第23話 黒い衝動
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
問われて少し考えた。
『あけづる』のアドバイスを聞きたいのはもちろんだけど、『みささぎ』のことも気になる。
でも、お店のことで忙しそうながらも平和な日々を送っているであろう陵先生に、嫌なことをわざわざ掘り起こすようなことを聞くべきじゃないのかも・・・。
「鶴來さん?」
何も応えない私に、陵 先生が不思議そうに呼びかける。そして、
「・・・もしかして、『あけづる』のこと?」
と、尋ねてきた。
私は驚いて小さく息を飲んだ。
「遠慮なく質問してくれていいんだよ。僕に答えられればだけど・・・」
「そ、そうなんです」
私は頷いた。
「少し考えが行き詰まってて・・・」
五条さんの言う通りだ。
今は揺り起こすべきじゃない。
陵先生の声を聞けば、陵先生が・・・『みささぎ』が、現在は安定していることがわかる。
(よかった)
1週間後に面接の約束をした。
その時に、『あけづる』のアドバイスもしてもらえることになった。
『みささぎ』のことも、その時に何気なくきけばいい。
陵先生と会う事は、五条さんに話さなかった。
五条さんもまた任務など諸々の事で忙しくて会えないまま話すタイミングがなかったからだ。
でも、ただそれだけのこと。
その時の私は、そう思っていた。
1週間後。
店の最寄りの代官山駅を出ると、
「鶴來さん」
陵先生が迎えに来てくれていた。
「陵先生!」
私は小走りで陵先生の元に駆け寄った。
「わざわざすみません。お迎えなんて・・・」
「大丈夫だよ。それに店の場所は少し入り込んだ所にあるから・・・」
と、話す陵先生の顔を私は改めて見た。
くるくるの天然パーマは相変わらずだけど、顔を隠す様に長かった前髪はスッキリと後ろに流して、さらにコンタクトにしたのか眼鏡をかけていない。
彫りの深い顔立ちがハッキリと見える。
「・・・陵先生、なんだか変わりましたね」
と私が言うと、陵先生はむず痒そうな顔をした。
「あ、眼鏡をやめたからかな・・・?」
「髪型も変わりましたよね。どういう心境の変化ですか?」
「心境っていうか、オーナー命令なんだ」
「命令?」
「うん。代官山の一等地にある店のパティシエにふさわしくスッキリした格好にしろって言われて・・・」
「えぇ〜、そんな事言われるんですか。私、面接大丈夫かな・・・」
「なぜ?」
「私、田舎くさいってよく言われるし」
「大丈夫だよ」
陵先生は言った。
「鶴來さんは、そのままで素敵だよ」
「・・・・・・」
陵先生がサラッとそんな事を言うとは思わなかったので、私は驚いて返事が出来なかった。
「さ、行こうか」
と、陵先生が歩き出したので、私もそれに続いた。
店までの道を歩いていると、すれ違う女の人達が色めき立つのがわかった。
「見て。あの人、カッコいー♡」
「ティモシー・シャラメに似てるー♡」
なんてコソコソ話し声が聞こえてくる。
だけど、陵先生はそれが自分の事と気づいてないようで、それどころか人混みが居心地悪そうに早足で進んで行く。
そうして、目抜き通りを抜けた脇道にある店にたどり着いた。
そして面接も無事に終えて、私は帰ることにした。
「今日はわざわざありがとう」
店先で陵先生が言った。
そして、ズボンのポケットからおもむろに財布を取り出し、その中から千円札を2枚抜き取った。
「このまま帰るのもなんだし、これでお茶でも・・・」
「いえ、そんな!結構です」
私は慌てて固辞した。
「それなら、陵先生も一緒に行きませんか?」
「あ・・・、ごめん」
陵先生は申し訳なさそうに言った。
「これから商品の試食会があって・・・色々準備することがあるんだ」
「あ、そっか」
オープンに向けて準備も大詰めで大変なんだ。
お茶してる暇なんてないよね。
「じゃあ、これを・・・」
と、私は鞄からタッパーを取り出して、陵先生に差し出した。
『あけづる』のアドバイスを聞きたいのはもちろんだけど、『みささぎ』のことも気になる。
でも、お店のことで忙しそうながらも平和な日々を送っているであろう陵先生に、嫌なことをわざわざ掘り起こすようなことを聞くべきじゃないのかも・・・。
「鶴來さん?」
何も応えない私に、
「・・・もしかして、『あけづる』のこと?」
と、尋ねてきた。
私は驚いて小さく息を飲んだ。
「遠慮なく質問してくれていいんだよ。僕に答えられればだけど・・・」
「そ、そうなんです」
私は頷いた。
「少し考えが行き詰まってて・・・」
五条さんの言う通りだ。
今は揺り起こすべきじゃない。
陵先生の声を聞けば、陵先生が・・・『みささぎ』が、現在は安定していることがわかる。
(よかった)
1週間後に面接の約束をした。
その時に、『あけづる』のアドバイスもしてもらえることになった。
『みささぎ』のことも、その時に何気なくきけばいい。
陵先生と会う事は、五条さんに話さなかった。
五条さんもまた任務など諸々の事で忙しくて会えないまま話すタイミングがなかったからだ。
でも、ただそれだけのこと。
その時の私は、そう思っていた。
1週間後。
店の最寄りの代官山駅を出ると、
「鶴來さん」
陵先生が迎えに来てくれていた。
「陵先生!」
私は小走りで陵先生の元に駆け寄った。
「わざわざすみません。お迎えなんて・・・」
「大丈夫だよ。それに店の場所は少し入り込んだ所にあるから・・・」
と、話す陵先生の顔を私は改めて見た。
くるくるの天然パーマは相変わらずだけど、顔を隠す様に長かった前髪はスッキリと後ろに流して、さらにコンタクトにしたのか眼鏡をかけていない。
彫りの深い顔立ちがハッキリと見える。
「・・・陵先生、なんだか変わりましたね」
と私が言うと、陵先生はむず痒そうな顔をした。
「あ、眼鏡をやめたからかな・・・?」
「髪型も変わりましたよね。どういう心境の変化ですか?」
「心境っていうか、オーナー命令なんだ」
「命令?」
「うん。代官山の一等地にある店のパティシエにふさわしくスッキリした格好にしろって言われて・・・」
「えぇ〜、そんな事言われるんですか。私、面接大丈夫かな・・・」
「なぜ?」
「私、田舎くさいってよく言われるし」
「大丈夫だよ」
陵先生は言った。
「鶴來さんは、そのままで素敵だよ」
「・・・・・・」
陵先生がサラッとそんな事を言うとは思わなかったので、私は驚いて返事が出来なかった。
「さ、行こうか」
と、陵先生が歩き出したので、私もそれに続いた。
店までの道を歩いていると、すれ違う女の人達が色めき立つのがわかった。
「見て。あの人、カッコいー♡」
「ティモシー・シャラメに似てるー♡」
なんてコソコソ話し声が聞こえてくる。
だけど、陵先生はそれが自分の事と気づいてないようで、それどころか人混みが居心地悪そうに早足で進んで行く。
そうして、目抜き通りを抜けた脇道にある店にたどり着いた。
そして面接も無事に終えて、私は帰ることにした。
「今日はわざわざありがとう」
店先で陵先生が言った。
そして、ズボンのポケットからおもむろに財布を取り出し、その中から千円札を2枚抜き取った。
「このまま帰るのもなんだし、これでお茶でも・・・」
「いえ、そんな!結構です」
私は慌てて固辞した。
「それなら、陵先生も一緒に行きませんか?」
「あ・・・、ごめん」
陵先生は申し訳なさそうに言った。
「これから商品の試食会があって・・・色々準備することがあるんだ」
「あ、そっか」
オープンに向けて準備も大詰めで大変なんだ。
お茶してる暇なんてないよね。
「じゃあ、これを・・・」
と、私は鞄からタッパーを取り出して、陵先生に差し出した。