第20話 わたしは呪い
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(ダメ・・・!)
私はハッとして手を今やバケモノになった女に向けて伸ばした。
そして、そのまま女の頭部に手刀を突き刺して貫通させた。
「ウゥ・・・」
バケモノとなった女は即こと切れて、男の子に覆いかぶさるように倒れ込んだ。
「おかあさん・・・」
男の子は、母親だった肉体を揺らす。
「おかあさん・・・おかあさ・・・うわぁぁぁ・・・」
やがて母親は息絶えたのだと気づき、嗚咽した。
その側で私は女の頭部から自分の腕を引き抜き、
「・・・はぁ」
と、安堵してひとつ息を吐いた。
すると、
「なんで邪魔したの?」
声を掛けられて、私はさっきからそこにいた『彼』の方へ視線を向けた。
水色の長い髪。
ツギハギの顔と大きな体躯。
左右で色が異なるオッドアイ。
一瞬、人間かと見紛うような容姿だ。
だけど、私にはわかった。
彼は『呪い』だ。
私と同じ、美しく賢く気高い、真の『呪い』。
やっと、会えた。
彼の姿を目にした時、そんなときめきに似た思いが胸に溢れた。
「このままひとり生き残ってもいいことなんてないのにさ」
彼は言った。
「それならせめて母親の手でこの世を去る方が、この子どもにとって良かったと思わなかった?」
「これは貴方の仕業?」
私は彼の問いかけを無視して質問した。
無残に肉体の形を変えられる・・・ううん、変えられるのは肉体じゃなくて・・・。
「うん、そうだよ」
彼は頷いた。
「俺の術式は、魂の形を変える。肉体の変容はその後に付随する現象だ」
「魂の形・・・」
「で、どうする?このコ」
と、彼は未だに母親の肉体に縋りつき泣きじゃくる男の子に視線を向けた。
「君が殺す?このままじゃ可哀想でしょ?」
「・・・殺さないわ」
「え、マジ?」
「だって、この子から『呪い』を感じられないもの」
私は男の子の横顔を見つめながら言った。
「あんな酷い目に遭わされたのに、酷いことを言われたのに、誰も呪っていない。それどころか、こんな母親を・・・」
すると、彼はフームと思案顔をした。
「・・・人間が好む言葉に『無償の愛』っていうのがある」
「・・・愛?」
「うん。一般的に、親が我が子に向ける感情がそれだと言われているらしい」
「・・・・・・」
それを聞いて、再び糠田が森の過去と現在で見た母子の光景が目に浮かんだ。
「でも、俺は違うと思うんだよね」
彼は言った。
「『無償の愛』は、子どもから親に注がれるものだよ」
「・・・・・・」
「それを思い上がって勘違いした親はこんなひどい過ちを犯す。そして、子どもの『無償の愛』は終わりのない『呪い』に変わっていくのさ」
「・・・・・・」
「愛ほど歪んだ呪いはないからね」
「・・・・・・」
「ま、このまま見逃しておくのも面白いかもしれない」
「・・・・・・」
「見たことのない『呪い』がこの子どもから産まれるかもしれないからね」
そう言った後、彼は窓をすり抜けてそのまま外へ出て行った。
「ちょ、ちょっと・・・!」
私は慌てて彼を追いかけるべく外へ出た。
「待って!」
私が声をかけると、彼は立ち止まり振り返った。
「何?なんでついてくるの?」
「私、貴方と一緒にいたい!」
私は即座に答えた。
「つれていって。貴方が行くところへ」
すると、彼はキョトンとしながらも踵を返し私の目の前へ戻ってきた。
「俺といたい?」
そして、そっと私の頬を撫でた。
「どうしてそんなこと?」
「・・・私、貴方のことを好きになったみたい」
そう私が言うと、彼はまたキョトンとした後、ゲラゲラと笑い出した。
私はムッとして尋ねた。
「どうして笑うの?」
「だって、俺たちは『呪い』だよ?色恋沙汰の恨みつらみで産まれた呪霊は、そういう感情を持つことがあるらしいけど・・・。君はそんな類いじゃないだろ?好きってそんな感情を持ち合わせることがおかしくない?」
「おかしくないわ」
私は言った。
「だって、愛ほど歪んだ呪いはないもの」
すると、お腹を抱えてヒーヒー笑い転げていた彼は、私の言葉が腑に落ちたのか真顔に戻って言った。
「・・・俺は真人。君の名は?」
私はハッとして手を今やバケモノになった女に向けて伸ばした。
そして、そのまま女の頭部に手刀を突き刺して貫通させた。
「ウゥ・・・」
バケモノとなった女は即こと切れて、男の子に覆いかぶさるように倒れ込んだ。
「おかあさん・・・」
男の子は、母親だった肉体を揺らす。
「おかあさん・・・おかあさ・・・うわぁぁぁ・・・」
やがて母親は息絶えたのだと気づき、嗚咽した。
その側で私は女の頭部から自分の腕を引き抜き、
「・・・はぁ」
と、安堵してひとつ息を吐いた。
すると、
「なんで邪魔したの?」
声を掛けられて、私はさっきからそこにいた『彼』の方へ視線を向けた。
水色の長い髪。
ツギハギの顔と大きな体躯。
左右で色が異なるオッドアイ。
一瞬、人間かと見紛うような容姿だ。
だけど、私にはわかった。
彼は『呪い』だ。
私と同じ、美しく賢く気高い、真の『呪い』。
やっと、会えた。
彼の姿を目にした時、そんなときめきに似た思いが胸に溢れた。
「このままひとり生き残ってもいいことなんてないのにさ」
彼は言った。
「それならせめて母親の手でこの世を去る方が、この子どもにとって良かったと思わなかった?」
「これは貴方の仕業?」
私は彼の問いかけを無視して質問した。
無残に肉体の形を変えられる・・・ううん、変えられるのは肉体じゃなくて・・・。
「うん、そうだよ」
彼は頷いた。
「俺の術式は、魂の形を変える。肉体の変容はその後に付随する現象だ」
「魂の形・・・」
「で、どうする?このコ」
と、彼は未だに母親の肉体に縋りつき泣きじゃくる男の子に視線を向けた。
「君が殺す?このままじゃ可哀想でしょ?」
「・・・殺さないわ」
「え、マジ?」
「だって、この子から『呪い』を感じられないもの」
私は男の子の横顔を見つめながら言った。
「あんな酷い目に遭わされたのに、酷いことを言われたのに、誰も呪っていない。それどころか、こんな母親を・・・」
すると、彼はフームと思案顔をした。
「・・・人間が好む言葉に『無償の愛』っていうのがある」
「・・・愛?」
「うん。一般的に、親が我が子に向ける感情がそれだと言われているらしい」
「・・・・・・」
それを聞いて、再び糠田が森の過去と現在で見た母子の光景が目に浮かんだ。
「でも、俺は違うと思うんだよね」
彼は言った。
「『無償の愛』は、子どもから親に注がれるものだよ」
「・・・・・・」
「それを思い上がって勘違いした親はこんなひどい過ちを犯す。そして、子どもの『無償の愛』は終わりのない『呪い』に変わっていくのさ」
「・・・・・・」
「愛ほど歪んだ呪いはないからね」
「・・・・・・」
「ま、このまま見逃しておくのも面白いかもしれない」
「・・・・・・」
「見たことのない『呪い』がこの子どもから産まれるかもしれないからね」
そう言った後、彼は窓をすり抜けてそのまま外へ出て行った。
「ちょ、ちょっと・・・!」
私は慌てて彼を追いかけるべく外へ出た。
「待って!」
私が声をかけると、彼は立ち止まり振り返った。
「何?なんでついてくるの?」
「私、貴方と一緒にいたい!」
私は即座に答えた。
「つれていって。貴方が行くところへ」
すると、彼はキョトンとしながらも踵を返し私の目の前へ戻ってきた。
「俺といたい?」
そして、そっと私の頬を撫でた。
「どうしてそんなこと?」
「・・・私、貴方のことを好きになったみたい」
そう私が言うと、彼はまたキョトンとした後、ゲラゲラと笑い出した。
私はムッとして尋ねた。
「どうして笑うの?」
「だって、俺たちは『呪い』だよ?色恋沙汰の恨みつらみで産まれた呪霊は、そういう感情を持つことがあるらしいけど・・・。君はそんな類いじゃないだろ?好きってそんな感情を持ち合わせることがおかしくない?」
「おかしくないわ」
私は言った。
「だって、愛ほど歪んだ呪いはないもの」
すると、お腹を抱えてヒーヒー笑い転げていた彼は、私の言葉が腑に落ちたのか真顔に戻って言った。
「・・・俺は真人。君の名は?」