第17話 恋する呪霊
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ダメなところとか、そんなことじゃない。
本当に、何もわかってないのね。
そんな風に見つめないで。
「・・・五条さんのダメなところなんて」
私は声を振り絞るように言った。
「顔と最強なとこ以外、全部ダメダメじゃないですか・・・。特に性格なんか。直すなんて今更無理でしょ」
「アハハ。ひっどい言われ様〜」
「それに・・・」
私は言った。
「婿入りするとかお婿さんになるとか、そんな私をからかうことばかり言って!ムカつきます!そんな気もないくせに・・・そんな事、出来ないくせに!」
話しているうちに気持ちが昂って、口調がキツく早口になっていく。
「ウンザリなんです・・・!五条さんは田舎娘をからかってさぞ面白おかしいんでしょうけど・・・!私は本気でもう嫌なんです!五条さんのせいで周りからは誤解されて、普通の恋愛も出来ない・・・!」
言葉をぶつける様にそう言い切ってしまうと、五条さんはフッと小さく笑って、
「ごめんね」
と、言った。
サラッとした言い方だけど、そこにいつもの軽薄さが感じられない。
どこか寂しそうな響きだった。
五条さんはゆっくりと立ち上がり、抱えてたサトルを私に渡した。
「サトルは置いていくよ。ちゃんと自分で呪力をチャージ出来るようになるんだよ」
「・・・・・・」
「呪術のことで質問があったら電話して。出られないこと多いし、折り返しもすぐには出来ないかもだけど」
「・・・・・・」
「僕はもうここに来ないから」
そう言って、五条さんは踵を返した。
「じゃ、頑張ってね」
そして玄関のドアを開けて出て行く。
───バタン
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
「・・・・・・」
私はしばらくその場に立ち尽くした後、気を取り直して荷解きの作業を始めた。
開いた段ボールから、歯ブラシや洗顔フォームが出てきた。
それらを抱えて洗面所に向かう。
(・・・これでよかったんだ)
歯ブラシを洗面台に置いた時、ふと顔を上げたら鏡に映る自分と目が合った。
「・・・あれ?」
鏡に映る私は、スーッと静かな涙を流している。
(何で泣いてるの)
鑑に映る自分に問いかける。
それでも、涙は留まることなく流れて頬を濡らす。
(泣かない。泣かない)
と、私は両手の甲で涙を拭った。
「・・・ふーっ」
そして深呼吸して気を取り直し、改めて鏡に映る自分の顔を見た。
しかし、そこに映っていたのは。
「!!」
私の顔ではなく、知らない女の顔だった。
「なっ・・・」
驚く私と裏腹に、鏡に映る女は不敵な笑みを浮かべている。
切れ長の目に、薄い唇に引いた真っ赤な口紅。後ろに流した長い濡れたような黒髪。透き通るような白い肌。
どこか浮世絵離れしたような、この世のものならぬような雰囲気をした女性だ。
「だ、誰・・・」
私が問いかけると、鏡の中の女はその艶やかな唇をゆっくりと動かした。
『ワチキハヌシ・・・ヌシハワチキ・・・』
その声は、耳にではなく頭に直接響いてくる。
そして次に、キーンと耐えがたいほどの耳鳴りがした。
「うっ・・・」
耐えかねて、私は頭を両手で抱えてその場に座り込んだ。
耳鳴りはしばらくの間続いた。
やがて、波が引く様にゆっくりと収まった。
「・・・・・・」
ゆっくり立ち上がり、再び鏡を見る。
鏡にはさっきの女の人の顔ではなく、私の顔が映っている。
(なんだろう。見間違いだったのかな?)
洗面所を出て、部屋に向かう。
すると、サトルが立ち上がり私を見上げる。
なんだかサトルの様子がおかしい。
サトルは総毛立たせて、身体をフルフル震わせて、まるで私を威嚇するような仕草をしているのだ。
(どうしたの、サトル)
そう問いかけようとしたら、私の右足が思い切りサトルを蹴り上げた。
(えっ)
サトルの身体は宙に浮き、壁に叩きつけられた後、ぺちゃりと床に突っ伏してしまった。
本当に、何もわかってないのね。
そんな風に見つめないで。
「・・・五条さんのダメなところなんて」
私は声を振り絞るように言った。
「顔と最強なとこ以外、全部ダメダメじゃないですか・・・。特に性格なんか。直すなんて今更無理でしょ」
「アハハ。ひっどい言われ様〜」
「それに・・・」
私は言った。
「婿入りするとかお婿さんになるとか、そんな私をからかうことばかり言って!ムカつきます!そんな気もないくせに・・・そんな事、出来ないくせに!」
話しているうちに気持ちが昂って、口調がキツく早口になっていく。
「ウンザリなんです・・・!五条さんは田舎娘をからかってさぞ面白おかしいんでしょうけど・・・!私は本気でもう嫌なんです!五条さんのせいで周りからは誤解されて、普通の恋愛も出来ない・・・!」
言葉をぶつける様にそう言い切ってしまうと、五条さんはフッと小さく笑って、
「ごめんね」
と、言った。
サラッとした言い方だけど、そこにいつもの軽薄さが感じられない。
どこか寂しそうな響きだった。
五条さんはゆっくりと立ち上がり、抱えてたサトルを私に渡した。
「サトルは置いていくよ。ちゃんと自分で呪力をチャージ出来るようになるんだよ」
「・・・・・・」
「呪術のことで質問があったら電話して。出られないこと多いし、折り返しもすぐには出来ないかもだけど」
「・・・・・・」
「僕はもうここに来ないから」
そう言って、五条さんは踵を返した。
「じゃ、頑張ってね」
そして玄関のドアを開けて出て行く。
───バタン
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
「・・・・・・」
私はしばらくその場に立ち尽くした後、気を取り直して荷解きの作業を始めた。
開いた段ボールから、歯ブラシや洗顔フォームが出てきた。
それらを抱えて洗面所に向かう。
(・・・これでよかったんだ)
歯ブラシを洗面台に置いた時、ふと顔を上げたら鏡に映る自分と目が合った。
「・・・あれ?」
鏡に映る私は、スーッと静かな涙を流している。
(何で泣いてるの)
鑑に映る自分に問いかける。
それでも、涙は留まることなく流れて頬を濡らす。
(泣かない。泣かない)
と、私は両手の甲で涙を拭った。
「・・・ふーっ」
そして深呼吸して気を取り直し、改めて鏡に映る自分の顔を見た。
しかし、そこに映っていたのは。
「!!」
私の顔ではなく、知らない女の顔だった。
「なっ・・・」
驚く私と裏腹に、鏡に映る女は不敵な笑みを浮かべている。
切れ長の目に、薄い唇に引いた真っ赤な口紅。後ろに流した長い濡れたような黒髪。透き通るような白い肌。
どこか浮世絵離れしたような、この世のものならぬような雰囲気をした女性だ。
「だ、誰・・・」
私が問いかけると、鏡の中の女はその艶やかな唇をゆっくりと動かした。
『ワチキハヌシ・・・ヌシハワチキ・・・』
その声は、耳にではなく頭に直接響いてくる。
そして次に、キーンと耐えがたいほどの耳鳴りがした。
「うっ・・・」
耐えかねて、私は頭を両手で抱えてその場に座り込んだ。
耳鳴りはしばらくの間続いた。
やがて、波が引く様にゆっくりと収まった。
「・・・・・・」
ゆっくり立ち上がり、再び鏡を見る。
鏡にはさっきの女の人の顔ではなく、私の顔が映っている。
(なんだろう。見間違いだったのかな?)
洗面所を出て、部屋に向かう。
すると、サトルが立ち上がり私を見上げる。
なんだかサトルの様子がおかしい。
サトルは総毛立たせて、身体をフルフル震わせて、まるで私を威嚇するような仕草をしているのだ。
(どうしたの、サトル)
そう問いかけようとしたら、私の右足が思い切りサトルを蹴り上げた。
(えっ)
サトルの身体は宙に浮き、壁に叩きつけられた後、ぺちゃりと床に突っ伏してしまった。