第23話 黒い衝動
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「これは・・・」
「『あけづる』です。お店のことでお忙しい時に申し訳ないんですけど、よかったらまた感想とアドバイスお願いします」
すると陵先生は、
「うん・・・」
と、微笑んだ。
それは、初めて見る柔らかい微笑みだった。
それで、私は言った。
「・・・もう大丈夫ですね」
「え?」
「『みささぎ』のこと・・・。最近は顕現したり暴走したりしてないですよね?」
「あ、うん・・・」
すると、陵先生はスッと目を伏せた。
「鶴來さんと五条さんにはずっと申し訳ないと思ってて。あれだけ心配してくれてたのに、急に音信不通になってしまって」
「いえ、大丈夫です。五条さんも連絡ないのが無事の知らせって言ってたし」
「うん・・・。お陰様であれから『みささぎ』は一度も出てきてない」
そう言って、陵先生はタッパーを持つ手をぎゅっと握った。
「でも、まだ今も確かに僕に『みささぎ』が取り憑いてることを感じる」
「・・・・・・」
「今までは、そのことを見ぬふりや否定しようとしてたけど、今は受け入れようと思うんだ。そして、そんな自分自身のことを」
そう言い切った陵先生は力強くて、私はようやく安堵した。
「・・・よかった」
私は微笑んだ。
「私は、陵先生が元気なことが嬉しいです。五条さんにも陵先生は元気って伝えておきますね」
「あ、うん。五条さんによろしく伝えてくれるかな」
「はい!私、そろそろ行きますね」
「うん。『あけづる』出来るだけ早く感想送るから・・・」
「急がなくていいですよ。また次に会う時に。それじゃあまた!」
と、私は踵を返してその場から離れた。
陵先生は私の姿が見えなくなるまで、ずっと見送ってくれていたようだった。
(さて、と)
せっかく代官山まで来たんだもん。
オシャレなカフェに行こうっと。
(実は既にリサーチ済み!)
スマホの地図を見ながら、目当てのカフェを目指す、が。
・・・10分後。
(ま、迷った)
どうして東京ってこんなに道がややこしいんだろう・・・。
山道ならこんなに迷わないのに・・・。
よくわからない路地裏に入り込んでしまって辺りをキョロキョロと見回していると、
「テンジョーテンゲ!」
鞄に収まっていたサトルが突然飛び出して来た。
「こらっ、サトル!」
私は慌ててサトルを取り押さえる。
「急に飛び出しちゃダメ!」
と、人に見られていないか辺りを見回す。
幸い辺りに人はいないけれど・・・。
「どうしたのよ、サトル。そんな興奮して・・・」
と言いながら、ハッと私は息を呑んだ。
ザワ・・・ザワ・・・
呪いの気配がする。
(どこ?)
今度は呪いを探して辺りを見回す。
ふと見上げると、
「!」
前方にあるオンボロビルの4階の窓。
「女の子・・・?いや、男の子?」
その窓に張り付く人の顔が見えた。
性別はわからない。
長い髪をサイドテールに結んでいる。
その人は、助けを求める様にドンドンと窓ガラスを叩いている。
(間違いない。あそこだ!)
私はそのビルに向かって駆け出した。
ビルは老朽化が進んでいて、その部屋のほとんどが空きテナントだった。
サトルを解放して、一緒に階段を駆け上がる。
「・・・・・・!」
4階にやって来ると、呪いの気配はより濃くなった。
それを辿って、あのサイドテールの人がいる部屋を探し廊下を走った。
廊下の突き当たりから二番目の部屋。
「・・・ここ!」
私がそう言うと、サトルがドアを蹴破って部屋に駆け込んだ。
するとそこには、
「チ"ュウゥ〜チ"ュチ"ュッ」
ネズミ型の呪霊が20匹・・・いや、50匹ほどいた。
(多い!一匹一匹は小さいけど、多過ぎる!)
その数の多さに怯んでいたら、
「た、助けて!」
さっき窓から見えたサイドテールの人が、私に向かって叫んだ。
その周囲は沢山のネズミ型呪霊が集っていて、足によじ登ってくるネズミを必死に足を蹴って振り払っている。
(男の子だったんだ!)
意外と野太い声に驚きつつ、私は身構えた。
「『あけづる』です。お店のことでお忙しい時に申し訳ないんですけど、よかったらまた感想とアドバイスお願いします」
すると陵先生は、
「うん・・・」
と、微笑んだ。
それは、初めて見る柔らかい微笑みだった。
それで、私は言った。
「・・・もう大丈夫ですね」
「え?」
「『みささぎ』のこと・・・。最近は顕現したり暴走したりしてないですよね?」
「あ、うん・・・」
すると、陵先生はスッと目を伏せた。
「鶴來さんと五条さんにはずっと申し訳ないと思ってて。あれだけ心配してくれてたのに、急に音信不通になってしまって」
「いえ、大丈夫です。五条さんも連絡ないのが無事の知らせって言ってたし」
「うん・・・。お陰様であれから『みささぎ』は一度も出てきてない」
そう言って、陵先生はタッパーを持つ手をぎゅっと握った。
「でも、まだ今も確かに僕に『みささぎ』が取り憑いてることを感じる」
「・・・・・・」
「今までは、そのことを見ぬふりや否定しようとしてたけど、今は受け入れようと思うんだ。そして、そんな自分自身のことを」
そう言い切った陵先生は力強くて、私はようやく安堵した。
「・・・よかった」
私は微笑んだ。
「私は、陵先生が元気なことが嬉しいです。五条さんにも陵先生は元気って伝えておきますね」
「あ、うん。五条さんによろしく伝えてくれるかな」
「はい!私、そろそろ行きますね」
「うん。『あけづる』出来るだけ早く感想送るから・・・」
「急がなくていいですよ。また次に会う時に。それじゃあまた!」
と、私は踵を返してその場から離れた。
陵先生は私の姿が見えなくなるまで、ずっと見送ってくれていたようだった。
(さて、と)
せっかく代官山まで来たんだもん。
オシャレなカフェに行こうっと。
(実は既にリサーチ済み!)
スマホの地図を見ながら、目当てのカフェを目指す、が。
・・・10分後。
(ま、迷った)
どうして東京ってこんなに道がややこしいんだろう・・・。
山道ならこんなに迷わないのに・・・。
よくわからない路地裏に入り込んでしまって辺りをキョロキョロと見回していると、
「テンジョーテンゲ!」
鞄に収まっていたサトルが突然飛び出して来た。
「こらっ、サトル!」
私は慌ててサトルを取り押さえる。
「急に飛び出しちゃダメ!」
と、人に見られていないか辺りを見回す。
幸い辺りに人はいないけれど・・・。
「どうしたのよ、サトル。そんな興奮して・・・」
と言いながら、ハッと私は息を呑んだ。
ザワ・・・ザワ・・・
呪いの気配がする。
(どこ?)
今度は呪いを探して辺りを見回す。
ふと見上げると、
「!」
前方にあるオンボロビルの4階の窓。
「女の子・・・?いや、男の子?」
その窓に張り付く人の顔が見えた。
性別はわからない。
長い髪をサイドテールに結んでいる。
その人は、助けを求める様にドンドンと窓ガラスを叩いている。
(間違いない。あそこだ!)
私はそのビルに向かって駆け出した。
ビルは老朽化が進んでいて、その部屋のほとんどが空きテナントだった。
サトルを解放して、一緒に階段を駆け上がる。
「・・・・・・!」
4階にやって来ると、呪いの気配はより濃くなった。
それを辿って、あのサイドテールの人がいる部屋を探し廊下を走った。
廊下の突き当たりから二番目の部屋。
「・・・ここ!」
私がそう言うと、サトルがドアを蹴破って部屋に駆け込んだ。
するとそこには、
「チ"ュウゥ〜チ"ュチ"ュッ」
ネズミ型の呪霊が20匹・・・いや、50匹ほどいた。
(多い!一匹一匹は小さいけど、多過ぎる!)
その数の多さに怯んでいたら、
「た、助けて!」
さっき窓から見えたサイドテールの人が、私に向かって叫んだ。
その周囲は沢山のネズミ型呪霊が集っていて、足によじ登ってくるネズミを必死に足を蹴って振り払っている。
(男の子だったんだ!)
意外と野太い声に驚きつつ、私は身構えた。