るような広い畳の部屋があるような、そんな豪華絢爛な日本式家屋を想像していたのだけれど。
実際の別荘はこじんまりとした古民家で、どこか懐かしさを憶える近隣の風景とよく馴染んでいる。
緩やかな坂の上に別荘は建っていて、二階に上がると、夜の海の水平線が見えた。
「・・・・・・」
窓辺に立ってその眺めをボーっと見つめていたら、
「今、風呂溜めてるから」
と、一階から五条さんが上がってきた。
「あと10分もしたら入れるよ」
「あ、ありがとうございます」
「もちろん一緒に入るでしょ?」
「・・・・・・」
「冗談だって。そんなにらまないでよ」
「・・・冗談にきこえないんですよ、五条さんが言うと。・・・あ」
言葉の途中で、ふと部屋の柱に目が付いた。
部屋の中心を支える太いその柱には、何かの目印らしい3センチほどの横線と、年号と日付が彫られていた。