第17話 恋する呪霊
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(な、なんてことを・・・!)
どうしてこんなことをしてしまったんだろう。
私はサトルに駆け寄ろうとしたけれど、
(えっ)
サトルの横を通り過ぎ、玄関のドアを開けてそのまま外へ飛び出した。
(ど、どうして!?)
私の意思とチグハグに身体は一心不乱に駆けていく。
ーーーまるで、身体のコントロールを失ってしまったみたい。
しばらく走り続けていると、前方に五条さんの姿を見つけた。
すると、駆ける足はより一層速くなり、ゆっくりと歩いている五条さんの背中に迫る。
そして、追いついてその背中に半ば体当たりする様に抱きついた。
「え、何?」
当然、五条さんは驚いて立ち止まり肩越しに振り返る。
「和紗?」
「・・・・・・」
「ビックリした〜。どうしたの?」
「・・・・・・」
「やっぱりさみしくなった?」
「・・・・・・」
五条さんの背中に縋り付いたまま、ゆっくりと顔を上げて言った。
「行かないで」
それから、私と五条さんはアパートに戻った。
「・・・・・・」
こんなはずじゃなかったのに。
五条さんを呼び戻すつもりなんて。
だけど、さっきからなんだかおかしい。
サトルを蹴飛ばしたり、五条さんを追って飛び出したり、自分の意思を無視したように身体が勝手に動いてしまう。
それに。
今、私と五条さんは向かい合うように床に座っているのだけど。
今の胸中とは裏腹に、私はニコニコして(顔の筋肉の動きでわかる)五条さんの顔を見つめている。
(・・・おかしい・・・)
本当はこんな風に向かい合うのも気まずいし、ニコニコしてられない心境のはずなのに。
まるで、身体を誰かに乗っ取られたかのような・・・。
そこで、私はハッとした。
(あの時の、鏡に映った女の人・・・)
そう考えついたところで、
「・・・なんかご機嫌だね」
と、五条さんに言われた。
「さっきはプンプン怒ってたのに。急にどういう心境の変化なの?」
戸惑っているのは、五条さんも同じらしい。
表面の私は何も答えず、ただニコニコしているだけ。
本当は「お願い、帰って下さい」と言いたい。でも、言葉が発せられないのだ。
内なる私は、キーッともがいている状態だ。
だけど、そんなことを知らない五条さんは不思議そうな顔をつつも言葉を続けた。
「この短時間にどういう心境の変化があったのかわからないけど、ま、いいや。弁明ってわけじゃないけど、僕の話も聞いてくれる?」
「・・・・・・」
「こないだの僕と千代婆の会話、聞いてたんだね」
「・・・・・・」
その会話で五条さんが言った言葉が、脳裏にリフレインする。
『戯言だよ。和紗の婿になるなんてことは』
『僕と和紗は、生きている世界が違うんだ』
そう、あの言葉を聞いて、私は五条さんから離れることを決めたんだ。
「・・・はぁ」
と、五条さんはひとつ溜息を吐いて、語り始めた。
「戯言っていうのは、叶うはずのない望みってことで、別に和紗を弄ぶってことでも、ましてや傷つけるつもりでもないんだ」
「・・・・・・」
「和紗もわかってるって思うけど、僕は五条家の当主。その務めや責任は、いい加減な僕でも投げ出すことは出来ないのはわかってる。そして、和紗が近い将来、糠田が森に帰って『つるぎ庵』を再建して土地を護りたいって意志もわかってるし、尊重したいと思ってる」
「・・・・・・」
「僕と和紗の人生が、いつかは分かれていくこともわかってる」
「・・・・・」
「それでも、お婿さんなんて戯言を言ってたのは」
「・・・・・・」
「和紗を、独りにしたくないって思ったから」
その言葉に、内なる私はハッと息を飲んだ。
「・・・こういう気持ちがなんなのか、未だによくわかんないんだけど」
と、五条さんは少し自嘲するようにフッと鼻で笑って続けた。
「おじいちゃんを亡くした和紗が、斎場で独りで佇んでいるのを見た時、確かにそう思った。大勢の親戚に囲まれて心細そうにしてた時も、東京に向かう新幹線で『つるぎ庵』の再建を誓った時も、京都でお母さんの思い出を話してた時も・・・和紗をもう独りにさせない、させたくないって、思ったんだよね」
「・・・・・・」
「そのために僕に何が出来るかなって考えたら、おじいちゃんが和紗のお嫁さん姿を見るのが余生の楽しみだって言ってたのを思い出して」
「・・・・・・」
「それで、婿入りするって思いついた」
どうしてこんなことをしてしまったんだろう。
私はサトルに駆け寄ろうとしたけれど、
(えっ)
サトルの横を通り過ぎ、玄関のドアを開けてそのまま外へ飛び出した。
(ど、どうして!?)
私の意思とチグハグに身体は一心不乱に駆けていく。
ーーーまるで、身体のコントロールを失ってしまったみたい。
しばらく走り続けていると、前方に五条さんの姿を見つけた。
すると、駆ける足はより一層速くなり、ゆっくりと歩いている五条さんの背中に迫る。
そして、追いついてその背中に半ば体当たりする様に抱きついた。
「え、何?」
当然、五条さんは驚いて立ち止まり肩越しに振り返る。
「和紗?」
「・・・・・・」
「ビックリした〜。どうしたの?」
「・・・・・・」
「やっぱりさみしくなった?」
「・・・・・・」
五条さんの背中に縋り付いたまま、ゆっくりと顔を上げて言った。
「行かないで」
それから、私と五条さんはアパートに戻った。
「・・・・・・」
こんなはずじゃなかったのに。
五条さんを呼び戻すつもりなんて。
だけど、さっきからなんだかおかしい。
サトルを蹴飛ばしたり、五条さんを追って飛び出したり、自分の意思を無視したように身体が勝手に動いてしまう。
それに。
今、私と五条さんは向かい合うように床に座っているのだけど。
今の胸中とは裏腹に、私はニコニコして(顔の筋肉の動きでわかる)五条さんの顔を見つめている。
(・・・おかしい・・・)
本当はこんな風に向かい合うのも気まずいし、ニコニコしてられない心境のはずなのに。
まるで、身体を誰かに乗っ取られたかのような・・・。
そこで、私はハッとした。
(あの時の、鏡に映った女の人・・・)
そう考えついたところで、
「・・・なんかご機嫌だね」
と、五条さんに言われた。
「さっきはプンプン怒ってたのに。急にどういう心境の変化なの?」
戸惑っているのは、五条さんも同じらしい。
表面の私は何も答えず、ただニコニコしているだけ。
本当は「お願い、帰って下さい」と言いたい。でも、言葉が発せられないのだ。
内なる私は、キーッともがいている状態だ。
だけど、そんなことを知らない五条さんは不思議そうな顔をつつも言葉を続けた。
「この短時間にどういう心境の変化があったのかわからないけど、ま、いいや。弁明ってわけじゃないけど、僕の話も聞いてくれる?」
「・・・・・・」
「こないだの僕と千代婆の会話、聞いてたんだね」
「・・・・・・」
その会話で五条さんが言った言葉が、脳裏にリフレインする。
『戯言だよ。和紗の婿になるなんてことは』
『僕と和紗は、生きている世界が違うんだ』
そう、あの言葉を聞いて、私は五条さんから離れることを決めたんだ。
「・・・はぁ」
と、五条さんはひとつ溜息を吐いて、語り始めた。
「戯言っていうのは、叶うはずのない望みってことで、別に和紗を弄ぶってことでも、ましてや傷つけるつもりでもないんだ」
「・・・・・・」
「和紗もわかってるって思うけど、僕は五条家の当主。その務めや責任は、いい加減な僕でも投げ出すことは出来ないのはわかってる。そして、和紗が近い将来、糠田が森に帰って『つるぎ庵』を再建して土地を護りたいって意志もわかってるし、尊重したいと思ってる」
「・・・・・・」
「僕と和紗の人生が、いつかは分かれていくこともわかってる」
「・・・・・」
「それでも、お婿さんなんて戯言を言ってたのは」
「・・・・・・」
「和紗を、独りにしたくないって思ったから」
その言葉に、内なる私はハッと息を飲んだ。
「・・・こういう気持ちがなんなのか、未だによくわかんないんだけど」
と、五条さんは少し自嘲するようにフッと鼻で笑って続けた。
「おじいちゃんを亡くした和紗が、斎場で独りで佇んでいるのを見た時、確かにそう思った。大勢の親戚に囲まれて心細そうにしてた時も、東京に向かう新幹線で『つるぎ庵』の再建を誓った時も、京都でお母さんの思い出を話してた時も・・・和紗をもう独りにさせない、させたくないって、思ったんだよね」
「・・・・・・」
「そのために僕に何が出来るかなって考えたら、おじいちゃんが和紗のお嫁さん姿を見るのが余生の楽しみだって言ってたのを思い出して」
「・・・・・・」
「それで、婿入りするって思いついた」