第24話 藍色好きさ
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どうしてそれを。
ギクッとする私に、五条さんは追及するように言った。
「歌姫から聞いたよ?交流会の後の女子会で、和紗がそう言ってたって!」
「そ、それは・・・」
「ショックだよ、ほんともう・・・。そんな風に僕のこと思ってたなんて」
「顔のことなんて、どうでもいいじゃないですか!?」
「よくないよ!?お店の手伝いも出来ない、いざって時に傍にいなくて護ることが出来ない、おまけにくどくて苦手な顔の僕が、和紗にとって一体何の価値があるっていうの!?」
「・・・・・・」
何だか話が脱線してきた。
私が話し合いたいことってこんなことじゃないのに・・・。
「・・・私」
私は言った。
「私、ひとつだけ決めていることがあるんです」
すると、子どもみたいに拗ねていた五条さんはハタと真剣な表情になった。
私は、真っ直ぐ五条さんの顔を見つめて言葉を続けた。
「私が足手纏いになって、そのせいで五条さんが危機に陥ることになれば、五条さんの前から身を引こうって」
「・・・・・・」
「この間、奇子たちの襲撃を受けた時、アイツらが言ってたの。私を人質にして、五条さんを陥れるって。だから、今がそうするべきだって思った・・・」
「・・・・・・」
「・・・身を引いて・・・いなくなるべきだって、そうするべきだって、わかってるのに・・・」
唇から嗚咽が零れそうになるのを、右手で塞いで堪えて、私は続けた。
「でも・・・っ、どうしても、五条さんのそばにいたいって思ってしまうの・・・」
それ以上は、言葉にならなかった。
すると、五条さんは椅子から立ち上がりテーブルから身を乗り出して、私の頭を掻き抱いた。
そして、
「・・・よかった」
と、思いも寄らぬ言葉をこぼした。
どういう意味だろうと内心首を傾げていたら、
「和紗の思いを聞けて」
五条さんは言った。
「・・・もう懲り懲りなんだよなぁ。何も告げられないまま、突然いなくなられるのは」
「・・・・・・」
それが誰のことなのか。
今の私には、すぐにわかった。
そして、私も何も告げられないまま自分の元から立ち去られる辛さを知っている。
よかったと、私も思った。
あんな思いを二度も五条さんにさせなくて。
他でもない私自身が。
でも。
「・・・ひとつだけ、約束してください」
私はそっと五条さんの身体を押しやって言った。
「私がどうなろうとも、五条さんは人を助けることをやめないで」
「・・・・・・」
「呪いを祓い続けて、たくさんの人を助けて」
「・・・・・・」
「五条さんの力は、その為にあるんだから」
私がそう言い終えると、五条さんは答えず考え込むように俯いた。
そして、
「・・・僕も、ひとつだけ決めてることがある」
と、言った。
「え・・・?」
私はそれがどんなことなのか告げられるのを待つ。
───和紗が元の世界に帰りたがることがあれば、アンタが帰してやるんだ
だけど五条さんはそのことには触れず、ふと顔を上げて、
「和紗は、僕が怖い?」
と、私に尋ねた。
「・・・・・・」
問いかけられたことの意図がわからず答えられずにいたら、
「僕と出会って、呪いの世界に来てしまったことを、後悔してる?何も知らなかった頃の世界に戻りたいと思う?」
と、五条さんは今度は違うことを問いかけてきた。
「・・・呪いの存在を知って」
これまでの出来事を思い返しながら、私はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「たくさんの呪霊と遭遇して、怖いと思わなかったことなんてないけれど・・・」
特級仮想怨霊の『額多之君』。
パティスリーグランのミジンコ型の呪霊。
ラヴロックスポートランドのキューピッドの呪霊。
『みなづき駅』のふんどしの呪霊。
こほろ坂の呪詛師。
フリーマーケットの着物型の呪霊。
遊女・露鈴の呪霊。
呪詛師・重面。
それに、『みささぎ』。『両面宿儺』。
そして、糠田が森の土地の呪い『奇子』。
「それでも、何も知らないうちに呪いが私の故郷を蝕んで、大切な人たちが脅威に晒されることの方がずっと怖い。だから私、少しも後悔してない。それに・・・」
私は顔を上げて、真っ直ぐに五条さんの顔を見つめた。
「例え呪いのいない平和な世界でも、五条さんと出会わなかった世界の方が、ずっと怖いもの」
ギクッとする私に、五条さんは追及するように言った。
「歌姫から聞いたよ?交流会の後の女子会で、和紗がそう言ってたって!」
「そ、それは・・・」
「ショックだよ、ほんともう・・・。そんな風に僕のこと思ってたなんて」
「顔のことなんて、どうでもいいじゃないですか!?」
「よくないよ!?お店の手伝いも出来ない、いざって時に傍にいなくて護ることが出来ない、おまけにくどくて苦手な顔の僕が、和紗にとって一体何の価値があるっていうの!?」
「・・・・・・」
何だか話が脱線してきた。
私が話し合いたいことってこんなことじゃないのに・・・。
「・・・私」
私は言った。
「私、ひとつだけ決めていることがあるんです」
すると、子どもみたいに拗ねていた五条さんはハタと真剣な表情になった。
私は、真っ直ぐ五条さんの顔を見つめて言葉を続けた。
「私が足手纏いになって、そのせいで五条さんが危機に陥ることになれば、五条さんの前から身を引こうって」
「・・・・・・」
「この間、奇子たちの襲撃を受けた時、アイツらが言ってたの。私を人質にして、五条さんを陥れるって。だから、今がそうするべきだって思った・・・」
「・・・・・・」
「・・・身を引いて・・・いなくなるべきだって、そうするべきだって、わかってるのに・・・」
唇から嗚咽が零れそうになるのを、右手で塞いで堪えて、私は続けた。
「でも・・・っ、どうしても、五条さんのそばにいたいって思ってしまうの・・・」
それ以上は、言葉にならなかった。
すると、五条さんは椅子から立ち上がりテーブルから身を乗り出して、私の頭を掻き抱いた。
そして、
「・・・よかった」
と、思いも寄らぬ言葉をこぼした。
どういう意味だろうと内心首を傾げていたら、
「和紗の思いを聞けて」
五条さんは言った。
「・・・もう懲り懲りなんだよなぁ。何も告げられないまま、突然いなくなられるのは」
「・・・・・・」
それが誰のことなのか。
今の私には、すぐにわかった。
そして、私も何も告げられないまま自分の元から立ち去られる辛さを知っている。
よかったと、私も思った。
あんな思いを二度も五条さんにさせなくて。
他でもない私自身が。
でも。
「・・・ひとつだけ、約束してください」
私はそっと五条さんの身体を押しやって言った。
「私がどうなろうとも、五条さんは人を助けることをやめないで」
「・・・・・・」
「呪いを祓い続けて、たくさんの人を助けて」
「・・・・・・」
「五条さんの力は、その為にあるんだから」
私がそう言い終えると、五条さんは答えず考え込むように俯いた。
そして、
「・・・僕も、ひとつだけ決めてることがある」
と、言った。
「え・・・?」
私はそれがどんなことなのか告げられるのを待つ。
───和紗が元の世界に帰りたがることがあれば、アンタが帰してやるんだ
だけど五条さんはそのことには触れず、ふと顔を上げて、
「和紗は、僕が怖い?」
と、私に尋ねた。
「・・・・・・」
問いかけられたことの意図がわからず答えられずにいたら、
「僕と出会って、呪いの世界に来てしまったことを、後悔してる?何も知らなかった頃の世界に戻りたいと思う?」
と、五条さんは今度は違うことを問いかけてきた。
「・・・呪いの存在を知って」
これまでの出来事を思い返しながら、私はゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「たくさんの呪霊と遭遇して、怖いと思わなかったことなんてないけれど・・・」
特級仮想怨霊の『額多之君』。
パティスリーグランのミジンコ型の呪霊。
ラヴロックスポートランドのキューピッドの呪霊。
『みなづき駅』のふんどしの呪霊。
こほろ坂の呪詛師。
フリーマーケットの着物型の呪霊。
遊女・露鈴の呪霊。
呪詛師・重面。
それに、『みささぎ』。『両面宿儺』。
そして、糠田が森の土地の呪い『奇子』。
「それでも、何も知らないうちに呪いが私の故郷を蝕んで、大切な人たちが脅威に晒されることの方がずっと怖い。だから私、少しも後悔してない。それに・・・」
私は顔を上げて、真っ直ぐに五条さんの顔を見つめた。
「例え呪いのいない平和な世界でも、五条さんと出会わなかった世界の方が、ずっと怖いもの」