第16話 五条の事情
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「そんなこと言われなくてもわかってるわよ!」
と、野薔薇ちゃんは立ち上がった。
「ごめん、和紗さん。私、そろそろ高専に戻るわ。交流会に向けた特訓の途中なんだ。落ち着いたらまたショッピング行こう!」
「あ、うん」
「お土産ありがとう。それじゃあ!」
「頑張ってね」
そして、野薔薇ちゃんは猛烈な勢いで走り去って行った。
「・・・騒がしいヤツだな」
伏黒君が呟く。
その言葉に私は思わず笑う。そして、ふと思い出した。
「京都に行った時、東堂君に会ったよ」
私がそう言うと、伏黒君は微かに眉間にシワを寄せた。
「どうしてヤツのことを?」
「あ、五条さんが一緒だったから、それで紹介してもらったの」
「五条先生が?何フラフラ遊んでんだ、あの人」
「あ、えっと、出張だったみたいだよ」
そういうことにしておこう!
「東堂君、伏黒君と手合わせしたこと話してた」
「手合わせ・・・」
伏黒君は苦々しく呟くように言った。
「その割に度を超えた手荒さだったけどな」
「ん?何て?」
「いや、何も」
「東堂君とどんな会話したの?」
「くだらねぇ話ばっかですよ」
「ふーん。交流会でもっと仲良くなれるといいね」
「なれないです。なるつもりもないです」
「えぇっ、そんなぁ」
まぁ、なんにせよ。
交流会には悠仁君が戻って来る。
また一年生の皆んなと五条さんが、一緒に集う日が戻ってくるんだ。
「・・・交流会、楽しみだね!」
と私が言うと、伏黒君は訝しげに目をすがめた。
「・・・何で鶴來さんが楽しみにしてるんですか」
「ん?ふふっ。わからないけど、楽しいことが起きる予感がする」
「はぁ・・・?」
まだ何も知らない伏黒君は、ますます訝しげな目で私を見返した。
それからまもなく伏黒君も高専へ戻って行き、私もマンションへ帰ることにした。
何となく帰路を行く足取りが重い。
それは、五条さんと顔を合わせるのが気まずいからだ。
(でも、今晩ご飯いるって言ってなかったし、きっと帰りは遅いんだろうな)
そう考えると少しホッとした。
今は出来るだけ顔を合わせたくない。
今しばらくだけは・・・。
ほとぼりが冷めれば、また以前のように自然に振舞えるはずだから。
そんなことを思いながら歩いていたら、赤信号に捕まって足を止めた。
「・・・・・・」
ふと隣を見ると、とても小柄なおばあさんが立っていた。
小柄といっても、それは背中が折れ曲がったように大きく曲がっているためだ。
その背中にパンパンに膨らんだ風呂敷を背負っている。一体風呂敷に何を包んでいるのだろう。何にせよ、このおばあさんが背負って運ぶには大変そうだ。
しかも、目の前の横断歩道はなかなか距離がある。
お年寄りがこんな大荷物を背負って渡り切るのは大変だろう。
「・・・あの」
私はおばあさんに声をかけた。
「よかったら、横断歩道を渡る間お荷物待ちましょうか?」
すると、おばあさんは私の方を振り向いた。
最初は驚いた顔をしていたけれど、すぐにシワシワの目元と口元をたゆませて満面の笑顔を見せた。
「これはぁこれはぁご親切にどぅもぉ」
おばあさんは言った。
歯が抜けきっているせいか、モゴモゴと声がくぐもるような話し方だ。
「ありがたくお言葉に甘えてよろしいかな?」
「はい!」
そうして、私はおばあさんから荷物を受け取った。
風呂敷はどっしりと重く、一瞬腰が沈み込むような感覚がした。
(一体何が入ってるんだろう・・・)
落とさないようにしっかりと風呂敷を抱え込み、青信号になったのを確認して横断歩道を渡る。
「どぉもどぉも、助かりましたぁ」
渡り切った後、おばあさんは言った。
「お世話になったついでに、ひとつ尋ねてもよろしいですかな?」
「はい?何でしょう」
「この場所に行きたいんですがのぉ。どう行けば教えてくださらんかのぉ」
と、おばあさんは紙切れを私に見せた。
「え」
そこに書かれた住所を見て、私は目を丸くした。
それは私が今帰ろうとしているマンション、五条さんの部屋番号だった。
と、野薔薇ちゃんは立ち上がった。
「ごめん、和紗さん。私、そろそろ高専に戻るわ。交流会に向けた特訓の途中なんだ。落ち着いたらまたショッピング行こう!」
「あ、うん」
「お土産ありがとう。それじゃあ!」
「頑張ってね」
そして、野薔薇ちゃんは猛烈な勢いで走り去って行った。
「・・・騒がしいヤツだな」
伏黒君が呟く。
その言葉に私は思わず笑う。そして、ふと思い出した。
「京都に行った時、東堂君に会ったよ」
私がそう言うと、伏黒君は微かに眉間にシワを寄せた。
「どうしてヤツのことを?」
「あ、五条さんが一緒だったから、それで紹介してもらったの」
「五条先生が?何フラフラ遊んでんだ、あの人」
「あ、えっと、出張だったみたいだよ」
そういうことにしておこう!
「東堂君、伏黒君と手合わせしたこと話してた」
「手合わせ・・・」
伏黒君は苦々しく呟くように言った。
「その割に度を超えた手荒さだったけどな」
「ん?何て?」
「いや、何も」
「東堂君とどんな会話したの?」
「くだらねぇ話ばっかですよ」
「ふーん。交流会でもっと仲良くなれるといいね」
「なれないです。なるつもりもないです」
「えぇっ、そんなぁ」
まぁ、なんにせよ。
交流会には悠仁君が戻って来る。
また一年生の皆んなと五条さんが、一緒に集う日が戻ってくるんだ。
「・・・交流会、楽しみだね!」
と私が言うと、伏黒君は訝しげに目をすがめた。
「・・・何で鶴來さんが楽しみにしてるんですか」
「ん?ふふっ。わからないけど、楽しいことが起きる予感がする」
「はぁ・・・?」
まだ何も知らない伏黒君は、ますます訝しげな目で私を見返した。
それからまもなく伏黒君も高専へ戻って行き、私もマンションへ帰ることにした。
何となく帰路を行く足取りが重い。
それは、五条さんと顔を合わせるのが気まずいからだ。
(でも、今晩ご飯いるって言ってなかったし、きっと帰りは遅いんだろうな)
そう考えると少しホッとした。
今は出来るだけ顔を合わせたくない。
今しばらくだけは・・・。
ほとぼりが冷めれば、また以前のように自然に振舞えるはずだから。
そんなことを思いながら歩いていたら、赤信号に捕まって足を止めた。
「・・・・・・」
ふと隣を見ると、とても小柄なおばあさんが立っていた。
小柄といっても、それは背中が折れ曲がったように大きく曲がっているためだ。
その背中にパンパンに膨らんだ風呂敷を背負っている。一体風呂敷に何を包んでいるのだろう。何にせよ、このおばあさんが背負って運ぶには大変そうだ。
しかも、目の前の横断歩道はなかなか距離がある。
お年寄りがこんな大荷物を背負って渡り切るのは大変だろう。
「・・・あの」
私はおばあさんに声をかけた。
「よかったら、横断歩道を渡る間お荷物待ちましょうか?」
すると、おばあさんは私の方を振り向いた。
最初は驚いた顔をしていたけれど、すぐにシワシワの目元と口元をたゆませて満面の笑顔を見せた。
「これはぁこれはぁご親切にどぅもぉ」
おばあさんは言った。
歯が抜けきっているせいか、モゴモゴと声がくぐもるような話し方だ。
「ありがたくお言葉に甘えてよろしいかな?」
「はい!」
そうして、私はおばあさんから荷物を受け取った。
風呂敷はどっしりと重く、一瞬腰が沈み込むような感覚がした。
(一体何が入ってるんだろう・・・)
落とさないようにしっかりと風呂敷を抱え込み、青信号になったのを確認して横断歩道を渡る。
「どぉもどぉも、助かりましたぁ」
渡り切った後、おばあさんは言った。
「お世話になったついでに、ひとつ尋ねてもよろしいですかな?」
「はい?何でしょう」
「この場所に行きたいんですがのぉ。どう行けば教えてくださらんかのぉ」
と、おばあさんは紙切れを私に見せた。
「え」
そこに書かれた住所を見て、私は目を丸くした。
それは私が今帰ろうとしているマンション、五条さんの部屋番号だった。