第19話 まぼろしの家族
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
五条さんは両足をベッドの外側に投げ出して、縁に座り直した。
「呪術界ってのは手堅い業界でね。何せ人間が存在する限り呪いも存在するから食いっぱぐれがない。だから、呪霊を祓っても撲滅させることはタブーなんだ」
「・・・そんな・・・」
「そんな風に阿漕な商売で甘い汁を吸い続けて、上層部の連中は腐敗。奴らの頭にあるのは世襲や出世の事ばかり。人材確保や育成の事なんか興味ナシ。呪術界は手堅い業界だけど、実は担い手不足の先細りの業界 でもある」
「・・・・・・」
「そんな世界で、いつも犠牲になるのは、現場に赴く若い術師さ」
ポツリと零すように五条さんは言った。
「呪霊や呪詛師にやられなくても、助けるべき弱者であるはずの非術師の醜悪さに心を折られる術師もいる」
それは、誰。
そんなこと疑問に抱かなくても、すぐにわかった。
(五条さんの、親友・・・)
私は起き出して、五条さんの隣に寄り添うように座った。
「嘆かわしい世界だよ。だけど、こんな世界でも僕は夢があるんだ」
「夢?」
「うん」
五条さんは頷いた。
「強く聡い仲間を育てること」
───その瞬間、悠仁君、伏黒君、野薔薇ちゃんの顔が思い浮かんだ。
「そして、この呪術界をリセットする。この世界の仕組みを変えるんだ」
五条さんは真っ直ぐな目で続けた。
「一朝一夕で出来ることじゃない。だけど、必ず成し遂げて見せる。その時は、きっと糠田が森の呪いを解く方法だってみつけだせるはずさ」
「・・・・・・」
「だから、それまで和紗も踏ん張って。自分に今出来ることを、自分の場所で、小さなことでいいから」
そう言いながら、五条さんは再び私を抱き寄せた。
「この世界に立ち向かっているのは、和紗独りじゃない」
「・・・・・・」
「和紗は、独りじゃない」
抱き締めた腕ににわかに力がこもる。
その腕の中で、私は静かに一筋の涙を流した。
あたたかい。独りじゃない。
その実感が、伝わる五条さんの体温と共に広がっていく。
だけど。
五条さんはそれ以上の期待をさせるようなことは絶対に言わない。
ずっと一緒にいようだとか、そんな言葉は絶対に言わない。
それも、私の為なんでしょう?
私が故郷へ帰る時、心迷わない為に。
優しい人。
だけど、残酷な人。
「・・・五条さん」
私は言った。
「私、『あけづる』を創ります」
あの日、『額多ヶ守』の前で誓った時と同じように。
「糠田が森の呪いが解けるまで、私は『あけづる』を創り続けます」
あの時、自分に言い聞かせたはずだ。
涙を流す時間は必要ないと。
だから、もう一度。
「糠田が森の呪いが解けても、私は『あけづる』を創り続けます」
私は涙を拭った。
これからは、もう絶対に泣いたりしない。
「五条さんがいつでも来てもいいように、『つるぎ庵』で『あけづる』を創り続けます」
私は為すべきことがあるから。
居るべき場所があるから。
「私は五条さんが好きだから」
それをあなたが教えてくれたから。
「『あけづる』を創り続けます。ずっと、ずっと」
すると、五条さんは目をすがめて微笑んだ。
「・・・うん」
だけど、その微笑みは、どこか寂しそうに見えた。
五条さんは私の顎に指を添えて、顔を上に向けさせた。
そして、唇に唇を近づけて囁く。
「僕も和紗を愛し・・・」
「ちょ、ちょっと待ってーーー!!」
私はグッと両手を伸ばして五条さんを押し退けた。
すると、五条さんは不服そうに訴えてきた。
「待ってって、なんでなの。フツーはこのタイミングでキスでしょ?」
「そ、その、あ、愛してるって・・・」
「ん?」
「一体、いつからなんですか?その・・・五条さんが私を好きに、なったのって・・・」
私がそう言うと、五条さんはキョトンとする。
「呪術界ってのは手堅い業界でね。何せ人間が存在する限り呪いも存在するから食いっぱぐれがない。だから、呪霊を祓っても撲滅させることはタブーなんだ」
「・・・そんな・・・」
「そんな風に阿漕な商売で甘い汁を吸い続けて、上層部の連中は腐敗。奴らの頭にあるのは世襲や出世の事ばかり。人材確保や育成の事なんか興味ナシ。呪術界は手堅い業界だけど、実は担い手不足の先細りの
「・・・・・・」
「そんな世界で、いつも犠牲になるのは、現場に赴く若い術師さ」
ポツリと零すように五条さんは言った。
「呪霊や呪詛師にやられなくても、助けるべき弱者であるはずの非術師の醜悪さに心を折られる術師もいる」
それは、誰。
そんなこと疑問に抱かなくても、すぐにわかった。
(五条さんの、親友・・・)
私は起き出して、五条さんの隣に寄り添うように座った。
「嘆かわしい世界だよ。だけど、こんな世界でも僕は夢があるんだ」
「夢?」
「うん」
五条さんは頷いた。
「強く聡い仲間を育てること」
───その瞬間、悠仁君、伏黒君、野薔薇ちゃんの顔が思い浮かんだ。
「そして、この呪術界をリセットする。この世界の仕組みを変えるんだ」
五条さんは真っ直ぐな目で続けた。
「一朝一夕で出来ることじゃない。だけど、必ず成し遂げて見せる。その時は、きっと糠田が森の呪いを解く方法だってみつけだせるはずさ」
「・・・・・・」
「だから、それまで和紗も踏ん張って。自分に今出来ることを、自分の場所で、小さなことでいいから」
そう言いながら、五条さんは再び私を抱き寄せた。
「この世界に立ち向かっているのは、和紗独りじゃない」
「・・・・・・」
「和紗は、独りじゃない」
抱き締めた腕ににわかに力がこもる。
その腕の中で、私は静かに一筋の涙を流した。
あたたかい。独りじゃない。
その実感が、伝わる五条さんの体温と共に広がっていく。
だけど。
五条さんはそれ以上の期待をさせるようなことは絶対に言わない。
ずっと一緒にいようだとか、そんな言葉は絶対に言わない。
それも、私の為なんでしょう?
私が故郷へ帰る時、心迷わない為に。
優しい人。
だけど、残酷な人。
「・・・五条さん」
私は言った。
「私、『あけづる』を創ります」
あの日、『額多ヶ守』の前で誓った時と同じように。
「糠田が森の呪いが解けるまで、私は『あけづる』を創り続けます」
あの時、自分に言い聞かせたはずだ。
涙を流す時間は必要ないと。
だから、もう一度。
「糠田が森の呪いが解けても、私は『あけづる』を創り続けます」
私は涙を拭った。
これからは、もう絶対に泣いたりしない。
「五条さんがいつでも来てもいいように、『つるぎ庵』で『あけづる』を創り続けます」
私は為すべきことがあるから。
居るべき場所があるから。
「私は五条さんが好きだから」
それをあなたが教えてくれたから。
「『あけづる』を創り続けます。ずっと、ずっと」
すると、五条さんは目をすがめて微笑んだ。
「・・・うん」
だけど、その微笑みは、どこか寂しそうに見えた。
五条さんは私の顎に指を添えて、顔を上に向けさせた。
そして、唇に唇を近づけて囁く。
「僕も和紗を愛し・・・」
「ちょ、ちょっと待ってーーー!!」
私はグッと両手を伸ばして五条さんを押し退けた。
すると、五条さんは不服そうに訴えてきた。
「待ってって、なんでなの。フツーはこのタイミングでキスでしょ?」
「そ、その、あ、愛してるって・・・」
「ん?」
「一体、いつからなんですか?その・・・五条さんが私を好きに、なったのって・・・」
私がそう言うと、五条さんはキョトンとする。