第17話 恋する呪霊
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その問いかけに、内なる私はハッと息を飲んだ。
そして、乗っ取られた私の瞳も驚いたように目を見開いた。
五条さんは私を見下ろしたまま、目隠しを首元まで下ろした。
蒼い目が、全てを見透かそうとするように更にジッと見つめてくる。
「被呪者の身体を乗っ取る術式ってとこかな。巧みだね、自身の呪力は完全に消してある。それとも、身体を乗っ取る代わりに自身の呪力は使えなくなるのかな?」
五条さんは言った。
「何にせよ、目的は何だ?和紗の身体を乗っ取って何がしたい」
「・・・その眼」
身体を乗っ取られた私がうっとりと言う。
「その蒼い眼・・・変わらず美しゅうございますなぁ・・・」
「変わらずって、なんでお前は僕のことを知ってる?もう一度きくけど、お前誰だよ」
「そのようなつれない言い方はよしなんせ。わちきとぬし様は愛し合い駆け落ちを誓った間柄・・・」
「は?」
その言葉を聞いて、私はハッとした。
『露鈴 神社』の立て札に書かれていた神社建立の由来。
(まさか・・・)
「露鈴は、ずっと五条様をお待ちしておりました。ずっとずっと・・・」
と、露鈴である私は言った。
これで確信した。
私の身体を乗っ取っているのは、『露鈴神社』の由来となった遊女・露鈴だ。
死んでもなお思い人を待ち続けた露鈴の情念が、呪霊となったんだ。
(でも、待ってたって五条さんを?露鈴が駆け落ちを約束したのは武士のはずじゃ・・・)
と、いくつか疑問が残る。
五条さんにいたっては『露鈴神社』の由来さえ知らないので、露鈴が何者かもわかっていない。
「露鈴?それがお前の名前なの?」
「それは廓での名・・・二人きりの時はつゆとお呼びくださんせ」
「廓・・・」
それで五条さんは察したようだった。
「なるほど、遊女の呪霊ってわけか。でも、その五条様って本当に僕の事なの?人違いじゃない?」
「人違いなどござりんせん。その絹の様な白髪、なによりその蒼い眼。見間違うことなどありんせん」
と、露鈴が力説するので、五条さんは何か考えて黙り込んだ。そしてしばらくして、
「・・・わかった」
と、呟いた後話を続けた。
「お前が言う五条様は、僕のご先祖様だよ。いたんだよね、江戸時代?慶長?の時の当主が、僕と同じ『六眼』持ちだったんだって」
「・・・・・・」
「でも、その当主は御前試合で死んじゃったそうだよ」
それを聞いて、私は腑に落ちた。
露鈴の思い人の武士というのは五条さんのご先祖で、呪術師が隠密の存在だったから武士だと偽られ伝わったということと。
露鈴は神社で五条さんの姿を見かけて、それが自分の思い人と勘違いして追いかけるため、私を呪い身体を利用したのだということと。
だけど、
「・・・は?」
露鈴は失望したように声を上げた。
「駆け落ちの約束をしたらしいけど、来られなかったのは死んじゃったからだよ。いや、そもそも駆け落ちする気もなかったのかもね。じゃないと、御前試合で死ぬまで本気で殺り合うことなんてするはずないじゃない」
「・・・・・・」
「子孫の僕が言うのもなんだけどね、きっとご先祖様はいい加減なヤツだったと思うよー。家庭がありながら廓屋通いなんてさ・・・。ああ、我が先祖ながら恥ずかしくなってきた。なんか申し訳ないねー。でも、そんないい加減な男のことなんてさっさと忘れてさ、呪いを解いて成仏した方がいいよ」
そう言い終えると、五条さんは「よいしょ」と起き上がった。
・・・なんてデリカシーのない言い方・・・。
身体を乗っ取って憎らしいはずの露鈴のことが、気の毒になってきた。
その露鈴はゆっくり起き上がると、
「・・・それでも構いませぬ」
と、意外な台詞を口にした。
「先ほど言った様に、つゆにとって永久 よりも、逢瀬を重ねる刹那の方が大切だと・・・。つゆの願いは、ただひとつ」
そして、露鈴は言った。
「わちきを抱いて。このかりそめの身体でも構いやせぬ。今一度、ぬし様の温もりを感じたい。それが叶えば、つゆはその名の通りこの世から消えます」
そして、乗っ取られた私の瞳も驚いたように目を見開いた。
五条さんは私を見下ろしたまま、目隠しを首元まで下ろした。
蒼い目が、全てを見透かそうとするように更にジッと見つめてくる。
「被呪者の身体を乗っ取る術式ってとこかな。巧みだね、自身の呪力は完全に消してある。それとも、身体を乗っ取る代わりに自身の呪力は使えなくなるのかな?」
五条さんは言った。
「何にせよ、目的は何だ?和紗の身体を乗っ取って何がしたい」
「・・・その眼」
身体を乗っ取られた私がうっとりと言う。
「その蒼い眼・・・変わらず美しゅうございますなぁ・・・」
「変わらずって、なんでお前は僕のことを知ってる?もう一度きくけど、お前誰だよ」
「そのようなつれない言い方はよしなんせ。わちきとぬし様は愛し合い駆け落ちを誓った間柄・・・」
「は?」
その言葉を聞いて、私はハッとした。
『
(まさか・・・)
「露鈴は、ずっと五条様をお待ちしておりました。ずっとずっと・・・」
と、露鈴である私は言った。
これで確信した。
私の身体を乗っ取っているのは、『露鈴神社』の由来となった遊女・露鈴だ。
死んでもなお思い人を待ち続けた露鈴の情念が、呪霊となったんだ。
(でも、待ってたって五条さんを?露鈴が駆け落ちを約束したのは武士のはずじゃ・・・)
と、いくつか疑問が残る。
五条さんにいたっては『露鈴神社』の由来さえ知らないので、露鈴が何者かもわかっていない。
「露鈴?それがお前の名前なの?」
「それは廓での名・・・二人きりの時はつゆとお呼びくださんせ」
「廓・・・」
それで五条さんは察したようだった。
「なるほど、遊女の呪霊ってわけか。でも、その五条様って本当に僕の事なの?人違いじゃない?」
「人違いなどござりんせん。その絹の様な白髪、なによりその蒼い眼。見間違うことなどありんせん」
と、露鈴が力説するので、五条さんは何か考えて黙り込んだ。そしてしばらくして、
「・・・わかった」
と、呟いた後話を続けた。
「お前が言う五条様は、僕のご先祖様だよ。いたんだよね、江戸時代?慶長?の時の当主が、僕と同じ『六眼』持ちだったんだって」
「・・・・・・」
「でも、その当主は御前試合で死んじゃったそうだよ」
それを聞いて、私は腑に落ちた。
露鈴の思い人の武士というのは五条さんのご先祖で、呪術師が隠密の存在だったから武士だと偽られ伝わったということと。
露鈴は神社で五条さんの姿を見かけて、それが自分の思い人と勘違いして追いかけるため、私を呪い身体を利用したのだということと。
だけど、
「・・・は?」
露鈴は失望したように声を上げた。
「駆け落ちの約束をしたらしいけど、来られなかったのは死んじゃったからだよ。いや、そもそも駆け落ちする気もなかったのかもね。じゃないと、御前試合で死ぬまで本気で殺り合うことなんてするはずないじゃない」
「・・・・・・」
「子孫の僕が言うのもなんだけどね、きっとご先祖様はいい加減なヤツだったと思うよー。家庭がありながら廓屋通いなんてさ・・・。ああ、我が先祖ながら恥ずかしくなってきた。なんか申し訳ないねー。でも、そんないい加減な男のことなんてさっさと忘れてさ、呪いを解いて成仏した方がいいよ」
そう言い終えると、五条さんは「よいしょ」と起き上がった。
・・・なんてデリカシーのない言い方・・・。
身体を乗っ取って憎らしいはずの露鈴のことが、気の毒になってきた。
その露鈴はゆっくり起き上がると、
「・・・それでも構いませぬ」
と、意外な台詞を口にした。
「先ほど言った様に、つゆにとって
そして、露鈴は言った。
「わちきを抱いて。このかりそめの身体でも構いやせぬ。今一度、ぬし様の温もりを感じたい。それが叶えば、つゆはその名の通りこの世から消えます」