第23話 黒い衝動
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鞄の中からあらかじめ作っておいた小麦粉だけを水で丸めて作った饅頭を取り出す。
「すぅー・・・」
一度深く息を吸い込んでから、
「ふーっ」
その饅頭に呪力を込める。
『反転術式』、正のエネルギー、『退魔の力』を。
「・・・よし」
そして、その饅頭をネズミ型の呪霊の群れに向かって投げつけた。
饅頭が地面に落ちた瞬間、
「チ"ュッチ"チ"ュッゥウチ"ウッ!」
『退魔の力』が爆ぜて、ネズミ型呪霊が弾け飛んだ。
そして、祓われて煤になっていく。
その様子を見て、私は自分が仕掛けたことなのに驚いていた。
「やった・・・!成功した・・・!」
あらかじめ作っておいた饅頭に呪力を込めて、それを武器の代わりにする。
名付けて、『明埜乃舞降鶴乃擬砡 』!
そう名付けたのも、考案したのも、五条さんだ。
『呪力そのものを物体化した『御砡』じゃないから『擬砡』ね〜』
その上長く呪力を留まらせる力量がない、今の私が出来る技。
『チ"チ"チ"ュッチ"ュッ』
『擬砡』の呪力から辛くも免れた数匹のネズミ型呪霊が、散り散りになって部屋から出て行く。
「テンジョーテンゲ!ユイガドクソン!」
それをサトルも追って部屋を出て行く。
「大丈夫ですか?」
私は襲われていたサイドテールの人の元に駆け寄った。
「大丈夫・・・」
と、彼は頷いた。
大きな怪我はしていないものの、足のあちこちに引っ掻き傷や噛みつき痕がある。
「少しジッとして下さい」
と、私は彼のそばに屈み、彼に治癒の『反転術式』をかけた。
みるみると治っていく傷跡を、彼は驚きながら見つめている。
「・・・よし」
傷が完治して、私はサッと立ち上がった。
何故彼がこんなところにいたのか、私は尋ねるつもりはない。
助けることが出来たから、それで十分。
すぐにこの場を立ち去るつもりだった。
「ありがとう、お姉さん!」
だけど、サイドテールの人は私に張り付かんばかりに近づいてきて話しかけてきた。
「おねえさんが来てくれなきゃ、今頃僕一体どうなっていたか。本当にありがとう!」
「お気になさらず。でも、早くここを立ち去った方がいいですよ」
よくよく見てみれば、このサイドテールの彼はなんだか奇妙な格好をしている。
ブカブカのワンショルダーのオールインワンの下には、何も身につけていない。
(それよりなにより、この妙な馴れ馴れしさ・・・)
私は身をかわして、彼に背を向けた。
「じゃあ、私はこれで・・・」
と、その場を離れようと一歩踏み出した時だった。
ザクッ
右肩に焼き付く様な痛みが走り、私は反射的に左手で押さえ込んだ。
「痛っ・・・」
右肩と左手が真っ赤に染まる。
血はみるみるうちに溢れ出して、肩から腕を伝って、地面に滴り落ちた。
「なっ・・・」
私は愕然として後ろを振り返った。
「『反転術式』っていうんだよね、傷を治すのって」
サイドテールの人が言った。
「じゃあ、その程度の傷じゃあすぐ治せちゃうのかな?もっと深く切らないとダメかな?」
と、いつのまにかその手に握った剣を一振りした。
刃に着いていた血が振り払われて地面に飛び散る。
私はこの剣に切られたんだ。
「・・・・・・」
奇妙な剣だ。
柄の部分が人の手の形になっていて、サイドテールはそれを握手しているように握っている。
「・・・貴方は・・・」
私はキッとサイドテールを睨みつけながら言った。
「呪詛師なのね・・・」
すると、サイドテールはニヤリと笑みを浮かべた。そして、
「奇子に頼まれたんだ」
と言った。
(奇子・・・?)
初めて聞く名前に私は眉を顰める。
サイドテールは相変わらずニタニタと不快な笑みを浮かべながら言った。
「おねえさんのことをおびき寄せろってね」
「すぅー・・・」
一度深く息を吸い込んでから、
「ふーっ」
その饅頭に呪力を込める。
『反転術式』、正のエネルギー、『退魔の力』を。
「・・・よし」
そして、その饅頭をネズミ型の呪霊の群れに向かって投げつけた。
饅頭が地面に落ちた瞬間、
「チ"ュッチ"チ"ュッゥウチ"ウッ!」
『退魔の力』が爆ぜて、ネズミ型呪霊が弾け飛んだ。
そして、祓われて煤になっていく。
その様子を見て、私は自分が仕掛けたことなのに驚いていた。
「やった・・・!成功した・・・!」
あらかじめ作っておいた饅頭に呪力を込めて、それを武器の代わりにする。
名付けて、『
そう名付けたのも、考案したのも、五条さんだ。
『呪力そのものを物体化した『御砡』じゃないから『擬砡』ね〜』
その上長く呪力を留まらせる力量がない、今の私が出来る技。
『チ"チ"チ"ュッチ"ュッ』
『擬砡』の呪力から辛くも免れた数匹のネズミ型呪霊が、散り散りになって部屋から出て行く。
「テンジョーテンゲ!ユイガドクソン!」
それをサトルも追って部屋を出て行く。
「大丈夫ですか?」
私は襲われていたサイドテールの人の元に駆け寄った。
「大丈夫・・・」
と、彼は頷いた。
大きな怪我はしていないものの、足のあちこちに引っ掻き傷や噛みつき痕がある。
「少しジッとして下さい」
と、私は彼のそばに屈み、彼に治癒の『反転術式』をかけた。
みるみると治っていく傷跡を、彼は驚きながら見つめている。
「・・・よし」
傷が完治して、私はサッと立ち上がった。
何故彼がこんなところにいたのか、私は尋ねるつもりはない。
助けることが出来たから、それで十分。
すぐにこの場を立ち去るつもりだった。
「ありがとう、お姉さん!」
だけど、サイドテールの人は私に張り付かんばかりに近づいてきて話しかけてきた。
「おねえさんが来てくれなきゃ、今頃僕一体どうなっていたか。本当にありがとう!」
「お気になさらず。でも、早くここを立ち去った方がいいですよ」
よくよく見てみれば、このサイドテールの彼はなんだか奇妙な格好をしている。
ブカブカのワンショルダーのオールインワンの下には、何も身につけていない。
(それよりなにより、この妙な馴れ馴れしさ・・・)
私は身をかわして、彼に背を向けた。
「じゃあ、私はこれで・・・」
と、その場を離れようと一歩踏み出した時だった。
ザクッ
右肩に焼き付く様な痛みが走り、私は反射的に左手で押さえ込んだ。
「痛っ・・・」
右肩と左手が真っ赤に染まる。
血はみるみるうちに溢れ出して、肩から腕を伝って、地面に滴り落ちた。
「なっ・・・」
私は愕然として後ろを振り返った。
「『反転術式』っていうんだよね、傷を治すのって」
サイドテールの人が言った。
「じゃあ、その程度の傷じゃあすぐ治せちゃうのかな?もっと深く切らないとダメかな?」
と、いつのまにかその手に握った剣を一振りした。
刃に着いていた血が振り払われて地面に飛び散る。
私はこの剣に切られたんだ。
「・・・・・・」
奇妙な剣だ。
柄の部分が人の手の形になっていて、サイドテールはそれを握手しているように握っている。
「・・・貴方は・・・」
私はキッとサイドテールを睨みつけながら言った。
「呪詛師なのね・・・」
すると、サイドテールはニヤリと笑みを浮かべた。そして、
「奇子に頼まれたんだ」
と言った。
(奇子・・・?)
初めて聞く名前に私は眉を顰める。
サイドテールは相変わらずニタニタと不快な笑みを浮かべながら言った。
「おねえさんのことをおびき寄せろってね」