第21話 京都姉妹校交流会
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「よいしょ、と・・・」
暦が9月に入ったとはいえ、残暑はまだまだ厳しい。
数日間、主が不在の閉め切った部屋は熱気で蒸しかえっていた。
部屋中の窓を開け放ち、新鮮な空気を入れる。
空気が入れ替わったことを実感してから、
「よぉし、やりますか」
私は部屋の掃除に取り掛かった。
リビング、キッチン、トイレにお風呂、和室一間に洋室二部屋。
独り暮らしの部屋とは思えないほどの広さと部屋数だ。
今日、五条さんが海外出張から帰国する。
本人が帰宅する前に、部屋を綺麗にして出迎えようというわけだ。
「こんなものかなぁ」
あらかた片付いた部屋を見回していた時だった。
ピンポーン・・・
モニターフォンが鳴った。
(五条さんかな?)
部屋の主が帰ってきたと思って、私は嬉々としてモニターを覗き込んだ。
しかし、モニターに映っているのは、五条さんじゃなかった。
「・・・悠仁君?」
高専の制服ではなく、白いシャツにパーカーを羽織った私服姿。
左頬に大きな絆創膏を貼っている。
いつもと違う雰囲気。
だけど一番違うのはそんなことじゃなくて、いつもの元気で溌溂としたオーラがなく、すんと静かに佇んでいるのだ。
「悠仁君」
私は玄関ドアを開き、悠仁君を迎え入れた。
「和紗さん」
悠仁君は目を瞬かせた。
「五条先生は?いる?」
「まだ帰ってないの。もうすぐ帰って来ると思うんだけど」
「そっか。じゃ、上がって待たせてもらってもいい?」
「もちろん」
「おじゃましまーす」
そう言って、悠仁君は部屋に上がってリビングに向かった。
その様子は一見普通なんだけど、やっぱりいつもと違う。
「ここまでどうやって来たの?伊地知さんに車で送ってもらったの?」
と、悠仁君にお茶を差し出しながら、私は尋ねた。
「んーん。歩いてきた」
と、悠仁君は何てことないように答えた。
しかし、私は驚きの声を上げた。
「え。出歩いて大丈夫なの?高専関係者にみられちゃまずいんじゃ」
「でも、もう任務で結構あちこち出歩いてるけど」
「そうなの?」
「うん。それに俺、もうすぐ復学出来るみたいだし」
「そうなんだ!よかったね」
「おー」
と、悠仁君は笑顔を見せるものの、やっぱりどこかいつものような元気さがない。
(何かあったのかな)
そんな悠仁君が、
「おっ」
と、少し声を弾ませた。
「和紗さん、これって・・・」
と、テーブルの上に置いていた『あけづる』を指差した。
「うん。作って来たの。五条さんが食べると思って」
「呪力入りなの?」
「ううん。ただの和菓子の『あけづる』です」
「俺も食べていい?」
「もちろん」
「やったっ。いただきまーす」
と、早速悠仁君は『あけづる』ひとつを鷲掴みにしてかぶりついた。
「・・・・・・」
モグモグと咀嚼しゴクリと飲み込んだ後、
「うん・・・。やっぱり美味いや」
と、悠仁君は噛み締めるように言った。
「美味いよ、和紗さん。また腕上げたんじゃない?」
「そうかな?」
「うん、そうだよ」
悠仁君は言った。
「こんだけ美味かったら、別に呪力なんて籠ってなくてもいいよ」
唐突な言葉に、私は少し驚いて悠仁君の顔を見つめた。
悠仁君は握った食べかけの『あけづる』を見つめながら言葉を続けた。
「和紗さんの故郷の人達だってこれだけ美味い物食べてたら、自然と幸せな気分になってさ、『呪い』なんて生まれないよ」
「・・・・・・」
「だから、和紗さんが呪術を学ぶ必要なんてないよ」
「・・・悠仁君」
「俺は、和紗さんには呪術と関係のない世界にいてほしい」
「悠仁君?」
強く呼びかけると、悠仁君はハッとして我に返った。
「・・・ごめん。幸せな気分だったら呪いが生まれないとか、そんな理屈じゃないよな」
「・・・・・・」
「ホント、ごめん。必要ないなんて、和紗さんの頑張りを否定するようなこと・・・」
「どうしたの?」
私は悠仁君の言葉を遮り尋ねた。
「何かあったの?」
暦が9月に入ったとはいえ、残暑はまだまだ厳しい。
数日間、主が不在の閉め切った部屋は熱気で蒸しかえっていた。
部屋中の窓を開け放ち、新鮮な空気を入れる。
空気が入れ替わったことを実感してから、
「よぉし、やりますか」
私は部屋の掃除に取り掛かった。
リビング、キッチン、トイレにお風呂、和室一間に洋室二部屋。
独り暮らしの部屋とは思えないほどの広さと部屋数だ。
今日、五条さんが海外出張から帰国する。
本人が帰宅する前に、部屋を綺麗にして出迎えようというわけだ。
「こんなものかなぁ」
あらかた片付いた部屋を見回していた時だった。
ピンポーン・・・
モニターフォンが鳴った。
(五条さんかな?)
部屋の主が帰ってきたと思って、私は嬉々としてモニターを覗き込んだ。
しかし、モニターに映っているのは、五条さんじゃなかった。
「・・・悠仁君?」
高専の制服ではなく、白いシャツにパーカーを羽織った私服姿。
左頬に大きな絆創膏を貼っている。
いつもと違う雰囲気。
だけど一番違うのはそんなことじゃなくて、いつもの元気で溌溂としたオーラがなく、すんと静かに佇んでいるのだ。
「悠仁君」
私は玄関ドアを開き、悠仁君を迎え入れた。
「和紗さん」
悠仁君は目を瞬かせた。
「五条先生は?いる?」
「まだ帰ってないの。もうすぐ帰って来ると思うんだけど」
「そっか。じゃ、上がって待たせてもらってもいい?」
「もちろん」
「おじゃましまーす」
そう言って、悠仁君は部屋に上がってリビングに向かった。
その様子は一見普通なんだけど、やっぱりいつもと違う。
「ここまでどうやって来たの?伊地知さんに車で送ってもらったの?」
と、悠仁君にお茶を差し出しながら、私は尋ねた。
「んーん。歩いてきた」
と、悠仁君は何てことないように答えた。
しかし、私は驚きの声を上げた。
「え。出歩いて大丈夫なの?高専関係者にみられちゃまずいんじゃ」
「でも、もう任務で結構あちこち出歩いてるけど」
「そうなの?」
「うん。それに俺、もうすぐ復学出来るみたいだし」
「そうなんだ!よかったね」
「おー」
と、悠仁君は笑顔を見せるものの、やっぱりどこかいつものような元気さがない。
(何かあったのかな)
そんな悠仁君が、
「おっ」
と、少し声を弾ませた。
「和紗さん、これって・・・」
と、テーブルの上に置いていた『あけづる』を指差した。
「うん。作って来たの。五条さんが食べると思って」
「呪力入りなの?」
「ううん。ただの和菓子の『あけづる』です」
「俺も食べていい?」
「もちろん」
「やったっ。いただきまーす」
と、早速悠仁君は『あけづる』ひとつを鷲掴みにしてかぶりついた。
「・・・・・・」
モグモグと咀嚼しゴクリと飲み込んだ後、
「うん・・・。やっぱり美味いや」
と、悠仁君は噛み締めるように言った。
「美味いよ、和紗さん。また腕上げたんじゃない?」
「そうかな?」
「うん、そうだよ」
悠仁君は言った。
「こんだけ美味かったら、別に呪力なんて籠ってなくてもいいよ」
唐突な言葉に、私は少し驚いて悠仁君の顔を見つめた。
悠仁君は握った食べかけの『あけづる』を見つめながら言葉を続けた。
「和紗さんの故郷の人達だってこれだけ美味い物食べてたら、自然と幸せな気分になってさ、『呪い』なんて生まれないよ」
「・・・・・・」
「だから、和紗さんが呪術を学ぶ必要なんてないよ」
「・・・悠仁君」
「俺は、和紗さんには呪術と関係のない世界にいてほしい」
「悠仁君?」
強く呼びかけると、悠仁君はハッとして我に返った。
「・・・ごめん。幸せな気分だったら呪いが生まれないとか、そんな理屈じゃないよな」
「・・・・・・」
「ホント、ごめん。必要ないなんて、和紗さんの頑張りを否定するようなこと・・・」
「どうしたの?」
私は悠仁君の言葉を遮り尋ねた。
「何かあったの?」
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