第19話 まぼろしの家族
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「ごめんなさい。急に尋ねて来たりして」
と、私は言った。
「閉店後にまた来ます」
「いや、大丈夫だよ」
お父さんはカウンターから出てきて、私の前にやって来た。
「仕込みも客足も落ち着いてきたところだし。ただ、接客係が休憩中で不在でね。店を離れることは出来ないんだ。接客係が戻るまでここで待っててもらっていいかな?」
「うん・・・」
「・・・で、貴方はどなたですか?」
と、お父さんは五条さんに目を向けた。
「どぉもどぉも〜。初めまして、お義父さん」
待ってましたとばかりに、五条さんは自己紹介を始めた。
「僕は五条悟といいます。歳は28歳。職業は都立呪術高専教師。好きなものは甘いもの。苦手なものはアルコール。特技は何でもこなせるので特にナシ」
「はぁ」
「ずっと行方知れずだったお義父さんが十数年ぶりに見つかったってことで、婿入りの御挨拶に馳せ参じました~」
「婿入り?」
「ちがーう!」
私はふたりの間に割って入り、会話を中断させた。
「五条さん!話がややこしくなるから余計なことは言わないでください!」
「え?これが本題じゃなくて?」
「んなわけないでしょっ」
「和紗・・・お前」
名前を呼ばれてお父さんの顔を見てみると、お父さんは何故か感涙して目を潤ませている。
「婿入りって、こないだ会った伏黒君のことはボーイフレンドじゃないって否定してホッとしていたのに。今日は婿をつれてくるなんて、父さん感情が追っつかないよ・・・」
「恵?彼は僕の教え子の青二才ですよー。ボーイフレンドなんてとんでもない」
「そうなんですか。五条さん、教師っておっしゃってましたね。こんなしっかりした人が和紗の婿になってくれるならひと安心だ・・・」
しっかり?どこをどう見てそんな感想が?
(むしろ、こんな胡散臭い目隠し男を連れてきたら不安しかないはずでしょ)
と呆れて果てていたら、
「でも五条さん、わざわざ御挨拶に来てもらったのに申し訳ないんですが、僕に婿入りを認める権限はないんです。もう僕は鶴來家の人間ではないので」
お父さんが言った。
「お恥ずかしい話ですが、僕は先代の当主である父に勘当されたんです。それに、何年も和紗を糠田が森に残して、自分は勝手気ままにやってきた・・・。そんな僕が、認めるとか認めないとか言う権利はないですよ」
「それじゃあ・・・」
「僕としては、和紗を幸せにしてくれるなら何も言うことはありません」
と、お父さんは満足げに笑った。
「・・・・・・」
私が幸せであればいいなんて、私には自己満足で勝手な思い込みに思えた。
「違うの」
少しの苛立ちを覚えながら、私は口を開いた。
「そんなことを話しに来たんじゃないの」
お父さんの表情から笑みが消えた。
私は意を決して切り出した。
「お父さん。五条さんは呪術師なの」
「え・・・」
唐突な話に、お父さんは戸惑いの声を上げる。
だけど、私は構わず続けた。
「日本で起きる行方不明事件や怪死事件の原因は、そのおおよそが呪霊の仕業と言われているの。恐怖や悲しみや憎しみ・・・人間の負の感情が澱重なって呪いとなり、それが具現化したものが呪霊と呼ばれるバケモノなの」
「・・・・・・」
「その呪霊の被害から人々を護るのが呪術師・・・五条さん達なの」
「・・・・・・」
「お父さんが見えていた糠田が森を徘徊するバケモノも、そうした呪霊の一種で、『額多之君』に生贄を捧げた母親たちの悲しみや苦しみから生まれた呪霊なの」
「・・・・・・」
「その糠田が森の呪霊は、長年土地に染み付いた呪いのせいで祓えない。だから、おじいちゃんが『つるぎ庵』で『あけづる』を作ることで呪霊を抑制して、『あけづる』を村の人々に食べさせることで呪霊から護ってきたの。だけど、おじいちゃんがいなくなった今、『つるぎ庵』も『あけづる』も失って、糠田が森の呪霊はどんどん強大になってきてる・・・」
そう話す私の脳裏に、あの女型呪霊の顔が浮かんだ。
「このままじゃ手に負えなくなって、糠田が森の皆に被害が及んでしまう。だから、だから・・・」
と、私は言った。
「閉店後にまた来ます」
「いや、大丈夫だよ」
お父さんはカウンターから出てきて、私の前にやって来た。
「仕込みも客足も落ち着いてきたところだし。ただ、接客係が休憩中で不在でね。店を離れることは出来ないんだ。接客係が戻るまでここで待っててもらっていいかな?」
「うん・・・」
「・・・で、貴方はどなたですか?」
と、お父さんは五条さんに目を向けた。
「どぉもどぉも〜。初めまして、お義父さん」
待ってましたとばかりに、五条さんは自己紹介を始めた。
「僕は五条悟といいます。歳は28歳。職業は都立呪術高専教師。好きなものは甘いもの。苦手なものはアルコール。特技は何でもこなせるので特にナシ」
「はぁ」
「ずっと行方知れずだったお義父さんが十数年ぶりに見つかったってことで、婿入りの御挨拶に馳せ参じました~」
「婿入り?」
「ちがーう!」
私はふたりの間に割って入り、会話を中断させた。
「五条さん!話がややこしくなるから余計なことは言わないでください!」
「え?これが本題じゃなくて?」
「んなわけないでしょっ」
「和紗・・・お前」
名前を呼ばれてお父さんの顔を見てみると、お父さんは何故か感涙して目を潤ませている。
「婿入りって、こないだ会った伏黒君のことはボーイフレンドじゃないって否定してホッとしていたのに。今日は婿をつれてくるなんて、父さん感情が追っつかないよ・・・」
「恵?彼は僕の教え子の青二才ですよー。ボーイフレンドなんてとんでもない」
「そうなんですか。五条さん、教師っておっしゃってましたね。こんなしっかりした人が和紗の婿になってくれるならひと安心だ・・・」
しっかり?どこをどう見てそんな感想が?
(むしろ、こんな胡散臭い目隠し男を連れてきたら不安しかないはずでしょ)
と呆れて果てていたら、
「でも五条さん、わざわざ御挨拶に来てもらったのに申し訳ないんですが、僕に婿入りを認める権限はないんです。もう僕は鶴來家の人間ではないので」
お父さんが言った。
「お恥ずかしい話ですが、僕は先代の当主である父に勘当されたんです。それに、何年も和紗を糠田が森に残して、自分は勝手気ままにやってきた・・・。そんな僕が、認めるとか認めないとか言う権利はないですよ」
「それじゃあ・・・」
「僕としては、和紗を幸せにしてくれるなら何も言うことはありません」
と、お父さんは満足げに笑った。
「・・・・・・」
私が幸せであればいいなんて、私には自己満足で勝手な思い込みに思えた。
「違うの」
少しの苛立ちを覚えながら、私は口を開いた。
「そんなことを話しに来たんじゃないの」
お父さんの表情から笑みが消えた。
私は意を決して切り出した。
「お父さん。五条さんは呪術師なの」
「え・・・」
唐突な話に、お父さんは戸惑いの声を上げる。
だけど、私は構わず続けた。
「日本で起きる行方不明事件や怪死事件の原因は、そのおおよそが呪霊の仕業と言われているの。恐怖や悲しみや憎しみ・・・人間の負の感情が澱重なって呪いとなり、それが具現化したものが呪霊と呼ばれるバケモノなの」
「・・・・・・」
「その呪霊の被害から人々を護るのが呪術師・・・五条さん達なの」
「・・・・・・」
「お父さんが見えていた糠田が森を徘徊するバケモノも、そうした呪霊の一種で、『額多之君』に生贄を捧げた母親たちの悲しみや苦しみから生まれた呪霊なの」
「・・・・・・」
「その糠田が森の呪霊は、長年土地に染み付いた呪いのせいで祓えない。だから、おじいちゃんが『つるぎ庵』で『あけづる』を作ることで呪霊を抑制して、『あけづる』を村の人々に食べさせることで呪霊から護ってきたの。だけど、おじいちゃんがいなくなった今、『つるぎ庵』も『あけづる』も失って、糠田が森の呪霊はどんどん強大になってきてる・・・」
そう話す私の脳裏に、あの女型呪霊の顔が浮かんだ。
「このままじゃ手に負えなくなって、糠田が森の皆に被害が及んでしまう。だから、だから・・・」