第21話 京都姉妹校交流会
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんな七海さんの言葉を聞いて、私は戸惑っていた。
どうして七海さんがそこまで私のことを気にかけてくれるんだろう。
だけど、ふと思い出した。
『みなづき駅』で、宿儺の指を取り込んだ呪霊に遭遇して、私が重傷を負った時のことだ。
『私・・・自分の周りの人が、いなくなることばかり・・・考えてた。だって、いつも・・・私ばかりが・・・突然、置いてかれるばかりだったから・・・』
そう私が零した言葉を、七海さんは今も覚えているんだ。
「んー・・・」
七海さんに咎められるように言われて、さすがに五条さんもおちゃらけるのをやめて、考え込むように小さく唸った。
そして、
「でも、和紗が僕に言ったんだよね。『つるぎ庵』で僕のためにずっとずっと『あけづる』を作るって」
と、言った。
「それが何か?」
と、七海さん。
「だったら、絶対買いに行かなきゃならないだろ」
と、五条さん。
「約束なんだ。和紗が僕のために『あけづる』を作る。そして、僕がそれを買いに行く。何処に行ってもどんな任務に就いていても、そのためだけに、僕は必ず生きて戻る」
「・・・・・・」
「この先、僕と和紗の行きつくのがどこであっても、僕と和紗のその関係性は絶対に変わらない」
「・・・・・・」
「その約束がある限り、僕は絶対に和紗をひとりにさせない」
それじゃあ、ただの店と常連客の関係だ。
だけど、それはどんな愛の言葉よりも、例えプロポーズよりも、私にとって信じ得て幸福な言葉だった。
「・・・・・・」
聞き耳を立てながら、私は胸を焦がれて目が少し潤んだ。
「・・・やれやれ」
少しの沈黙を経て、七海さんが口を開いた。
「要するに胃袋を掴まれたってことですか」
「んー?そうなのかなぁ。それだと、和紗のおじいちゃんにってことになっちゃうけど・・・」
「もはやどうでもいいですよ」
七海さんは言った。
「存外、貴方の方が彼女にベタ惚れらしい」
「言ったでしょ?僕、純情一途なんだって」
「高専時代の貴方を見ていると、そんな印象は皆無ですがね」
「こらっ。人聞きの悪いこと言うんじゃないよ。和紗に聞こえたらどうすんの」
・・・ばっちり聞こえてます。
「・・・それに意外でした」
七海さんは言った。
「貴方がそれほどひとりの人間に固執するのが。私は貴方が他の誰も必要としないものだと思っていました」
「だから、僕そんな根暗じゃないって」
「この呪いとの闘いの世界にも、貴方がひとりいればいいと思ってました」
それは、どこか突き離すような言葉だった。
だけど、五条さんはヘッと鼻先で笑った。
「そう、僕最強だからね」
「・・・・・・」
「でも、無敵って訳じゃない。だから、僕には和紗が必要なんだ」
すると七海さんが、
「・・・申し訳なかったですね」
と言って、席を立つ気配がした。
「差し出がましいことを言って。おふたりのことに私などが立ち入る資格はないのに」
「後輩からのありがたぁい忠告と受け取っとくよ。っていうか、任務の報告は?ま、オマエが付いてたんだから滞りなく済んだんだろうけど」
「・・・それはまた明日に。貴方のノロケを聞いてそんな気分じゃなくなりました。それに、昨日の今日で私も今回の件について考えをまとめ切れていない」
「ふむ?」
「報告はまた明日高専で」
と、七海さんがリビングを出た気配がしたので、私も慌てて部屋を出た。
すると、廊下で七海さんと出くわした。
「おじゃましました」
と、七海さんは私に会釈した。
「・・・七海さん」
「何ですか」
「ありがとうございます。私のこと、心配してくれて・・・」
私がそう言うと、七海さんは少し驚きながらも何の事かすぐ察した様だった。
「・・・本当によかったんですか?」
そして、こう言った。
「以前にも話した通り、呪術師はいつどうなるかわからない立場です。それでも・・・」
「だからこそなんです」
私は七海さんの言葉を遮り言った。
「いつどうなるかわからない。だからこそ、後悔しないようにちゃんと気持ちを伝えようって思ったんです」
「・・・そうですか」
すると、七海さんは私に背を向けて玄関ドアの方へ歩き出した。
「それならば、私からはこれ以上話すことはありません。五条さん相手だと違う意味で気苦労も多いでしょうが、頑張って下さいね」
「はい・・・」
と、苦笑いする私の方に七海さんはもう一度振り向いて、
「『あけづる』、美味しかったです」
と言って、玄関ドアを開けて出て行った。
・・・それが、私が最後に聞いた七海さんの言葉だった。
どうして七海さんがそこまで私のことを気にかけてくれるんだろう。
だけど、ふと思い出した。
『みなづき駅』で、宿儺の指を取り込んだ呪霊に遭遇して、私が重傷を負った時のことだ。
『私・・・自分の周りの人が、いなくなることばかり・・・考えてた。だって、いつも・・・私ばかりが・・・突然、置いてかれるばかりだったから・・・』
そう私が零した言葉を、七海さんは今も覚えているんだ。
「んー・・・」
七海さんに咎められるように言われて、さすがに五条さんもおちゃらけるのをやめて、考え込むように小さく唸った。
そして、
「でも、和紗が僕に言ったんだよね。『つるぎ庵』で僕のためにずっとずっと『あけづる』を作るって」
と、言った。
「それが何か?」
と、七海さん。
「だったら、絶対買いに行かなきゃならないだろ」
と、五条さん。
「約束なんだ。和紗が僕のために『あけづる』を作る。そして、僕がそれを買いに行く。何処に行ってもどんな任務に就いていても、そのためだけに、僕は必ず生きて戻る」
「・・・・・・」
「この先、僕と和紗の行きつくのがどこであっても、僕と和紗のその関係性は絶対に変わらない」
「・・・・・・」
「その約束がある限り、僕は絶対に和紗をひとりにさせない」
それじゃあ、ただの店と常連客の関係だ。
だけど、それはどんな愛の言葉よりも、例えプロポーズよりも、私にとって信じ得て幸福な言葉だった。
「・・・・・・」
聞き耳を立てながら、私は胸を焦がれて目が少し潤んだ。
「・・・やれやれ」
少しの沈黙を経て、七海さんが口を開いた。
「要するに胃袋を掴まれたってことですか」
「んー?そうなのかなぁ。それだと、和紗のおじいちゃんにってことになっちゃうけど・・・」
「もはやどうでもいいですよ」
七海さんは言った。
「存外、貴方の方が彼女にベタ惚れらしい」
「言ったでしょ?僕、純情一途なんだって」
「高専時代の貴方を見ていると、そんな印象は皆無ですがね」
「こらっ。人聞きの悪いこと言うんじゃないよ。和紗に聞こえたらどうすんの」
・・・ばっちり聞こえてます。
「・・・それに意外でした」
七海さんは言った。
「貴方がそれほどひとりの人間に固執するのが。私は貴方が他の誰も必要としないものだと思っていました」
「だから、僕そんな根暗じゃないって」
「この呪いとの闘いの世界にも、貴方がひとりいればいいと思ってました」
それは、どこか突き離すような言葉だった。
だけど、五条さんはヘッと鼻先で笑った。
「そう、僕最強だからね」
「・・・・・・」
「でも、無敵って訳じゃない。だから、僕には和紗が必要なんだ」
すると七海さんが、
「・・・申し訳なかったですね」
と言って、席を立つ気配がした。
「差し出がましいことを言って。おふたりのことに私などが立ち入る資格はないのに」
「後輩からのありがたぁい忠告と受け取っとくよ。っていうか、任務の報告は?ま、オマエが付いてたんだから滞りなく済んだんだろうけど」
「・・・それはまた明日に。貴方のノロケを聞いてそんな気分じゃなくなりました。それに、昨日の今日で私も今回の件について考えをまとめ切れていない」
「ふむ?」
「報告はまた明日高専で」
と、七海さんがリビングを出た気配がしたので、私も慌てて部屋を出た。
すると、廊下で七海さんと出くわした。
「おじゃましました」
と、七海さんは私に会釈した。
「・・・七海さん」
「何ですか」
「ありがとうございます。私のこと、心配してくれて・・・」
私がそう言うと、七海さんは少し驚きながらも何の事かすぐ察した様だった。
「・・・本当によかったんですか?」
そして、こう言った。
「以前にも話した通り、呪術師はいつどうなるかわからない立場です。それでも・・・」
「だからこそなんです」
私は七海さんの言葉を遮り言った。
「いつどうなるかわからない。だからこそ、後悔しないようにちゃんと気持ちを伝えようって思ったんです」
「・・・そうですか」
すると、七海さんは私に背を向けて玄関ドアの方へ歩き出した。
「それならば、私からはこれ以上話すことはありません。五条さん相手だと違う意味で気苦労も多いでしょうが、頑張って下さいね」
「はい・・・」
と、苦笑いする私の方に七海さんはもう一度振り向いて、
「『あけづる』、美味しかったです」
と言って、玄関ドアを開けて出て行った。
・・・それが、私が最後に聞いた七海さんの言葉だった。