第24話 藍色好きさ
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「もーちょい左左・・・んっ、オーケー。そのままそのまま・・・」
そう言いながら、五条さんはスマホを私に向けている。
「はい、チーズ」
そうして撮影してもらった写真は、私の手のひらに大仏が乗っかってるかのようになっている。
そう、次にやって来たのはご存知、鎌倉大仏だ。
「あははっ、おもしろーい」
撮ってもらった写真を見ながら、私は笑った。
そこでふと、ここまで向かうまでに通りかかったお寺の数を思い出しながら、私は言った。
「それにしても、鎌倉ってお寺が多いんですねぇ。まるで京都みたい」
「鎌倉時代、権力者が神仏への敬意を政治に据える宗教政策を始めたかららしいよ。そして、寺の関係者も権力者の庇護を求めて、鎌倉に沢山押し寄せたのが理由らしい」
「へぇ~・・・」
「でも、その実は・・・」
突然、五条さんは低く沈んだ声で言った。
「その時代、血で血を洗う権力闘争が繰り広げられて、その時に生まれた怨霊を鎮めるために建立されたんだ・・・。だから鎌倉にはあちこちに寺があって、未だに呪いがいるんだよ~」
「ひっ」
「特に、夜の由比ヶ浜は権力闘争に敗れた武士たちの呪いが海に引きずり込もうとして・・・」
「いやっ。こわいっ。これ以上聞きたくない!」
と、私は両耳を塞いだ。
・・・でも、昼間の鎌倉は多くの観光客でにぎわっていて、そんな呪いの気配など少しも感じられなかった。
もし、呪いがいたとしても、今の私と五条さんは気づいていなかったのかもしれない。
それくらい今が楽しくて、幸せで、私たちはお互いのことしか見えてなかった。
そんな時間はあっという間で、鎌倉の町並みを夕日が照らし始めた。
大方の観光地や目的の店を行きつくして、私たちが最後に辿り着いたのは、由比ヶ浜だった。
「さっきあんな話したのに、どうして来たんですか~?」
少し怯えながら私が言うと、五条さんは笑った。
「ははっ。大丈夫だって~。沢山人もいるし、やっぱりこの風景を見ないと鎌倉に来た気がしないでしょ?」
五条さんの言う通り、夕方の由比ヶ浜には沢山の人がいた。
海に夕日が沈む瞬間を皆観に来ているらしい。
「・・・・・・」
私も目の前に広がる海と、その水平線の向うに沈みゆく太陽を見つめた。
空と海は燃えるような茜色だけれど、吹く風には肌寒さを感じる。
自分で自分の肩を抱いて肌寒さを凌いでいたら、
「わっ」
背後からガバッと包み込むように五条さんが私を抱き締めた。
その腕の中で、私は五条さんを肩越しに振り返る。
「ちょ、五条さん?」
「大丈夫だよ、気にしなくたって」
そう言いながら、五条さんは私の肩にちょこんと顎を載せた。
「誰も僕らのことなんて気にしてないからさ」
「・・・・・・」
そう言われて、私は辺りを見回した。
自分たちの世界に入り浸っているカップルはもちろん、学生グループも、親子連れも、地元の人らしい犬の散歩をしている人も、皆この光景に夢中で、私たちのことなんて見向きもしていない。
「・・・綺麗」
私は五条さんの腕に身体を委ね、その中のぬくもりを感じながら、目の前の景色を見てそう呟いた。
夕日はどんどん沈んで行き、空と海は茜色の単色から、夜の藍色とのグラデーションに変わっていた。
それもやがて完全な藍色に変わり夜の気配が濃くなると、その暗さと寒さも相まって、沢山いた人々は次々と浜辺から立ち去り始めた。
「・・・・・・」
ずっとこのままでいたい。
でも、私たちも帰らなきゃ。
「・・・帰りましょ。早くしないと、武士の怨霊に海に引きずり込まれちゃう」
と私がおどけて言うと、思いのほかあっさりと、五条さんは両腕を解いて私から身を離した。
少し心寂しく思いながら振り返ると、
「・・・・・・」
思いも寄らない光景に、私は言葉を失った。
そう言いながら、五条さんはスマホを私に向けている。
「はい、チーズ」
そうして撮影してもらった写真は、私の手のひらに大仏が乗っかってるかのようになっている。
そう、次にやって来たのはご存知、鎌倉大仏だ。
「あははっ、おもしろーい」
撮ってもらった写真を見ながら、私は笑った。
そこでふと、ここまで向かうまでに通りかかったお寺の数を思い出しながら、私は言った。
「それにしても、鎌倉ってお寺が多いんですねぇ。まるで京都みたい」
「鎌倉時代、権力者が神仏への敬意を政治に据える宗教政策を始めたかららしいよ。そして、寺の関係者も権力者の庇護を求めて、鎌倉に沢山押し寄せたのが理由らしい」
「へぇ~・・・」
「でも、その実は・・・」
突然、五条さんは低く沈んだ声で言った。
「その時代、血で血を洗う権力闘争が繰り広げられて、その時に生まれた怨霊を鎮めるために建立されたんだ・・・。だから鎌倉にはあちこちに寺があって、未だに呪いがいるんだよ~」
「ひっ」
「特に、夜の由比ヶ浜は権力闘争に敗れた武士たちの呪いが海に引きずり込もうとして・・・」
「いやっ。こわいっ。これ以上聞きたくない!」
と、私は両耳を塞いだ。
・・・でも、昼間の鎌倉は多くの観光客でにぎわっていて、そんな呪いの気配など少しも感じられなかった。
もし、呪いがいたとしても、今の私と五条さんは気づいていなかったのかもしれない。
それくらい今が楽しくて、幸せで、私たちはお互いのことしか見えてなかった。
そんな時間はあっという間で、鎌倉の町並みを夕日が照らし始めた。
大方の観光地や目的の店を行きつくして、私たちが最後に辿り着いたのは、由比ヶ浜だった。
「さっきあんな話したのに、どうして来たんですか~?」
少し怯えながら私が言うと、五条さんは笑った。
「ははっ。大丈夫だって~。沢山人もいるし、やっぱりこの風景を見ないと鎌倉に来た気がしないでしょ?」
五条さんの言う通り、夕方の由比ヶ浜には沢山の人がいた。
海に夕日が沈む瞬間を皆観に来ているらしい。
「・・・・・・」
私も目の前に広がる海と、その水平線の向うに沈みゆく太陽を見つめた。
空と海は燃えるような茜色だけれど、吹く風には肌寒さを感じる。
自分で自分の肩を抱いて肌寒さを凌いでいたら、
「わっ」
背後からガバッと包み込むように五条さんが私を抱き締めた。
その腕の中で、私は五条さんを肩越しに振り返る。
「ちょ、五条さん?」
「大丈夫だよ、気にしなくたって」
そう言いながら、五条さんは私の肩にちょこんと顎を載せた。
「誰も僕らのことなんて気にしてないからさ」
「・・・・・・」
そう言われて、私は辺りを見回した。
自分たちの世界に入り浸っているカップルはもちろん、学生グループも、親子連れも、地元の人らしい犬の散歩をしている人も、皆この光景に夢中で、私たちのことなんて見向きもしていない。
「・・・綺麗」
私は五条さんの腕に身体を委ね、その中のぬくもりを感じながら、目の前の景色を見てそう呟いた。
夕日はどんどん沈んで行き、空と海は茜色の単色から、夜の藍色とのグラデーションに変わっていた。
それもやがて完全な藍色に変わり夜の気配が濃くなると、その暗さと寒さも相まって、沢山いた人々は次々と浜辺から立ち去り始めた。
「・・・・・・」
ずっとこのままでいたい。
でも、私たちも帰らなきゃ。
「・・・帰りましょ。早くしないと、武士の怨霊に海に引きずり込まれちゃう」
と私がおどけて言うと、思いのほかあっさりと、五条さんは両腕を解いて私から身を離した。
少し心寂しく思いながら振り返ると、
「・・・・・・」
思いも寄らない光景に、私は言葉を失った。