第18話 帰郷
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それから百合子ちゃんの家へ向かった。
百合子ちゃんの家に滞在している間、私が帰省していることを聞きつけた近所の人達や、同じく帰省していた同級生の友達が会いに来てくれた。
懐かしい人たちの再会で、私は楽しい時間を過ごした。
ここが私の故郷。
ここが私の居場所。
(だから、五条さんのことは・・・)
もう思いを断ち切ろう。
いずれここへ帰る時、きっと未練になってしまうから。
翌朝。
私は位牌を持って菩提寺へ向かった。
『つるぎ庵』が取り壊しになった時に仏壇も一緒に処分されたので、初盆の法要はお寺で執り行ってもらうように博おじさんが手配していたのだ。
「暑・・・」
夏の日差しが降り注ぐ緩やかな上り坂の参拝道を歩いていると、汗がジワジワと噴き出てきた。
「・・・・・・」
ふと道の先に視線を向けると、ひとりの女の子の姿が見えた。
年は私と同じくらいだろうか。
レインボーカラーの腰のあたりまであるスーパーロングヘア。
夏の日差しを受ける肌は日焼けなんて無関係どころか、まるで透き通るように白い。
すらりと華奢な身体に纏う白い丈の長いワンピースは、まるで羽衣のように裾が風になびいている。
彼女は蝉時雨が共鳴する参道脇の杉の木を見上げている。
遠目で見ると、まるで美しい人形のようだ。
派手で、綺麗で、儚げで、でも、どこかこの世ならぬ怖さも感じさせる。
私は、彼女から目が離せなくなった。
(観光客かな?でも、なんでこんなところに?)
すると、彼女がハッとこちらに気づいて私の方を見た。
視線がぶつかって、私は思わずビクッとなる。
(しまった。露骨にジロジロ見過ぎた)
今度は彼女の方がジーっと私の顔を見つめる。
距離があってもドキドキしてしまう。
だけど目を逸らすのは失礼な気がして、
「・・・・・・」
ぺこり、と小さく会釈した。
すると女は、
「・・・・・・(にこっ♡)」
と、すこぶる愛嬌の良い笑顔を見せた。
うっかりするとまた見惚れてしまいそうな可愛らしい笑顔だった。
でも、これ以上ジロジロ見ていたらいよいよ不審者と思われてしまいそうなので、私は足早に彼女の横を通り過ぎた。
その時だった。
「あなた、私が見えるのね」
通り過ぎ様に、声が聞こえた。
「え・・・」
私は足を止めて振り返る。
だけど、振り向いたところでもう彼女の姿はなかった。
お寺に到着し、本堂へ通してもらう。
一番早くに到着したようで、そこにはまだ博おじさんは来ていなかった。
用意されていた座布団に座り、ハンカチで汗をぬぐう。
(・・・さっきの女の子、一体何者だったんだろう)
そんなことを考えている時だった。
ギシギシと木の板の廊下を進む足音が聴こえてくる。
その足音が近づいてきて、私は入り口の方を振り向いた。
「和紗ちゃん、待たせて済まない」
と、博おじさんが本堂へ入ってきた。
「お久しぶりです、博おじさん」
私は立ち上がり、博おじさんに向かって会釈した。
久しぶりに会った博おじさんは、何だか少し身なりが派手になっている気がした。
以前は着けていなかった金色の腕時計が、左手首にギラギラと光っている。
(・・・よっぽど儲かってるんだな)
なんてことを私が邪推していると知る由もなく、博おじさんは口を開いた。
「元気かい?東京にはもう慣れたかい?」
「はい。なんとか」
「そうか。それはよかった」
そう頷くと、急に博おじさんは神妙な面持ちになって言葉を続けた。
「その・・・今日はもう一人、法要に出席してくれるんだ」
「え、あ、そうなんですか」
一体誰なんだろう。
そんな律儀な親戚っていたのかな。
そんなことを考えて小首を傾げている間に、
「・・・入って来なさい」
と、博おじさんは障子の向う側に控えているらしいその人物に声をかけた。
百合子ちゃんの家に滞在している間、私が帰省していることを聞きつけた近所の人達や、同じく帰省していた同級生の友達が会いに来てくれた。
懐かしい人たちの再会で、私は楽しい時間を過ごした。
ここが私の故郷。
ここが私の居場所。
(だから、五条さんのことは・・・)
もう思いを断ち切ろう。
いずれここへ帰る時、きっと未練になってしまうから。
翌朝。
私は位牌を持って菩提寺へ向かった。
『つるぎ庵』が取り壊しになった時に仏壇も一緒に処分されたので、初盆の法要はお寺で執り行ってもらうように博おじさんが手配していたのだ。
「暑・・・」
夏の日差しが降り注ぐ緩やかな上り坂の参拝道を歩いていると、汗がジワジワと噴き出てきた。
「・・・・・・」
ふと道の先に視線を向けると、ひとりの女の子の姿が見えた。
年は私と同じくらいだろうか。
レインボーカラーの腰のあたりまであるスーパーロングヘア。
夏の日差しを受ける肌は日焼けなんて無関係どころか、まるで透き通るように白い。
すらりと華奢な身体に纏う白い丈の長いワンピースは、まるで羽衣のように裾が風になびいている。
彼女は蝉時雨が共鳴する参道脇の杉の木を見上げている。
遠目で見ると、まるで美しい人形のようだ。
派手で、綺麗で、儚げで、でも、どこかこの世ならぬ怖さも感じさせる。
私は、彼女から目が離せなくなった。
(観光客かな?でも、なんでこんなところに?)
すると、彼女がハッとこちらに気づいて私の方を見た。
視線がぶつかって、私は思わずビクッとなる。
(しまった。露骨にジロジロ見過ぎた)
今度は彼女の方がジーっと私の顔を見つめる。
距離があってもドキドキしてしまう。
だけど目を逸らすのは失礼な気がして、
「・・・・・・」
ぺこり、と小さく会釈した。
すると女は、
「・・・・・・(にこっ♡)」
と、すこぶる愛嬌の良い笑顔を見せた。
うっかりするとまた見惚れてしまいそうな可愛らしい笑顔だった。
でも、これ以上ジロジロ見ていたらいよいよ不審者と思われてしまいそうなので、私は足早に彼女の横を通り過ぎた。
その時だった。
「あなた、私が見えるのね」
通り過ぎ様に、声が聞こえた。
「え・・・」
私は足を止めて振り返る。
だけど、振り向いたところでもう彼女の姿はなかった。
お寺に到着し、本堂へ通してもらう。
一番早くに到着したようで、そこにはまだ博おじさんは来ていなかった。
用意されていた座布団に座り、ハンカチで汗をぬぐう。
(・・・さっきの女の子、一体何者だったんだろう)
そんなことを考えている時だった。
ギシギシと木の板の廊下を進む足音が聴こえてくる。
その足音が近づいてきて、私は入り口の方を振り向いた。
「和紗ちゃん、待たせて済まない」
と、博おじさんが本堂へ入ってきた。
「お久しぶりです、博おじさん」
私は立ち上がり、博おじさんに向かって会釈した。
久しぶりに会った博おじさんは、何だか少し身なりが派手になっている気がした。
以前は着けていなかった金色の腕時計が、左手首にギラギラと光っている。
(・・・よっぽど儲かってるんだな)
なんてことを私が邪推していると知る由もなく、博おじさんは口を開いた。
「元気かい?東京にはもう慣れたかい?」
「はい。なんとか」
「そうか。それはよかった」
そう頷くと、急に博おじさんは神妙な面持ちになって言葉を続けた。
「その・・・今日はもう一人、法要に出席してくれるんだ」
「え、あ、そうなんですか」
一体誰なんだろう。
そんな律儀な親戚っていたのかな。
そんなことを考えて小首を傾げている間に、
「・・・入って来なさい」
と、博おじさんは障子の向う側に控えているらしいその人物に声をかけた。