第18話 帰郷
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「おかえりなさい、和紗ちゃん!」
「ただいまー、百合子ちゃん!」
そうしてようやく私たちは互いに身体を離した。
そして、百合子ちゃんはクルッと私に背中を向けると、
「あううー」
おんぶ紐で抱っこされた花ちゃんが顔を見せた。
「は、花ちゃん・・・!」
さらにふくふくに成長した花ちゃんに、私は感動し目を輝かせる。
「ふわあぁ〜っ!可愛さとふくふくがさらに成長してるーっ!尊い・・・っ!」
「あはは。なんか大仏みたいになってきたでしょ」
「だ、大仏って・・・」
「それより和紗ちゃん、髪切ったのね。なんか大人っぽくなったね」
「そうかな?」
「うん、それに綺麗になった!あ、さては東京でカレシでも出来たなぁ~?」
「出来てないよ、そんなの・・・」
「っていうか、五条さんは?東京で再会出来た?」
「・・・・・・」
百合子ちゃんは、私が東京で五条さんのところにいたことを知らない。
勿論、それまでの経緯や諸々の出来事も。
「あー、うん。会ったよ。元気そうだったよー」
と、私は軽く受け流して話題を変えるべく尋ねた。
「百合子ちゃんの旦那さんは元気?」
「うん。お盆休みになって毎日家にいるからうっとうしいくらい」
「そんな・・・。でも本当にお泊まりしていいの?」
帰省の間、私は百合子ちゃんの家に泊まらせてもらうことになっていた。
「もちろん!遠慮なんてしないで」
百合子ちゃんが言った。
「さ、行こう。あ、その前にどこか寄って行きたい場所ある?」
「うん。それじゃあ・・・」
私は頷く。
そうして、まず糠田が森の共同墓地に向かうことにした。
おじいちゃんたちが眠る鶴來家の墓は、綺麗に掃除されていてお花が供えられていた。
「これは・・・」
「耕造さんのお友達のじいちゃんばあちゃん達が交代で墓守してるの。東京で頑張ってる和紗ちゃんの代わりにって。ケント君も手伝ってるんだよ」
「・・・・・・」
私は感激のあまり言葉を失う。
「・・・そっか。ありがとう」
と呟くように言ってから、私は墓の前にしゃがみ込みそっと手を合わせた。
(ただいま。おじいちゃん、おばあちゃん。そして、お母さん・・・)
そうして、しばしの間目を閉じて祈る。
色々な思いが込み上げてくる。
一年前は、自分が上京してるなんて思ってもいなかった。
環境が、いや、世界がぐるりと変わってしまった。
おじいちゃんがいなって、『つるぎ庵』もなくなった。
五条さんと出会った。
そして『呪い』の世界を知った。
この糠田が森に忍び寄る『呪い』のことも。
まるで実際よりも多くの時間が流れた感覚がする。
「・・・・・・」
私は目を開き、合わせていた手を解いた。
そして、立ち上がる。
「ありがとう、百合子ちゃん。行こっか」
そうして、私達は墓地を後にした。
「ねぇ、初盆の法要はどうするの?」
と百合子ちゃんに訊かれて、私は答える。
「明日の午前中に身内だけでするみたい。博おじさんが全部手配してくれてて。でも、博おじさん忙しくて電話でちょっとしか話せなくて、詳細はわからないの」
「あー、確かに。お店の方が忙しいみたいだもんね。最近は加賀の方にも出店したし」
「え、そうなの」
「うん。それで金沢の方に本社オフィスを借りてそっちの方に入り浸ってるみたい。だから、最近はこっちの本店には来てないみたいだよ」
「そうなんだ・・・」
それじゃあ、あの『にせづる』が沢山の人に食べられているのか・・・。
あんなのが『あけづる』の味と思われると思うとなんだか喜べない・・・。
「あ、そういえば」
ふと思いついて、私は言った。
「『つるぎ庵』の跡ってどうなってるのかな。見に行ってもいい?」
「え?あ、うん。私はいいけど・・・」
と、百合子ちゃんは歯切れの悪い返事。
なので、私は首を傾げる。
「どうしたの?」
「え、いや、見に行っても和紗ちゃんは気分は良くないかもと思って。大事だった場所が丸切り変わってしまったのを目にするのって・・・」
「うん・・・でも、『つるぎ庵』の建て壊しは上京を決めた時に覚悟したことだし。それに・・・」
私は言った。
「『つるぎ庵』は私の心に在り続けるから。大丈夫」
すると、心配げに曇っていた百合子ちゃんの顔がゆっくり明るく晴れていった。
「わかった。じゃ行こう。見たらビックリするよ、あの工場。まさに糠田が森の産業革命だよ!」
「そ、そんなに?」
そして、私達は『つるぎ庵』の跡地に向かった。
「ただいまー、百合子ちゃん!」
そうしてようやく私たちは互いに身体を離した。
そして、百合子ちゃんはクルッと私に背中を向けると、
「あううー」
おんぶ紐で抱っこされた花ちゃんが顔を見せた。
「は、花ちゃん・・・!」
さらにふくふくに成長した花ちゃんに、私は感動し目を輝かせる。
「ふわあぁ〜っ!可愛さとふくふくがさらに成長してるーっ!尊い・・・っ!」
「あはは。なんか大仏みたいになってきたでしょ」
「だ、大仏って・・・」
「それより和紗ちゃん、髪切ったのね。なんか大人っぽくなったね」
「そうかな?」
「うん、それに綺麗になった!あ、さては東京でカレシでも出来たなぁ~?」
「出来てないよ、そんなの・・・」
「っていうか、五条さんは?東京で再会出来た?」
「・・・・・・」
百合子ちゃんは、私が東京で五条さんのところにいたことを知らない。
勿論、それまでの経緯や諸々の出来事も。
「あー、うん。会ったよ。元気そうだったよー」
と、私は軽く受け流して話題を変えるべく尋ねた。
「百合子ちゃんの旦那さんは元気?」
「うん。お盆休みになって毎日家にいるからうっとうしいくらい」
「そんな・・・。でも本当にお泊まりしていいの?」
帰省の間、私は百合子ちゃんの家に泊まらせてもらうことになっていた。
「もちろん!遠慮なんてしないで」
百合子ちゃんが言った。
「さ、行こう。あ、その前にどこか寄って行きたい場所ある?」
「うん。それじゃあ・・・」
私は頷く。
そうして、まず糠田が森の共同墓地に向かうことにした。
おじいちゃんたちが眠る鶴來家の墓は、綺麗に掃除されていてお花が供えられていた。
「これは・・・」
「耕造さんのお友達のじいちゃんばあちゃん達が交代で墓守してるの。東京で頑張ってる和紗ちゃんの代わりにって。ケント君も手伝ってるんだよ」
「・・・・・・」
私は感激のあまり言葉を失う。
「・・・そっか。ありがとう」
と呟くように言ってから、私は墓の前にしゃがみ込みそっと手を合わせた。
(ただいま。おじいちゃん、おばあちゃん。そして、お母さん・・・)
そうして、しばしの間目を閉じて祈る。
色々な思いが込み上げてくる。
一年前は、自分が上京してるなんて思ってもいなかった。
環境が、いや、世界がぐるりと変わってしまった。
おじいちゃんがいなって、『つるぎ庵』もなくなった。
五条さんと出会った。
そして『呪い』の世界を知った。
この糠田が森に忍び寄る『呪い』のことも。
まるで実際よりも多くの時間が流れた感覚がする。
「・・・・・・」
私は目を開き、合わせていた手を解いた。
そして、立ち上がる。
「ありがとう、百合子ちゃん。行こっか」
そうして、私達は墓地を後にした。
「ねぇ、初盆の法要はどうするの?」
と百合子ちゃんに訊かれて、私は答える。
「明日の午前中に身内だけでするみたい。博おじさんが全部手配してくれてて。でも、博おじさん忙しくて電話でちょっとしか話せなくて、詳細はわからないの」
「あー、確かに。お店の方が忙しいみたいだもんね。最近は加賀の方にも出店したし」
「え、そうなの」
「うん。それで金沢の方に本社オフィスを借りてそっちの方に入り浸ってるみたい。だから、最近はこっちの本店には来てないみたいだよ」
「そうなんだ・・・」
それじゃあ、あの『にせづる』が沢山の人に食べられているのか・・・。
あんなのが『あけづる』の味と思われると思うとなんだか喜べない・・・。
「あ、そういえば」
ふと思いついて、私は言った。
「『つるぎ庵』の跡ってどうなってるのかな。見に行ってもいい?」
「え?あ、うん。私はいいけど・・・」
と、百合子ちゃんは歯切れの悪い返事。
なので、私は首を傾げる。
「どうしたの?」
「え、いや、見に行っても和紗ちゃんは気分は良くないかもと思って。大事だった場所が丸切り変わってしまったのを目にするのって・・・」
「うん・・・でも、『つるぎ庵』の建て壊しは上京を決めた時に覚悟したことだし。それに・・・」
私は言った。
「『つるぎ庵』は私の心に在り続けるから。大丈夫」
すると、心配げに曇っていた百合子ちゃんの顔がゆっくり明るく晴れていった。
「わかった。じゃ行こう。見たらビックリするよ、あの工場。まさに糠田が森の産業革命だよ!」
「そ、そんなに?」
そして、私達は『つるぎ庵』の跡地に向かった。