第18話 帰郷
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正式に立ち入り禁止にされた『額多ヶ守』の周辺は、新しい御影石の瑞垣に囲まれていた。
だけど生い茂る木々はそのままで、鬱蒼とした雰囲気は変わらない。
「ここは、相変わらず何も変わってないな」
私と同じことを思っていたのか、お父さんがそう呟いた。
「・・・いや。変わってないのは『つるぎ庵』以外全部だな。この糠田が森は何も変わってない・・・」
それは、嬉しいのではなく忌々しいと言いたげな口調だった。
「・・・・・・」
お父さんは、どこまで知っているのだろう。
『額多之君』の伝説。
捧げられた生贄の子ども達。
子どもを捧げざるを得なかった母親達の無念。
その無念が『呪い』となって、糠田が森の土地に染み付いていること。
その『呪い』を抑制する役割である『つるぎ庵』。
そして、『呪い』から人々を護る『あけづる』・・・真の名は『明埜乃舞降鶴乃御砡 』。
それを造り出した『造砡師』。
その子孫である私たちだけが、『あけづる』を造ることが出来ることを。
「───っ」
問いかけようと、口を開きかけては閉ざすのをもう何度も繰り返している。
そんな繰り返しの幾度目の時だった。
「鶴來さん」
名前を呼ばれて振り返る。
するとそこには、伏黒君が立っていた。
「伏黒君!」
私は伏黒君の元に駆け寄った。
「ホントに来てくれたんだ」
「まぁ、定期巡回もありますし・・・」
と、伏黒君はお父さんに気づいて、そちらに視線を向けた。
「君は・・・」
と、声をかけたのはお父さんの方だった。
「和紗の友達かな?糠田が森の子かい?誰だったっけ、すっかり大きくなってわからないなぁ」
「いえ、自分は東京から・・・」
と、伏黒君は戸惑い気味に私の方は視線を向けた。
その意味を汲み取って、私は答えた。
「私のお父さんなの」
すると、伏黒君は驚いたように短く息を飲んだ。
だけどそれは一瞬のことで、すぐにいつものポーカーフェイスに戻り、
「俺、どこか他所に行ってます」
と、立ち去ろうとするのを、
「・・・あ」
私は無意識のうちに伏黒君の手を引いて、引き留めていた。
伏黒君は立ち止まり、私を振り返った。
「・・・鶴來さん?」
私はハッとして、
「あっ、ご、ごめん!」
と、慌てて手を離した。
「・・・・・・」
でも、伏黒君にここにいてほしい。
お父さんとふたりきりだと、心がざわざわして不安で、自分が飲み込まれてしまいそうで。
「・・・『つるぎ庵』で待ってます」
伏黒君が言った。
「鶴來さんが来るまで待ってます。だから、ちゃんと話を」
「・・・・・・」
お父さんと向き合えと、ずっと聞きたいことがあったんだろうと、言われた気がした。
「・・・うん」
私はコクリと頷いた。
「ありがとう」
そして、伏黒君は立ち去っていった。
伏黒君の後ろ姿を見送っていると、
「彼は・・・伏黒君は和紗のボーイフレンドかい?」
と、お父さんが突拍子もないことを言い出した。
私は慌てて否定した。
「ち、違うよ!」
「え、違うの?和紗ももうそんな年頃になったんだなって、父さんしみじみしていたのに」
「しみじみって・・・」
私はふっと真顔に戻って言った。
「・・・私がそんな年頃になるまで・・・お父さんは、ずっとどこで何をしていたの・・・?」
すると、笑っていたお父さんの表情もふっと申し訳なさそうな悲しそうな、そんな表情になった。そして、
「・・・すまない・・・」
と、言った。
だけど、私はそんな謝罪の言葉を聞きたい訳じゃない。
「・・・どうして、あの日糠田が森を出て行ったの?」
訊きたいのは、そのこと。
でも、何故か「私を置いて」の一言は言えなかった。
だけど生い茂る木々はそのままで、鬱蒼とした雰囲気は変わらない。
「ここは、相変わらず何も変わってないな」
私と同じことを思っていたのか、お父さんがそう呟いた。
「・・・いや。変わってないのは『つるぎ庵』以外全部だな。この糠田が森は何も変わってない・・・」
それは、嬉しいのではなく忌々しいと言いたげな口調だった。
「・・・・・・」
お父さんは、どこまで知っているのだろう。
『額多之君』の伝説。
捧げられた生贄の子ども達。
子どもを捧げざるを得なかった母親達の無念。
その無念が『呪い』となって、糠田が森の土地に染み付いていること。
その『呪い』を抑制する役割である『つるぎ庵』。
そして、『呪い』から人々を護る『あけづる』・・・真の名は『
それを造り出した『造砡師』。
その子孫である私たちだけが、『あけづる』を造ることが出来ることを。
「───っ」
問いかけようと、口を開きかけては閉ざすのをもう何度も繰り返している。
そんな繰り返しの幾度目の時だった。
「鶴來さん」
名前を呼ばれて振り返る。
するとそこには、伏黒君が立っていた。
「伏黒君!」
私は伏黒君の元に駆け寄った。
「ホントに来てくれたんだ」
「まぁ、定期巡回もありますし・・・」
と、伏黒君はお父さんに気づいて、そちらに視線を向けた。
「君は・・・」
と、声をかけたのはお父さんの方だった。
「和紗の友達かな?糠田が森の子かい?誰だったっけ、すっかり大きくなってわからないなぁ」
「いえ、自分は東京から・・・」
と、伏黒君は戸惑い気味に私の方は視線を向けた。
その意味を汲み取って、私は答えた。
「私のお父さんなの」
すると、伏黒君は驚いたように短く息を飲んだ。
だけどそれは一瞬のことで、すぐにいつものポーカーフェイスに戻り、
「俺、どこか他所に行ってます」
と、立ち去ろうとするのを、
「・・・あ」
私は無意識のうちに伏黒君の手を引いて、引き留めていた。
伏黒君は立ち止まり、私を振り返った。
「・・・鶴來さん?」
私はハッとして、
「あっ、ご、ごめん!」
と、慌てて手を離した。
「・・・・・・」
でも、伏黒君にここにいてほしい。
お父さんとふたりきりだと、心がざわざわして不安で、自分が飲み込まれてしまいそうで。
「・・・『つるぎ庵』で待ってます」
伏黒君が言った。
「鶴來さんが来るまで待ってます。だから、ちゃんと話を」
「・・・・・・」
お父さんと向き合えと、ずっと聞きたいことがあったんだろうと、言われた気がした。
「・・・うん」
私はコクリと頷いた。
「ありがとう」
そして、伏黒君は立ち去っていった。
伏黒君の後ろ姿を見送っていると、
「彼は・・・伏黒君は和紗のボーイフレンドかい?」
と、お父さんが突拍子もないことを言い出した。
私は慌てて否定した。
「ち、違うよ!」
「え、違うの?和紗ももうそんな年頃になったんだなって、父さんしみじみしていたのに」
「しみじみって・・・」
私はふっと真顔に戻って言った。
「・・・私がそんな年頃になるまで・・・お父さんは、ずっとどこで何をしていたの・・・?」
すると、笑っていたお父さんの表情もふっと申し訳なさそうな悲しそうな、そんな表情になった。そして、
「・・・すまない・・・」
と、言った。
だけど、私はそんな謝罪の言葉を聞きたい訳じゃない。
「・・・どうして、あの日糠田が森を出て行ったの?」
訊きたいのは、そのこと。
でも、何故か「私を置いて」の一言は言えなかった。