第18話 帰郷
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問われて、私は口をグッと噤んだ。
「・・・・・・」
『呪術界』と『日常』。
『呪術師』と『非呪術師』。
『東京』と『糠田が森』。
『五条家』と『つるぎ庵』。
五条さんと私。
それぞれを取り巻く世界、背負うもの、別つもの。
でも、私が一番不安に思うものは。
「・・・私のお父さん」
と、私はポツリと呟くように言った。
唐突な言葉に当然伏黒君はキョトンとした顔になるけれど、私は構わず続けた。
「私が小学一年生の時に、突然家を出て行ったの。それ以来、ずっと音信不通で」
「・・・・・・」
「・・・や、突然ってことはないか。何となく予兆はあった・・・。お父さんとおじいちゃん、いつも喧嘩ばかりしてて・・・」
「・・・・・・」
「お父さんが出て行った後、私、一度だけおじいちゃんにきいたの。お父さんはどこに行ったのって。でも、おじいちゃんは『和紗は何も心配することない。糠田が森 にワシらと一緒にいればいい』って、それだけで」
「・・・・・・」
「その言葉どおり、おじいちゃんは精一杯私を愛して育ててくれた。お父さんの存在をも打ち消そうとするように。だから私、お父さんこと諦めようって・・・でも、今でも理由を探してしまうの」
「・・・・・・」
「私を置いて行ってしまったことに、何か理由があるのかなって」
「鶴來さん・・・」
「・・・って、ごめん。五条さんの話だったよね。何で私、お父さんの話してるんだろ」
脱線しちゃった、と私は笑った。
───子どもだった私は、自分にずっと言い聞かせていた。
お父さんが私を置いて糠田が森を出て行ったのは、きっと止むに止まれぬ理由があるんだって。
それは、私を愛しているから。私を大切にしてるから。私を守りたいからなんだって。
五条さんもきっと『その時』が来たならば、そんな風に私の前から姿を消すのだろう。私を突き放すだろう。
『和紗には必要なだけの力を身につけさせて故郷に帰す。和紗がいるべきところは、僕らの世界じゃない』
例え、自分が悪者になっても。
自分の感情を押し殺してでも。
「・・・私の愛する人はみんな、私を置いて突然いなくなってしまう」
私は言った。
「もう嫌なんだ。どんな理由があっても、置いてきぼりにされるのは」
「・・・・・・」
「だから、もう愛されたくない。そんな風に置いてきぼりにされるくらいなら、最初から愛されない方が・・・」
新幹線がトンネルに入って、窓の外が真っ暗になる。
「俺と津美紀は連れ子同士で」
その時、今度は伏黒君が唐突に話し始めた。
私は戸惑いながら聞き返す。
「つみき?」
「姉の名前です」
伏黒君は言った。
「俺が小学一年生の時、俺の父親と津美紀の母親がくっついて蒸発したんです」
「え」
唐突な、しかもなかなか衝撃的な話に、今度は私がキョトンとした顔になる。
だけど、伏黒君は怒るでも悲しむでもなく、淡々と話し続けた。
「その日から、俺と津美紀は二人で生きていくことになった。でも、まだ子どもだった俺達が二人で生きていく術はなくて。路頭に迷っていたところに、あの人・・・五条さんが現れたんです」
「そう・・・なんだ」
「俺が将来呪術師として働くことを担保に、高専から俺たちへの金銭援助を取り付けてくれたんです」
「そうだったの・・・」
何だか唐突だけど、伏黒君がこうして自分の過去を話してくれて、私は嬉しかった。
悠仁君や野薔薇ちゃんは初対面からオープンマインドだったけれど、伏黒君はどこか秘密主義で自分の事を語ることがなかったから。
少しでも、心を開いてくれたような気がして。
「珍しいね、伏黒君が自分の話をするなんて」
と笑いかけると、伏黒君は照れくさそうにグッと口を噤んだ。
「・・・脱線しました」
「えー、なにそれ。私のマネ?」
「・・・・・・」
「でも、伏黒君がそうやって話してくれて嬉しい。何だかもっと打ち解けたような気がする」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
『呪術界』と『日常』。
『呪術師』と『非呪術師』。
『東京』と『糠田が森』。
『五条家』と『つるぎ庵』。
五条さんと私。
それぞれを取り巻く世界、背負うもの、別つもの。
でも、私が一番不安に思うものは。
「・・・私のお父さん」
と、私はポツリと呟くように言った。
唐突な言葉に当然伏黒君はキョトンとした顔になるけれど、私は構わず続けた。
「私が小学一年生の時に、突然家を出て行ったの。それ以来、ずっと音信不通で」
「・・・・・・」
「・・・や、突然ってことはないか。何となく予兆はあった・・・。お父さんとおじいちゃん、いつも喧嘩ばかりしてて・・・」
「・・・・・・」
「お父さんが出て行った後、私、一度だけおじいちゃんにきいたの。お父さんはどこに行ったのって。でも、おじいちゃんは『和紗は何も心配することない。
「・・・・・・」
「その言葉どおり、おじいちゃんは精一杯私を愛して育ててくれた。お父さんの存在をも打ち消そうとするように。だから私、お父さんこと諦めようって・・・でも、今でも理由を探してしまうの」
「・・・・・・」
「私を置いて行ってしまったことに、何か理由があるのかなって」
「鶴來さん・・・」
「・・・って、ごめん。五条さんの話だったよね。何で私、お父さんの話してるんだろ」
脱線しちゃった、と私は笑った。
───子どもだった私は、自分にずっと言い聞かせていた。
お父さんが私を置いて糠田が森を出て行ったのは、きっと止むに止まれぬ理由があるんだって。
それは、私を愛しているから。私を大切にしてるから。私を守りたいからなんだって。
五条さんもきっと『その時』が来たならば、そんな風に私の前から姿を消すのだろう。私を突き放すだろう。
『和紗には必要なだけの力を身につけさせて故郷に帰す。和紗がいるべきところは、僕らの世界じゃない』
例え、自分が悪者になっても。
自分の感情を押し殺してでも。
「・・・私の愛する人はみんな、私を置いて突然いなくなってしまう」
私は言った。
「もう嫌なんだ。どんな理由があっても、置いてきぼりにされるのは」
「・・・・・・」
「だから、もう愛されたくない。そんな風に置いてきぼりにされるくらいなら、最初から愛されない方が・・・」
新幹線がトンネルに入って、窓の外が真っ暗になる。
「俺と津美紀は連れ子同士で」
その時、今度は伏黒君が唐突に話し始めた。
私は戸惑いながら聞き返す。
「つみき?」
「姉の名前です」
伏黒君は言った。
「俺が小学一年生の時、俺の父親と津美紀の母親がくっついて蒸発したんです」
「え」
唐突な、しかもなかなか衝撃的な話に、今度は私がキョトンとした顔になる。
だけど、伏黒君は怒るでも悲しむでもなく、淡々と話し続けた。
「その日から、俺と津美紀は二人で生きていくことになった。でも、まだ子どもだった俺達が二人で生きていく術はなくて。路頭に迷っていたところに、あの人・・・五条さんが現れたんです」
「そう・・・なんだ」
「俺が将来呪術師として働くことを担保に、高専から俺たちへの金銭援助を取り付けてくれたんです」
「そうだったの・・・」
何だか唐突だけど、伏黒君がこうして自分の過去を話してくれて、私は嬉しかった。
悠仁君や野薔薇ちゃんは初対面からオープンマインドだったけれど、伏黒君はどこか秘密主義で自分の事を語ることがなかったから。
少しでも、心を開いてくれたような気がして。
「珍しいね、伏黒君が自分の話をするなんて」
と笑いかけると、伏黒君は照れくさそうにグッと口を噤んだ。
「・・・脱線しました」
「えー、なにそれ。私のマネ?」
「・・・・・・」
「でも、伏黒君がそうやって話してくれて嬉しい。何だかもっと打ち解けたような気がする」
「・・・・・・」