第19話 まぼろしの家族
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すると、五条さんのサングラス越しの瞳が動揺したように小さく揺らいだ。
私は、顔を横に逸らして言葉を続けた。
「愛してるなんて言ったって、どうせ違う世界の人なのに・・・いつか私から離れていくのに・・!もうこれ以上、私に関わらないで・・・。もう、私を放っておいて・・・!」
だけど、五条さんは私のそばから離れようとはしなかった。
「和紗」
そしてもう一度、今度は私を抱き寄せて言った。
「結婚しよう」
五条さんの腕の中で、私はゆっくりと顔を上げて五条さんの顔を見た。
目が合うと、五条さんはにっこりと微笑みながらもう一度言った。
「結婚しようよ。そして、僕の奥さんになってよ」
こんな時にまで何の冗談を。
怒りを通り越して呆然としてる間にも、五条さんは話し続けた。
「『あけづる』も創れないなら無理しなくていいよ。お店をやりたいなら東京でやればいいし。そりゃあ『あけづる』と『つるぎ庵』を失った糠田が森は大変なことになるだろうけど、それも仕方のないことだよ。毎日どこかで人は呪いによって死んでるし」
「・・・何・・・」
「呪いによってでなくても、理不尽に人は死ぬ。病気で事故で事件で災害で戦争で」
五条さんは淡々とした口調で続けた。
「悲しいことだとは思っても、それに対してひとつひとつ涙を流したりしないでしょ。糠田が森で起こることも一緒だよ。最初は悲しくて涙を流しても、そのうちどうしようもないことだって思うようになる」
「・・・何言って・・・」
そう言った五条さんの目はとても綺麗に澄んでいて、それがとても恐ろしく思えた。
「それに、おじいちゃんも言ってたよ。和紗には『つるぎ庵』に縛られず、自分とは違う生き方をしてほしいって」
「・・・・・・」
「あの小さな村のために、和紗は自分を犠牲にする必要はないんだ。だから、僕と結婚・・・」
カシャン・・・ッ
頬をひとつ打った。
その弾みで、五条さんのサングラスが吹っ飛んで床に落ちた。
「・・・どうして、そんなこと言うの?」
打ったのは、私だ。
「呪いで人が死ぬことが仕方ないことだなんて、どうしてそんな無責任なこと言うの?あなたは呪術師なんでしょ?最強なんでしょ!?それなのに・・・」
すると、何のフィルターもない五条さんの眼が私を捉えた。
その視線の鋭さに、私は思わず怯む。
「・・・・・・・」
五条さんは私に打たれて赤くなった頬をそっと指先でなぞると、
「何?八つ当たりの上、責任転嫁?」
と言った。
その声のトーンの冷たさに、私は凍りつく。
五条さんは追い立てるように次々と言葉を続けた。
「そうだよね。八つ当たりでもしなきゃやりきれないよね。「私が糠田が森を護る!」なんて息巻いて旅立ったのに、思うように『あけづる』を創ることが出来なくて諦めて、そのうえ当てにしていた父親には拒否されたとあっちゃあやりきれないよね」
「・・・・・・」
「確かに君の言う通りだよ。呪いを祓うのは呪術師 の仕事だ。糠田が森の呪いも何百年前から存在しているのに、未だに祓う方法も見いだせないのは僕らの責任だよ」
「・・・・・・」
「・・・このクソ呪術界の責任さ」
そう吐き捨てるように、五条さんは言った。
さっきまでの冷淡なトーンとは違う。
そう、この人はどうしようもないなんて思っていない。どうしようもなく、怒っているのだ。
すると私の中の怯えは消えて、私は五条さんを真っ直ぐに見つめた。
五条さんは少し俯き加減だったのが、私の視線に気づくと顔を上げて、
「ごめん、言い過ぎた」
と、小さく笑った。
「でも、呪術界がクソっていうのは本音だよ」
「・・・・・・」
「僕らがずっとしていることはただの対症療法だ。その都度呪霊を祓う・・・その術式 は長い歴史の中で幾つも編み出してきたのに、呪霊そのものを出現させない原因療法は何ひとつ編み出されていない」
「それは・・・」
「不可能だからとかそういう理由じゃない。そんな方法があると困る連中がいるからだ」
「・・・・・・」
「呪いがなくなると、困る奴らがいるからだ」
私は、顔を横に逸らして言葉を続けた。
「愛してるなんて言ったって、どうせ違う世界の人なのに・・・いつか私から離れていくのに・・!もうこれ以上、私に関わらないで・・・。もう、私を放っておいて・・・!」
だけど、五条さんは私のそばから離れようとはしなかった。
「和紗」
そしてもう一度、今度は私を抱き寄せて言った。
「結婚しよう」
五条さんの腕の中で、私はゆっくりと顔を上げて五条さんの顔を見た。
目が合うと、五条さんはにっこりと微笑みながらもう一度言った。
「結婚しようよ。そして、僕の奥さんになってよ」
こんな時にまで何の冗談を。
怒りを通り越して呆然としてる間にも、五条さんは話し続けた。
「『あけづる』も創れないなら無理しなくていいよ。お店をやりたいなら東京でやればいいし。そりゃあ『あけづる』と『つるぎ庵』を失った糠田が森は大変なことになるだろうけど、それも仕方のないことだよ。毎日どこかで人は呪いによって死んでるし」
「・・・何・・・」
「呪いによってでなくても、理不尽に人は死ぬ。病気で事故で事件で災害で戦争で」
五条さんは淡々とした口調で続けた。
「悲しいことだとは思っても、それに対してひとつひとつ涙を流したりしないでしょ。糠田が森で起こることも一緒だよ。最初は悲しくて涙を流しても、そのうちどうしようもないことだって思うようになる」
「・・・何言って・・・」
そう言った五条さんの目はとても綺麗に澄んでいて、それがとても恐ろしく思えた。
「それに、おじいちゃんも言ってたよ。和紗には『つるぎ庵』に縛られず、自分とは違う生き方をしてほしいって」
「・・・・・・」
「あの小さな村のために、和紗は自分を犠牲にする必要はないんだ。だから、僕と結婚・・・」
カシャン・・・ッ
頬をひとつ打った。
その弾みで、五条さんのサングラスが吹っ飛んで床に落ちた。
「・・・どうして、そんなこと言うの?」
打ったのは、私だ。
「呪いで人が死ぬことが仕方ないことだなんて、どうしてそんな無責任なこと言うの?あなたは呪術師なんでしょ?最強なんでしょ!?それなのに・・・」
すると、何のフィルターもない五条さんの眼が私を捉えた。
その視線の鋭さに、私は思わず怯む。
「・・・・・・・」
五条さんは私に打たれて赤くなった頬をそっと指先でなぞると、
「何?八つ当たりの上、責任転嫁?」
と言った。
その声のトーンの冷たさに、私は凍りつく。
五条さんは追い立てるように次々と言葉を続けた。
「そうだよね。八つ当たりでもしなきゃやりきれないよね。「私が糠田が森を護る!」なんて息巻いて旅立ったのに、思うように『あけづる』を創ることが出来なくて諦めて、そのうえ当てにしていた父親には拒否されたとあっちゃあやりきれないよね」
「・・・・・・」
「確かに君の言う通りだよ。呪いを祓うのは
「・・・・・・」
「・・・このクソ呪術界の責任さ」
そう吐き捨てるように、五条さんは言った。
さっきまでの冷淡なトーンとは違う。
そう、この人はどうしようもないなんて思っていない。どうしようもなく、怒っているのだ。
すると私の中の怯えは消えて、私は五条さんを真っ直ぐに見つめた。
五条さんは少し俯き加減だったのが、私の視線に気づくと顔を上げて、
「ごめん、言い過ぎた」
と、小さく笑った。
「でも、呪術界がクソっていうのは本音だよ」
「・・・・・・」
「僕らがずっとしていることはただの対症療法だ。その都度呪霊を祓う・・・その
「それは・・・」
「不可能だからとかそういう理由じゃない。そんな方法があると困る連中がいるからだ」
「・・・・・・」
「呪いがなくなると、困る奴らがいるからだ」