第17話 恋する呪霊
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「・・・ですか」
私は小さな震える声で言った。
だけど五条さんの耳に届かなかったようで、五条さんは小首を傾げる。
「ん?何て?」
「・・・どうして、五条さんにそんなこと指図されなくちゃいけないんですか?」
私は言った。
「五条さんは私の保護者でもお兄さんでもカレシでもないのに!私に指図しないで!」
そう突っぱねて、私は自分の部屋に引きこもった。
五条さんもすぐに追いかけてきてドアをノックする。
「ちょっと、和紗〜?出てきなよー」
だけど、私は断固として応じなかった。
しばらくして五条さんも諦めたのか、ドアの向こう側が静かになった。
あっさりと引き下がったので、私はますます苛立ちを募らせる。
(何よ・・・偉そうに指図するくせに、行くなって引き止めようとはしないんだ)
自分から引っ越しを宣言したのに、そんなことを期待している自分に更に苛立つ。
「・・・バカじゃないの」
私はペタリと床に座り込んで、クッションを形が変わるくらいギュッと抱きかかえた。
数日後。
五条さんが出張でいない間に、引っ越しを強行することにした。
引っ越し前日、段ボールに荷物を詰めていく。
洋服、生活雑貨、専門学校の教科書、製菓道具、そして食器類・・・。
「・・・・・・」
五条さんとお揃いのお茶碗と湯呑みと箸置き。
私は自分の分を食器棚から取り出して、緩衝材に包み段ボール箱に押し入れた。
そこへ、
ーーーピンポーン・・・
呼び鈴が鳴ったので、モニターフォンを確認する。モニターに映っているのは、
「伏黒君!?」
そう、伏黒君だった。
私はすぐにドアを開けて、伏黒君を迎え入れた。
「どうしたの?五条さんなら出張でいないけど」
「いえ、鶴來さんに・・・」
「私?何の用?」
「いや、用というか・・・」
と、伏黒君は歯切れの悪い返事を繰り返す。
意図を測りかねて私が首を傾げていると、
「五条先生に言われたんです。鶴來さんが引っ越すのを引き止めるようにって」
と、伏黒君は言った。
しかし言葉とは裏腹に、あまり気乗りしない様子で頭を掻いている。
「つっても、俺は別に無理に引き止めるつもりはないんですけどね」
「え、じゃあどうして」
「一応、説得だけ試みておこうと思って。でないと後であの人煩ぇし」
「・・・・・・」
「どうしても、引っ越さなきゃならないんですか?」
そう伏黒君に尋ねられて、一瞬、五条さんに吐いたのと同じ嘘と言い訳を話そうかと思ったけれど。
「・・・うん」
伏黒君には、何故か正直な気持ちを話したくなって、私は言葉を続けた。
「私、五条さんのことが好きなの」
すると、伏黒君は驚いたように一瞬目を見開いた。
「でも、伏黒君はわかってるでしょ?私と・・・五条さんは、違う世界の人間同士なんだって」
「・・・・・・」
伏黒君はふっと視線をそのまま下へ向けた。
否定出来ない。
きっとそういうことなんだろう。
「だから、これ以上は一緒にはいられない。これ以上、思いが深まるのが怖いの」
私は言った。
「今ならまだ思い止まれると思うから、だからここを出て行くの」
「・・・・・・」
「五条さんにはこんなこと言えなくて、だから無理矢理な理由しか言えなくて揉めちゃって・・・。そのせいで伏黒君まで巻き込んじゃって、ごめんね」
「いや・・・」
「マンションは出て行くけど、縁を切るとかじゃないから。呪術のこともまだ教わることもあるし・・・。だから、伏黒君は何も気を遣わなくていいからね」
「俺は別に」
「あ、よかったらあがってく?お茶でも飲まない?」
「・・・手伝います」
「え?」
「引っ越し作業、手伝います」
伏黒君の思いがけない申し出に驚いたけれど、きっと私の思いを理解して尊重してくれるということなのだろう。
「・・・うん。じゃあ、お願いしよっかな」
嬉しくて。でも改めて事実を突き付けられたようで、少し寂しかった。
私は小さな震える声で言った。
だけど五条さんの耳に届かなかったようで、五条さんは小首を傾げる。
「ん?何て?」
「・・・どうして、五条さんにそんなこと指図されなくちゃいけないんですか?」
私は言った。
「五条さんは私の保護者でもお兄さんでもカレシでもないのに!私に指図しないで!」
そう突っぱねて、私は自分の部屋に引きこもった。
五条さんもすぐに追いかけてきてドアをノックする。
「ちょっと、和紗〜?出てきなよー」
だけど、私は断固として応じなかった。
しばらくして五条さんも諦めたのか、ドアの向こう側が静かになった。
あっさりと引き下がったので、私はますます苛立ちを募らせる。
(何よ・・・偉そうに指図するくせに、行くなって引き止めようとはしないんだ)
自分から引っ越しを宣言したのに、そんなことを期待している自分に更に苛立つ。
「・・・バカじゃないの」
私はペタリと床に座り込んで、クッションを形が変わるくらいギュッと抱きかかえた。
数日後。
五条さんが出張でいない間に、引っ越しを強行することにした。
引っ越し前日、段ボールに荷物を詰めていく。
洋服、生活雑貨、専門学校の教科書、製菓道具、そして食器類・・・。
「・・・・・・」
五条さんとお揃いのお茶碗と湯呑みと箸置き。
私は自分の分を食器棚から取り出して、緩衝材に包み段ボール箱に押し入れた。
そこへ、
ーーーピンポーン・・・
呼び鈴が鳴ったので、モニターフォンを確認する。モニターに映っているのは、
「伏黒君!?」
そう、伏黒君だった。
私はすぐにドアを開けて、伏黒君を迎え入れた。
「どうしたの?五条さんなら出張でいないけど」
「いえ、鶴來さんに・・・」
「私?何の用?」
「いや、用というか・・・」
と、伏黒君は歯切れの悪い返事を繰り返す。
意図を測りかねて私が首を傾げていると、
「五条先生に言われたんです。鶴來さんが引っ越すのを引き止めるようにって」
と、伏黒君は言った。
しかし言葉とは裏腹に、あまり気乗りしない様子で頭を掻いている。
「つっても、俺は別に無理に引き止めるつもりはないんですけどね」
「え、じゃあどうして」
「一応、説得だけ試みておこうと思って。でないと後であの人煩ぇし」
「・・・・・・」
「どうしても、引っ越さなきゃならないんですか?」
そう伏黒君に尋ねられて、一瞬、五条さんに吐いたのと同じ嘘と言い訳を話そうかと思ったけれど。
「・・・うん」
伏黒君には、何故か正直な気持ちを話したくなって、私は言葉を続けた。
「私、五条さんのことが好きなの」
すると、伏黒君は驚いたように一瞬目を見開いた。
「でも、伏黒君はわかってるでしょ?私と・・・五条さんは、違う世界の人間同士なんだって」
「・・・・・・」
伏黒君はふっと視線をそのまま下へ向けた。
否定出来ない。
きっとそういうことなんだろう。
「だから、これ以上は一緒にはいられない。これ以上、思いが深まるのが怖いの」
私は言った。
「今ならまだ思い止まれると思うから、だからここを出て行くの」
「・・・・・・」
「五条さんにはこんなこと言えなくて、だから無理矢理な理由しか言えなくて揉めちゃって・・・。そのせいで伏黒君まで巻き込んじゃって、ごめんね」
「いや・・・」
「マンションは出て行くけど、縁を切るとかじゃないから。呪術のこともまだ教わることもあるし・・・。だから、伏黒君は何も気を遣わなくていいからね」
「俺は別に」
「あ、よかったらあがってく?お茶でも飲まない?」
「・・・手伝います」
「え?」
「引っ越し作業、手伝います」
伏黒君の思いがけない申し出に驚いたけれど、きっと私の思いを理解して尊重してくれるということなのだろう。
「・・・うん。じゃあ、お願いしよっかな」
嬉しくて。でも改めて事実を突き付けられたようで、少し寂しかった。